期待が高まるワクチン開発ニュース(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
先月、ファイザー社とビオンテック社のワクチン、モデルナ社のワクチンが第3相臨床試験で90%以上の効果があったという中間解析結果が発表され、全世界で新型コロナウイルス感染拡大の収束への期待が高まり、株式市場もそれに反応し、活況を呈した。
米国のFDAは、今月の10日にファイザーのワクチンの緊急使用承認の審査を終わらせる予定だ。モデルナのワクチンはこれより1週間遅れて、17日に審査が開始される予定である。モデルナはトランプ政府の超高速ワクチン開発作戦(Operation Warp Speed)の一環として、ワクチン開発が進められ、米国政府から10億ドル近い研究開発支援を受けている。モデルナのワクチンは、米国政府の支援下で開発されたため、米国に最優先で供給されることになるだろう。
モデルナは、今年中に2,000万回分のワクチンを米国に供給し、来年は5~10億回分を全世界に供給すると見込まれている。今回のmRNAを活用したワクチンの開発は、実は数十年前からあったコンセプトだ。タンパク質の構造を解明し、それを用いて治療をしようという試みであったが、残念ながら、今までmRNAを活用したワクチン開発に成功したことがなかった。この分野の専門家は、今回、mRNAワクチンが成功すると、RNAの研究に大きく貢献するのみでなく、mRNAが治療にも活用できることが立証される機会になるだろうと指摘する。
一方、mRNAは大きな可能性をもつとともに、解決しなければならない課題もある。まず、mRNAでつくられるタンパク質の量が少ない。さらに、そのタンパク質は体内では早期に分解されてしまい、治療剤には向いていないという。加えて、今回の新しいワクチンは-70℃で保管する必要があり、保管場所や方法が限定される。これらの保管の問題を解決するために、ドイツのキュアバック社はおよそ5℃で保管できるワクチンを開発しているという。
最後に、韓国のワクチンの開発状況を見てみよう。韓国政府は、年内には自国でワクチン開発の結果が出るだろうと予想している。もし年内に実現ができなくても、来年の始めには韓国製ワクチンが市民に届けられるのではないかと考えられている。
業界関係者によると、韓国では新型コロナウイルス関連の開発案件は合計30件で、このうち22件(治療剤19件、ワクチン3件)は治験が進んでいる。このなかで先頭を走るのはバイオ新薬を複製した医薬品、バイオシミラーで有名なセルトリオン社である。
セルトリオンは、新型コロナウイルスの抗体医薬品のグローバルでの第2相臨床試験の対象者327名を募集し、投薬を終え、その中間解析の結果を年内にまとめて、MFDS(韓国食品医薬品安全処、旧KFDA)に緊急使用承認を申請し、来年早々に出荷する計画を立てている。とくに同社はMFDSの承認が下りることを前提にして、10万名分の抗体医薬品の生産をすでに開始している。
このようにコロナ終息に向けたワクチン開発のニュースがある一方で、世界各国では、新型コロナウイルス感染拡大の第3波で患者が急増している。ワクチンの早期投入により、新型コロナウイルス感染拡大が抑えられることを祈ってやまない。
他方で、ワクチンの安全性や活用に対して懐疑的な見方をする人も多くいる。ワクチンが新型コロナウイルスの感染拡大にどのような結果をもたらすのか、世界の注目が集まっている。
(了)
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