【凡学一生の優しい法律学】アメリカ大統領選の見方(4)
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1.女性コメンテーターの叫び
あるテレビのニュース解説番組で、アメリカ政治の専門家が、大統領選で政党交代を含む改選が起こった場合には、国家機関のほぼ全部の公務員のトップが入れ替わると説明したところ、「アメリカにはそんなにすばらしい制度があるんですか」と叫び声を挙げていた。
なるほど、日本では明治以来続く、官吏・公務員の終身年功序列のところてん式出世システムに加え、高級官僚のみならず下級官僚にも退職後の天下り先として大量の正体不明の公益社団、財団法人が用意され、そこに莫大な国家予算・地方予算が流し込まれている。昔の「平氏にあらずば人でなし」が、「公務員にあらずば・・・」に変貌して久しい。
このような日本の現状を知っている女性コメンテーターにはよほどアメリカの猟官制度(スポイルズシステム)は合理的かつ民主的なものに映ったのだろう。日本の政治学講座では、この猟官制度についてはむしろマイナスのイメージで語られることが多い。それはつまり、大統領選が就職先捜しになっているというものだ。しかしそれは筆者が大学生のころの話で、現在ではまさに官僚による政治腐敗が高度に進化した日本から見れば理想の民主主義制度に見えることになる。
この結果、アメリカでは官僚による法の濫用(繁文縟礼という熟語さえ死語になるほど、日本の法律は官僚により極限まで難解化されており、その結果、行政情報すら、官僚が独占し、国民には秘密となっている事項が無数にある)は事実上不可能となっており、日本での佐川財務局長事件(誠実な官吏の自死事件)などアメリカ人には理解不能なこととなる。
そのような日本の実際の「官僚の、官僚による官僚のための」法律執行状況を知らないでアメリカ司法が出した注目すべき政治的判断に、例のゴーン逃亡事件に関与した2名のアメリカ人の身柄引き渡し決定がある。事件そのものは今後本格的にアメリカの裁判所で身柄引き渡しの法的当否が争われるが、アメリカの裁判所の判事たちもまさか日本の司法当局がゴーン自身の裁判を塩漬けにしている理由など知る由もない。つまり、現実に2名のアメリカ人の引渡しを受けても、日本で「本犯のいない幇助犯」の裁判など不適法に決まっているのだ。なぜなら、幇助事実は本犯と幇助犯との間の合意の存在とその証明が不可欠であるが、ゴーンが海外にいて証言不可能なため、立証不可能である。これについてゴーンは再び日本の得意の人質司法によって、2名のアメリカ人の「自白強制」を予言するコメントをネットに発表している。
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