日本暗黒化加速させる菅秘密警察政治
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「安倍晋三氏の公選法違反事案などが表面化しているのは、菅義偉氏が安倍氏の影響力を排除するために警察・検察権力を利用し始めたことを意味するように見える。菅氏は、特殊な裁量権がある横暴な警察組織のトップと手を組んで国家を運営しようというのだ」と訴えた12月1日付の記事を紹介する。
2020年も残すところひと月となった。
日本でコロナ感染者が初めて確認されたのが1月16日。
2月3日にはダイヤモンド・プリンセスが横浜港に帰港した。
安倍内閣のコロナ対応は後手、後手に回った。日本のコロナ被害が相対的には軽微に抑制されたのは、東アジアの特殊性による。
東アジアにはコロナ感染の被害を軽微にする「ファクターX」が存在すると見られている。9月30日にネイチャー誌に発表された論文は、ネアンデルタール人の遺伝子多様体(バリアント)を保持する人はコロナが重篤化する確率が3倍であると指摘した。
このバリアントを保持する人は欧州や南アジアに多く、東アジアではほとんど存在しないという。ファクターXは特定されていないが、東アジアのコロナ被害が相対的に軽微であることはたしかだ。
しかし、日本ではコロナ感染の収束が実現していない。
安倍内閣、菅内閣がGo Toトラブルキャンペーンを推進し、ウィルス拡散を推進しているためだ。コロナ被害は相対的に軽微だが、高齢者や基礎疾患を持つ人には重篤な影響を与える。
2,000人を超す死者も確認されている。
重症者への対応は特別な機材と多数の労力を必要とする。
重篤な患者に対する設備と人員には限りがあり、重大なリスクを発生させる。中国が武漢市を封鎖したのは1月23日。
台湾政府は1月23日に武漢市からの入境禁止措置を実施した。
これに対して、安倍首相は1月24日、在中国日本大使館HPから、春節の休暇を利用して訪日することを中国国民に呼びかけた。
完全なお花畑対応だった。2月3日に帰港したダイヤモンド・プリンセスがコロナウイルスに汚染されていることが判明したが、安倍内閣は3,711人の乗員乗客のうち、273人にしか検査を実施せず、全員を船内に監禁した。
その結果、ダイヤモンド・プリンセスは洋上培養皿と化して、極めて深刻な被害が生み出された。3月24日に東京五輪延期が正式に決定されるまで、安倍内閣は東京五輪の7月実施を本気で考えていた。
恐るべき状況判断能力だった。感染がまだ収束もしていない7月下旬、安倍内閣はGo Toトラブルキャンペーンの実施を強行した。
その中核人物が菅義偉氏だ。東京都は感染拡大が続いていることから、Go Toトラブルキャンペーンの始動に疑問を投げかけていた。
すると、菅氏はGo Toキャンペーンに批判的な東京都を除外してGo Toトラブルキャンペーン始動を強行した。
Go Toトラベルの一時停止を誰が判断するのかについて議論が提示されているが、この事業で国が決定権をもって運営を仕切ってきたことは明白だ。東京都を再度除外するなら、その判断は国が行うべきだろう。
人の移動変化と感染者数変動の間には約3週間のタイムラグがある。
また、コロナ感染拡大には季節性もある。7月下旬にGo Toトラブルキャンペーンを始動させたが8月は新規陽性者が減ったから因果関係がないと主張する者がいるが、あまりにも浅はかだ。
Go Toトラブルキャンペーンによる人の移動拡大が、3週間後の新規陽性者数拡大につながっていることは統計の検証から明白である。10月からは東京都がGo Toトラブルキャンペーンに組み込まれた。
この影響で10月下旬以降の新規陽性者数が急増したのである。20年はコロナに明けてコロナで幕を閉じるが、鮮明なのは、日本政府の失態だ。
コロナの初期対応に完全に失敗した。
東アジアの特殊性で悲劇が拡大することは回避されたが、感染収束を誘導することもできていない。被害が軽微であっても、政府が積極的に感染を拡大させることは妥当でない。
2,000人を超す死者が発生している。
失わずに済む命が失われることになる。Go Toトラブルキャンペーンは一握りの事業者に法外な利益を供与し、少数の富裕層に利益を供与し、大多数の国民に大きな迷惑を提供し、この間、必死の思いで人命救助に尽力している医療関係者、介護関係者に法外な不利益を与えるもの。
菅義偉氏は利権のことしか考えない。
国民の幸福を考えずに利権拡大しか考えない者には内閣総理大臣職を務めてもらいたくない。
日本政治の大掃除が必要不可欠だ。菅義偉内閣が発足して、日本が一段と暗くなった。
学術会議任命拒否事件は、菅義偉氏が政府を批判する学者を排除した独裁政治の本質を垣間見せたもの。
警察出身者が候補者リストを調査して、政府に批判的な人物を学術会議会員から排除したものだ。仮に内閣総理大臣に人事権があるとしても、このような恣意的な人事は許されない。
元文部科学事務次官の前川喜平氏は文部科学事務次官在任中に、文化功労者を選定する委員会の委員人事について、杉田和博官房長官が横やりを入れたことを明らかにした。政府に批判的な考えを持つ者を委員に選定してはならないと指図したのだ。
戦前に、国家権力が学問の世界に対して不当な介入を行った歴史がある。
この反省に立って、敗戦後の日本は「学問の自由」を憲法に明記した。
学術会議が創設された際には、学問が軍事利用されることを防ぐことも大きな目的とされた。立憲主義は憲法が政治権力を縛る考え方を示すもの。
憲法の根幹には基本的人権の尊重がある。
その基本的人権の根幹をなすものが身体の自由と思想および良心の自由だ。そして、国家が学術界に不当に介入することを防ぐために「学問の自由」が独立して取り扱われた。
ところが、警察官僚が個人の思想および良心の自由に踏み込んで、これを取り締まる行動を強めている。警察官僚の杉田和博内閣官房副長官は官僚組織全体を総括するとともに、内閣人事局長として官僚人事の最高責任者として君臨する。
この杉田和博官房副長官と二人三脚で歩んできたのが菅義偉氏だ。人事権を濫用して官僚組織を支配する。
公安秘密警察国家の暗さを菅義偉氏が全身から発している。日本の警察と検察には特殊な裁量権がある。
犯罪が存在するのに無罪放免にする裁量権と、犯罪が存在しないのに、無実の人間を犯罪者に仕立て上げる裁量権だ。準強姦容疑で逮捕状が発付された被疑者を無罪放免にする裁量権がある一方、完全な無実の人間を極悪非道な犯罪者に仕立て上げる裁量権を有する。
その横暴な警察組織のトップと手を組んで国家を運営しようというのだから、社会全体の空気がどす黒くよどむのは当然のこと。安倍晋三氏の公選法違反事案、政治資金規正法違反事案がいまになって表面化しているのは、菅義偉氏が目の上のこぶである安倍晋三氏の影響力を排除するために警察・検察権力を利用し始めたことを意味しているように見える。
最大の問題は、政治運営が国民全体の幸福増大のために行われていないこと。
突き詰めると、菅義偉氏が自分の利益のために政治を行っていることが問題なのだ。これは、安倍内閣下において、安倍晋三氏が自分の利益のためだけに政治を行っていたことと同じ。
米国でトランプ大統領が再選を逃した最大の理由もここにあった。米国政治が詰まるところ、トランプ大統領が自分自身の利益のためだけに行なっていたことがトランプ大統領排除の最大の原動力になった。
それでも、政治を私物化する者を排除する力を主権者がもっていることを示した点に、米国民主主義の救いがある。日本では、政治を私物化する人物を排除する力を主権者が保持しているか。
日本の民主主義が辛うじて生き残れるかどうかは、この1点にかかっていると言ってよいだろう。
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