2024年11月14日( 木 )

黎明期から戦国時代に突入 シェアオフィス業界に求められる変革(中)

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fabbit(株) 代表取締役社長 田中 保成 氏

 アメリカで生まれ、日本でもニーズが高まっているシェアオフィス業界。東京や大阪などの大都市を中心に供給エリアが拡大するとともに、外資系企業や国内企業の新規参入もあって市場は拡大し続けた。そんななかで起きた新型コロナウイルスの感染拡大。コロナ禍はシェアオフィス業界にさまざまな影響を与えている。コワーキングスペース 「fabbit」を運営する fabbit(株)代表取締役社長・田中保成氏に業界の最前線と今後の動向について聞いた。

 ――fabbit宗像開設の経緯を教えてください。

 田中 それまでは大都市、もしくはビジネス街といわれる地域を中心に拠点を開設することが多かったのです。宗像市で開設に至ったポイントの1つとしては、やはり自治体としてスタートアップ支援や中小企業の第二起業支援に力を入れていたということがあります。

 宗像市行政の方々の熱量が非常に高かったことに加えて、東京から移住される方、もしくはUターンで戻って起業される方々がサポーターとしてfabbit宗像を応援していただけることも大きな要因でした。単純に人口の多さや市場規模だけを考慮して決めるのではなく、官民共同型事業にとって宗像市はとても魅力的だったのです。

 ――ハワイではアドバイザーの協力があったということですが、多くの著名人がアドバイザーとして協力されていますね。

 田中 そうですね。元シティグループ証券(株)・取締役元副社長の那珂通雅さん、Blackstone Group Japan元代表でトラスト・キャピタル代表取締役CEOの藤井ダニエル一範さん、Mountain PartnersおよびConny & Co.の創業者であり09年にヨーロピアン・ビジネス・エンジェル・オブ・ザ・イヤーを受賞したCornelius Boerschさん、アップル米国本社副社長兼日本法人代表を歴任された(株)リアルディア代表取締役社長・前刀禎明さん。

 こういった皆さまは幅広いネットワークをもたれていますので、海外への事業展開がスムーズにいっているのはアドバイザーの方々の力も大きいと思います。不定期ではありますが、スタートアップ企業への支援として、アドバイザーが個々に、販路拡大、資金調達、組織人事などさまざまな方面の相談に乗ることもできます。「支援」と一言で言ってもその方法はさまざまで、設備や環境などのハード面だけでなく、ソフト面でもサポートしており、これは他社との大きな違いだと思います。

 ――他社との違いということでしたが、業界全体はどのような状況でしょうか。

 田中 事業が軌道に乗っているところと、そうでないところの明暗がはっきり出始めていると思います。当社は成長戦略の一環としてM&Aを視野に入れておりますが、シェアオフィス買収の話をいただくこともあります。このような場面でも優勝劣敗が出てきていることがわかります。もともとはフラグメントな業界だったのが、勝者と敗者に二極化しつつあると思います。

 大きなトレンドとしては、大企業も含めてオフィスの在り方が見直されてきているということがあります。すでに一部の大企業がオフィス面積を半減すると発表しました。自宅でのリモートワークという働き方がある一方で、在宅勤務が難しい人にとってはシェアオフィスやコワーキングスペースのニーズが高まっているのです。黎明期に多く見られた大都市型だけでなく、これからは郊外型のコワーキングスペースが注目されていくのではないかと思います。

 ――黎明期からいわば「戦国時代」に突入している状況といえますか。

 田中 そうですね。その他の業界でも同様のことがいえますが、ここで勝ち残っていくためには常にサービスや体制を磨いていく必要があります。とくにこの業界は市場として自然に起こり得る変化や働き方改革という労働環境の変化に加えて、コロナ禍という突発的な変化もあるため、業界にもたらされている変化がより加速化している状況にあります。だからこそ、どうやって差別化を打ち出し、磨き上げていくか。ここに長期的に生き残るための差異が生まれてくると思っています。

fabbit Global Gate waySan Francisco

(つづく)

【麓 由哉】

<COMPANY INFORMATION>
fabbit(株)

代 表:田中 保成
所在地:東京都千代田区大手町2-6-1
設 立:2017年4月
資本金:1,000万円

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