2024年11月18日( 月 )

九州地銀の2021年3月期 第2四半期(中間期)決算を検証する (5)

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 同じ県内の地方銀行の合併や経営統合について、独占禁止法の適用外とする特例法が5月20日の参院本会議で可決され、成立。11月27日に施行された。適用期間は10年間。

 骨子としては、金融庁が統合・合併をめざす地銀の事業計画を審査し、収益力の向上や金融サービスの維持につながることを条件に認可する。公正取引委員会(以下、公取委)とも協議して判断する。

 筆者が過去に掲載した記事から、この特例法案が施行されるまでの経緯をさかのぼって見ていきたい。

◆2016年2月26日、親和銀行(本店:長崎県佐世保市)を傘下行としているふくおかFGは、以下のスケジュールで十八銀行(本店:長崎県長崎市)と経営統合することで基本合意したと発表。

2017年4月  ふくおかFGと十八銀行は経営統合。
同10月     ふくおかFG傘下の親和銀行と十八銀行は合併。

 しかし、経営統合によって長崎県内の貸出金シェアがふくおかFG40%、十八銀行が35%で合計75%と、70%を超えるため公取委の審査が長期化。ふくおかFGと十八銀行は公取委の審査が長びいているため、スケジュールを変更した。

17年1月20日  経営統合の半年間延期を発表。
同7月25日    経営統合の無期延期を発表。
同12月15日   公取委は新潟県の第四銀行と北越銀行の経営統合について、「独占禁止法に基づく排除措置命令を行わない」旨を通知し、第四北越FG設立を承認。

 そこで示された考え方を当てはめると、長崎県での十八銀行と親和銀行の合併の承認は困難と
の見方が強まった。

◆ふくおかFGと十八銀行の経営統合を皮切りに、経営が厳しい地銀の経営統合を進めたい金融庁は18年4月11日、同庁が設置していた有識者会議「金融仲介の改善に向けた検討会議」で発言。その報告書の内容は、「都道府県内のシェア等により画一的にその是非を判断するのではなく、競争当局と金融庁が連携し、地域金融の産業構造や特性を踏まえた審査や弊害への対応を実施することが必要」と提言。ふくおかFGと十八銀行の経営統合を認めるよう求めた。
・菅義偉官房長官(現・総理大臣)は、その翌日の4月12日の記者会見で、報告書について言及し、「人口減少下において地域経済のインフラサービスを確保することが重要であり、政府全体で議論する必要がある」と述べ、金融庁の方針を支持するコメントを表明した。
・それを受けて5月7日、ふくおかFGと十八銀行が共同で、「長崎県経済の活性化に貢献する経営統合の実現に向けて」と題するコメントを発表。「将来にわたり長崎県経済の発展に貢献するという経営統合の目的を実現するとともに、独占・寡占による弊害が生じないように運営していく方針」を強調。
◆18年8月24日、ふくおかFGと十八銀行との経営統合は基本合意から2年余り経過して、公取委が承認。19年4月1日、ふくおかFGと十八銀行は経営統合し、ふくおかFGの傘下行は福岡銀行・熊本銀行・親和銀行に十八銀行が加わり、4行となった。

 【表1】を見ていただきたい。
~この表から見えるもの~
◆今年10月1日にふくおかFG傘下の十八銀行と親和銀行が合併して「十八親和銀行」が発足した。地方銀行は現在101行で、第一地銀63行、第二地銀38行となっている。
◆東証(1部)に上場している銀行は57行と16金融グループ。
・57行の内訳は第一地銀40行で、第二地銀は17行。
・金融グループの傘下行は31行で、第一地銀21行、第二地銀10行。
・福証単独上場は5行。第一地銀は筑邦銀行。第二地銀は福岡中央銀行、豊和銀行、宮崎太陽銀行、南日本銀行の4行。
・非上場は第一地銀の但馬銀行と第二地銀の佐賀共栄銀行などの7行となっている。

<まとめ>
 紆余曲折を経て、十八銀行と親和銀行の経営統合、いわゆる「長崎モデル」が認められた。この経営統合がきっかけとなり、地方銀行の合併や経営統合は独占禁止法の適用外とする特例法が施行されることになった。高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大により地域経済は厳しい状況にある。地方銀行も同様である。

 47都道府県のうち、現在のところ山梨県など8府県で地銀は1行となっているが、この特例法が施行されたことから、今後、九州だけでなく全国においても、金融持株会社のSBIホールディングス(株)を含め、地銀の経営統合は急速に進展するのではないだろうか。

(つづく)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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