2024年11月24日( 日 )

アベノミクス実績の客観的検証

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NetIB-Newsでは、「安倍内閣はアベノミクスを強調し、経済政策だけは成功したと言い張っているが、トランプ大統領が選挙に勝ったと言い張っているのと同じ。巨大な負の遺産は山積みにしたアベノミクスは完全崩壊している」と訴えた11月14日付の記事を紹介する。


11月11日に安倍晋三氏が自民党の「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」の会長に就任したと報じられた。
安倍晋三氏は日本のトランプと化している。

森・加計・桜に河井克行夫妻公選法違反事件への関与が重なり、コロナ対応ではアベノマスク、星野源氏とのコラボ、早すぎた収束宣言で失策が積み重なり、2度目の政権投げ出しをしておきながら、過去への反省などつゆ知らず、政界への影響力を何とか確保したいとの執念だけは持ち合わせている。

2012年12月に発足した第2次安倍内閣。
7年8カ月もの長期にわたって政権を引きずった結果、日本経済はボロボロの状態に陥った。

日本でコロナ感染者が初めて確認されたのは本年1月15日。
1月23日には中国政府が武漢市を封鎖した。
ところが、安倍首相は1月24日に在中国日本大使館HPで春節の休暇を利用して日本を訪問することを中国国民に呼びかけた。

同じ1月24日、台湾政府は中国・武漢市からの入境禁止措置を実施した。
安倍首相は5月25日に全国すべての都道府県の緊急事態宣言を解除し、「わずか1カ月半で感染を収束させることに成功した。日本モデルの力を示した。」と豪語したが、その後、わずか1カ月半で感染者減少は後かたもなく消滅し、コロナ感染者数は激増した。

内閣支持率は急落し、政権を維持する意欲を失った安倍首相は07年秋に続いて二度目の政権投げ出しに突き進んだ。
この政権投げ出しをメディアが持病による断腸の思いでの政権交代という美談に仕立て上げて菅義偉内閣への政権移行を断行した。
しかしながら、安倍首相は政治関与への執着心から脱却できずにいる。

米国大統領選でトランプ大統領が再選に成功すれば、菅内閣への影響力行使が容易になると安倍元首相は期待していたことだろう。
しかしながら、残念なことに大統領選はバイデン候補の圧勝に終わった。

菅義偉首相はバイデン候補勝利を歓迎している。
安倍晋三氏が嫁をいびる小姑のようにトランプ大統領との関係を誇示する恐れがなくなったからだ。

そもそも、安倍首相が辞任を選択したのは河井克行夫妻公選法違反事件の捜査が安倍晋三氏周辺におよぶことを恐れてのことだったと見られる。
自民党本部への家宅捜索を回避するため首相を辞任して捜査に蓋をできる菅義偉氏を後継首相に据えたのだ。

このために、安倍前首相の生殺与奪の大権はすでに菅義偉氏に移行していると見られる。
その安倍前首相に箸の上げ下げまで指図されたくないというのが菅首相の本心なのだろう。

その立場をもわきまえずに、再び政局現世に強い色気を示す安倍晋三氏の言動は片腹痛しというべきもの。
11日に開催された「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」には日銀副総裁を務めた岩田規久男氏も出席したという。

岩田氏は13年3月から18年3月まで日銀副総裁を務めた。
就任に際して、2年以内に消費者物価上昇率を2%以上に引き上げると豪語した。
日銀副総裁人事は国会同意を必要とする。

13年3月5日に衆議院議員運営委員会で岩田規久男日銀副総裁任命についての同意を求める審議が行われた。

民主党の津村啓介議員が質問した。
「全責任を負って市場の信頼をかち取るということですから、それが達成できなかった場合の責任の所在ということははっきりとさせていかなければいけないと思いますが、それは、職を賭すということですか」。

岩田規久男氏は次のように答弁した。
「それは当然、就任して最初からの2年でございますが、それを達成できないというのは、やはり責任が自分たちにあるというふうに思いますので、その責任のとり方、一番どれが良いのかはちょっとわかりませんけれども、やはり、最高の責任のとり方は、辞職するということだというふうに認識はしております」。

これに対して津村議員が次のように確認した。
「2年間というのは、2年後の春、つまり、2015年の春の消費者物価の上昇率2%ということを目標とされる、そして、最高の責任のとり方としては、職をかけるということでよろしいですね」。

岩田規久男氏は次のように答えた。
「それで結構でございます。」

実際に、日本の消費者物価上昇率が前年比2%上昇を達成することはその後一度もなかった。
20年9月の消費者物価上昇率は前年同月比+0.1%。
物価の基調として、より重視される生鮮食品およびエネルギーを除く総合では前年同月比-0.1%である。
しかし、岩田氏は日銀副総裁を辞任せず、5年間、副総裁の椅子に居座った。

11月11日の会合で安倍晋三氏は冒頭のあいさつで、13年に政府と日本銀行がデフレ脱却などの実現に向けて掲げた「物価上昇率2%」に言及した。

安倍氏は「目標として掲げたが、正しくいえば2%以下で安定させることでもよかった」としたうえで、安倍政権下で雇用が増えたとして、「マクロ政策の目標は雇用なので達成したのではないか。開き直るのかと言われたら、それはわかっていない議論だと思う」と述べた。
厚顔無恥を絵に描いたような図式だ。

安倍元首相は第2次安倍内閣発足に際して、
拉致問題解決
日露平和条約締結
憲法改正
の三枚看板を掲げた。

しかし、この3つの目標は1ミリも動かなかった。
日露領土問題など、2島返還論に切り換えたのにロシアから領土問題は存在しないと明言されて1万mも後退した印象だ。
長く内閣が続いたこと以外にプラスの実績は皆無だ。

特定秘密保護法制定
集団的自衛権行使容認憲法解釈変更
戦争法制制定
TPP参加
共謀罪創設
消費税増税
働かせ方改悪
入管法改定
水道法・漁業法改定
種子法廃止
スーパーシティ法制定
原発再稼働
など、悪行三昧としかいえない。

レガシー(遺産)なき政権といわれるが、巨大な負の遺産は山積みにした。
とりわけ、消費税率を5%から10%に倍増させた罪は計り知れない。

安倍内閣はアベノミクスを強調し、経済政策だけは成功したと言い張っているが、トランプ大統領が選挙に勝ったと言い張っているのと同じ。
アベノミクスは完全崩壊している。
経済運営のパフォーマンスを評価する基本尺度で検証しておこう。

第一は実質GDP成長率だ。
民主党政権時代の実質GDP成長率単純平均値(四半期成長率前期比年率)は+1.7%だった。
第2次安倍内閣発足後の成長率平均値は-0.1%。

民主党政権時代の成績も「可」にしか値しないものだが、第2次安倍内閣発足後の成績は完全に「不可」だ。
安倍内閣は消費者物価上昇率を2%以上に引き上げると豪語したが、13年以降、一度も消費者物価上昇率が前年比2%を超えたことはない(消費税増税の影響を除く)。

雇用は就業者数の増加は実現したが、1人あたり実質賃金は減少し続けた。

現金給与総額(基本給、時間外手当、ボーナスの合計)の実質指数推移を見ると、20年7月の指数は13年1月の指数よりも7.1%も低い。
1人あたり実質賃金はアベノミクス下で7.1%も減った。

働く人数は増えたが、1人あたり実質賃金は大幅に減少した。
つまり、生産年齢にある国民が低賃金労働を強制されただけに過ぎない。
一億総低賃金強制労働下に置かれたといえる。

こうした実績を踏まえると安倍内閣下の7年8カ月は文字通り、「悪夢の時代」であった。

自民党の会合に、2年間でインフレ率を2%以上にできなければ職を辞して責任を明らかにすると国会で答弁した岩田規久男氏が同席したことが注目される。
公約に対する責任を取らない。
最悪のパフォーマンスを提示した経済政策運営を反省することもなく、「政策運営は成功した」と言ってしまえるところも、トランプそっくりだ。

安倍元首相がトランプ大統領と波長が合う理由が十分に納得できる残念な現状である。


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