GoToキャンセル5割補償分配の闇
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は、「Go To事業者がキャンセル料で利益を膨らませることは合理的でない。公正なルールの設定が必要不可欠だ」と訴えた12月15日付の記事を紹介する。
12月9日付ブログ記事
「感染拡大推進菅義偉氏投降が間近」
に次のように記述した。コロナ感染が順当に拡大している。
感染が拡大している理由は2つ。第一は菅内閣が感染拡大を推進していること。
第二は季節的な要因。冬季は感染が拡大しやすい。
気温、湿度が低下するとともに、部屋の換気が行われにくくなる。菅内閣による感染拡大推進は「人の移動拡大推進」によっている。
人の移動と新規陽性者数との間には3週間のタイムラグが存在する。
11月の3連休に人の移動が拡大した。
その影響は12月中旬になって表れる。正しい手順は
感染拡大抑止を優先し、その範囲内で経済活動の維持を図ること。
感染拡大を推進すれば、結局は極端な行動抑制策が必要となり、経済活動の著しい悪化を招いてしまう。ところが、菅内閣は感染拡大推進をやめない。
Go Toトラブルキャンペーンは感染拡大の中心施策になっている。「勝負の3週間」と銘打たれたが、「感染拡大推進に全力を挙げる勝負の3週間」になっている。
12月中旬にさらに感染拡大が確認されれば、結局、Go To一時中断が強制されることになる。
そうなると、宿泊、飲食の産業にとってもっとも痛手が大きい年末年始の行動抑制が強制されることになる。菅義偉氏は大きな勘違いをしている。
菅首相は自分を独裁者だと勘違いしている。主権者は国民。
国民が菅氏にNOを突きつければ、菅氏は存立の基盤を失う。
コロナ感染拡大推進の菅義偉氏はコロナとともに去りぬことになる。遡って、11月24日付メルマガ記事
「反知性主義支離滅裂政策が日本を亡ぼす」
には、次のように記述した。Go Toトラブルキャンペーンを全面展開してきたことは、取りも直さず、新型コロナの感染を日本全国に拡散することを意味する。
そしていま、順当に日本全国に感染拡大が進行している。
人の移動と新規陽性者数推移に明瞭な連動関係が観察される。注意が必要なのは人の移動がタイムラグをともなって新規陽性者数確認につながること。
タイムラグは約3週間と判断される。
Go Toトラブルキャンペーン全面推進がタイムラグをともなって新規陽性者数の急拡大を生んでいる。11月の3連休を前に日本全国で感染が急拡大した。
この時点で政府が感染拡大抑止を優先するなら、直ちに運用休止の措置を取るべきということになる。
ところが、菅内閣は3連休に際しての措置を一切取らなかった。11月3連休の人の移動を全面推進したことで、12月中旬の新規陽性者数が一段と激増することが予想される。
その主因がGo Toトラブルキャンペーンにあることをあらかじめ告知しておく。12月中旬に感染爆発状態が広がれば、年末年始の人の移動について、全面的な抑止措置が必要になる。
「急いてはことをし損じる」の典型事例だ。「令和おじさん」が「戦力の逐次投入」「現実を冷静に見つめる科学的判断の欠落」を特徴とする「令和のインパール作戦」を強行して、全面的な敗走に追い込まれている。
完全に予想された事態だが、被害を受けるのが国民であることを忘れてはならない。
「Go To全面一時停止」と銘打っているが、直ちに実行するわけではない。
半月も先送りしての実施だ。「戦力の逐次投入」が「失敗の本質」の重要な一角を占める。
菅内閣総辞職の日が急速に前倒しされ始めている。12月14日にNHK世論調査結果が公表された。
菅内閣を「支持する」と答えた人は、先月調査より14%ポイント下がり42%に、「支持しない」と答えた人は、17ポイント上がって36%になった。
支持と不支持の差が6%ポイントまで縮小した。支持しない理由は、
「政策に期待がもてないから」38%
「実行力がないから」29%
「人柄が信頼できないから」17%
だった。新型コロナウイルスに自分や家族が感染する不安をどの程度感じるかの質問に対する回答は、
「大いに感じる」40%
「ある程度感じる」45%
「あまり感じない」10%
「まったく感じない」2%
だった。新型コロナウイルスをめぐる政府のこれまでの対応については、
「大いに評価する」4%
「ある程度評価する」37%
「あまり評価しない」40%
「まったく評価しない」16%
だった。「Go Toトラベル」については、
「続けるべき」12%
「いったん停止すべき」79%
「わからない、無回答」9%
だった。新型コロナウイルス・ワクチンの国による無料接種については、
「接種したい」50%
「接種したくない」36%
「わからない、無回答」14%
だった。年末年始に帰省や旅行をするかについては、
「する」5%
「しない」81%
「まだ決めていない」11%
だった。政府が新型コロナを第2類相当指定感染症に区分しているために、コロナ恐怖症が全国に蔓延している。
最大の警戒を要する重大な感染症であると政府が認定している新型コロナ感染が拡大しているなかで、感染拡大を推進するGo Toトラブル事業をガースー首相が全面推進している。
国民が不信感を強めるのは当然だ。
不信感の拡大は内閣支持率急落に直結する。
御用メディアが実施する世論調査でさえ、支持率が急落しているのだから、実態の支持率は地に堕ちていると判断される。東京、愛知が先行してGo Toトラベルの一時停止を実施するが、なぜ東京、愛知を目的地とする旅行だけが停止の対象で、東京、愛知を出発地とする旅行は停止でなく自粛要請なのか。
東京、愛知を目的地とする旅行よりも、東京、愛知を出発地とする旅行のほうが多いのではないか。感染が拡大している大都市からウイルスが全国各地に運ばれる。
菅内閣が癒着する観光事業者は地方の有力観光事業者だ。
その利益が最優先されている。年末年始のGo Toトラベルをキャンセルした場合の補償率が5割に引き上げられるが、宿泊サービス提供における原価率はそんなに低いのか。
原価2万円の宿泊サービスを4万円で販売していることが前提とされているなら、事実誤認である。旅館が食材などの仕入れを行わずに、アルバイトスタッフを雇わず、一切サービスを提供せずに、宿泊代金の半額を国から支給されれば、宿泊があった場合よりも、キャンセルされた場合のほうが、利益が大きくなる場合も生じる。
12月28日から1月11日まで閉館してしまい、一切、サービスを提供せずに国から満室の客室稼働での宿泊代金の半額を受け取ると旅館自体の利益は膨れ上がる場合もある。
もちろん、費用は変動費だけでなく賃料、正規職員の給与などもあるから、計算は単純ではないが、キャンセルの場合の補償金額の分配について、きめ細かなルールを設定しないと、宿泊事業者とその関係者の間で大きな不公平が発生する。
食材を納入する予定の事業者に対する補償をどうするか。
また、営業があればアルバイトで労働するはずの労働者が雇用の機会を失うことについての補償をどうするか。これらの点についての公正なルールの設定が必要不可欠だ。
事業者がキャンセル料で利益を膨らませることは合理的でない。そもそも、コロナ対策としてのGoTo 事業全体が利権優先の、不公正を絵に描いたような施策なのだ。
その利権政策にしがみつき、全面的な徹底を決断できないガースー首相に対する首相失格の評定が、まもなく主権者によって下されることになるだろう。
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