販路拡大と従業員教育に注力し 次世代にレールを繋ぐ
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(株)アクティス
鉄筋やレールをたしかな技術で繋ぐ 全国を股にかける継手メーカー
ビルやマンション建設の要となる鉄筋コンクリート。そのコンクリートのなかにある鉄筋の部材を繋ぐ、いわゆる「継手」を専門として請け負うのが(株)アクティスだ。同社は、1971年に三協ガス圧接の九州支店として営業をスタートさせた。その後、前社長・橋本好正氏が(株)九州三協を設立し、鉄筋のガス圧接継手工事からレール継手工事に、事業を拡大した。そして、現社長・河村貴夫氏が事業を継承。「絶対品質」を企業理念として掲げた。
河村氏は新たに、継手メーカーとして、顧客から求められている技術やサービスを増やすことで販路の拡大を行い、「絶対品質を実現できる技術力」を高めていった。そうして開発に成功したのが、高強度鉄筋専用継手「3CW工法」だ。機械式継手と溶接継手の利点を生かした日本初の工法として注目され、販路を拡大している。
鉄筋事業の一方、鉄道のレールの継手を担う技術の高さも同社の事業を支える強みだ。基本は日々のレールのメンテナンスで、日本で一番乗降客が多い東京メトロのレール溶接工事も担当する。「鉄筋継手は先代から引き続き福岡で事業を継続していますが、レール継手に関しては、関東、横浜、函館にある営業所で事業を展開しています」と河村社長。
「今は、鉄筋が30%、レールが70%という売上構成です。ここ10年で、先代が始めたレール継手を主要事業にすることができました」(同)。
「九州新幹線に自分たちも携わりたい」という先代の橋本氏の強い思いを託され、施工のノウハウや販路を模索し、事業開始から6年ほどで今の元請会社から仕事を得られるようになった。「念願の九州新幹線のレール継手工事も施工し、今では東京メトロを中心に日本各地の路線で仕事をさせていただいています」。
タブーを破ってでも挑戦したかった会社の命運を分けたターニングポイント
基本は元請会社から仕事の発注をもらうのだが、あるとき、東京メトロから直接仕事のオファーがきたという。「東京メトロさんが、安全かつ正確に、そしてある程度の期間で確実に鉄道工事ができる施工会社を探していたところ、縁あって当社にお声がけをいただきました」。当時は鉄道会社から直接仕事をもらうことがタブーとされていた時代だ。しかし、経営理念のなかで「生活空間の利便性の向上と安全保障」を謳う企業として使命感に駆られ、かつ、当時の福岡で展開していた鉄筋事業が不況に陥っていたこともあり、河村社長はどうしてもチャレンジしたかった。
自分の考えを元請会社に必死になって説明した結果、元請会社の作業量と質を落とさないという条件で、東京メトロと直接仕事をする許しを得たという。「経営の指導をしていただいている方に相談したところ、『チャンスだからやったほうが良い。元請会社もアクティスを大事に思っているはずだから、しっかりと説明すれば、これで縁が切れることはない』と言っていただきました。今では鉄道会社から直接仕事を得ている事業者も多くあるので、あの時我々が挑戦したことは間違いではなかったと思っています」。
この出来事がターニングポイントとなって鉄道事業はさらに伸張し、業績を上げる原動力となった。「鉄筋は社会情勢や景気に左右されて売上が不安定になりかねない反面、レールは4月の時点で売上と出来高が予測されるので、安定性があるのはとても重要です」と当時を振り返りながら、会社の分岐点を語った。
技術力と人間力の充実を目指し2020年を人材育成元年に
事業が拡大すれば、自ずと人財も必要になる。アクティスが求めるのは理念である「継手創造企業」のもとで活躍できる、あらゆるスキルをもった従業員だ。そこで、技術育成担当が資格取得をメインに日々訓練を行っている。「技術力と人間力を養うために、2020年は人材育成元年として社内外の研修も積極的に取り入れています。私も含め、全社員で取り組んでいるところです」。
技術力は数値化できるが、人間力は数字に置き換えることができないため、成長度合いがわかりづらい。もっとも、取引先から従業員への褒め言葉を聞くことも増えており、企業理念の「絶対品質」が浸透していると実感するのだという。「絶対的な安全性が求められる緊張感のある仕事ですが、その分やりがいがあります。私はかつて、自分たちが携わった路線で一番列車が走るところを見てとても感動しました。従業員にもその感動を味わってもらいたいですね」。
人材育成に力を入れつつも、今、河村社長が目指すのはレール事業のマーケットの拡大だ。「レール溶接業界は高齢化が課題の1つです。そこで私たちは、社内で培った育成力を技術部として進化させることで、現場で必要とされる人財を育てていきます。そうすることで、九州を中心に各地で受注のチャンスがあると信じています」。現在59歳の河村社長は、すでに社内に次期社長を任命している。10年後をメドに社長の座を引き継ぐ考えだが、そこまで時間をかけるのには理由がある。
「私が先代から事業承継したときは、営業先や売上構成などのしっかりとした土台がありました。その分営業に苦労するということはなく、技術力を高めたり新事業に集中できました。だから、私が次の世代にしてあげられることは、九州での鉄筋継手工事を発展させレール事業のマーケットを拡大し、人間力の充実した従業員たちを残すことなんです」。
アクティスという列車はいつまでも走り続けていくことだろう。完璧な継ぎ目のレールの上を。
<COMPANY INFORMATION>
代 表:河村 貴夫
所在地:福岡県大野城市仲畑4-2-38
設 立:1977年2月
資本金:1,000万円
TEL:092-501-5963
URL:http://www.aqtis.biz
<プロフィール>
河村 貴夫(かわむら たかお)
1961年5月生まれ。福岡大学卒業後、(株)アクティス(当時・(株)九州三協)に入社。2004年、代表取締役に就任。東京メトロGP工事に着工するなど、レール継手事業を躍進させた。趣味は音楽にゴルフ。関連キーワード
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