2024年11月24日( 日 )

安倍晋三氏参考人招致の重大性

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を紹介する。今回は「安倍晋三氏は、桜を見る会の問題など無数のスキャンダル、重大犯罪疑惑にまみれている。偽証が許されない環境での説明を行うべきであり、本来は安倍晋三氏に対して証人喚問を行うべきだ」と訴えた12月22日付の記事を紹介する。


安倍晋三氏が代表を務める政治資金管理団体「晋和会」が桜を見る会前夜祭の収支を収支報告書に記載しなかったこと、選挙区の有権者に対して利益を供与したことに関する容疑について、東京地検特捜部が安倍晋三氏に対して任意の事情聴取を実施したと報じられている。

この問題は国会で再三、取り上げられた問題である。
安倍晋三氏は桜を見る会前夜祭に安倍氏の資金管理団体や安倍事務所は関与していないと説明してきた。

桜を見る会前夜祭はホテルニューオータニや全日空ホテルなど、東京都心の有名ホテルで開催されていた。
アルコール飲料や寿司のカウンターバーなどが提供される大規模パーティーであるが、参加費は5,000円だったとされる。

国会で問題が追及されて野党がホテルに問い合わせたところ、この種のパーティー開催の費用としては1人12,000円が最低値であることなども伝えられてきた。
ところが安倍首相は国会質疑で、パーティーに安倍事務所は一切関与していないと説明した。

飲食の契約はパーティー参加の各個人とホテルとの間で締結されており、参加者が支払った5,000円はそのままホテルに手渡しされ、ホテルから各個人の参加者に領収書が手交されたと説明した。

安倍事務所がホテルから見積書や領収書などを手交されたことはなく、安倍事務所は前夜祭に一切関与していないと説明してきた。

国会は国権の最高機関である。
国会では桜を見る会前夜祭の問題だけでなく、多数の安倍晋三氏が関与する疑惑が問題として取り上げられてきた。

森友学園が政府から大阪に所在する国有地をタダ同然の安価で払い下げされた問題にも安倍首相が深く関わってきた。

財務省は辻褄を合わせるために14の公文書の300カ所以上を改ざんした。
刑法が定める虚偽公文書作成の罪に該当する重大な刑法犯罪である。
虚偽公文書の作成を命じられた近畿財務局の赤木俊夫さんは、心労のあまり自死に追い込まれた。
この経緯について、赤木さんの妻が真相解明を求めて訴訟を提起している。

政府は真相を明らかにするために再度の調査を行う責任を負うが、菅義偉首相は再調査に背を向けたまま。

安倍内閣は安倍氏の親友である加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園に対して、獣医学部の新設を認めた。
加計学園への獣医学部新設認可の経緯は極めて不透明であり、安倍首相が職位を利用して加計学園に利益を供与した疑いがもたれている。

安倍氏が、加計学園の加計孝太郎氏から飲食饗応の接待を受けていたことも明らかになっている。
受託収賄罪にも該当しかねない重大事案であるが真相は解明されていない。

桜を見る会前夜祭に関しては、政治資金規正法違反、公職選挙法違反の容疑が浮上しているが、問題はこれにとどまらない。

「桜を見る会」は政府公式行事である。
この公的行事に、安倍首相が多数の安倍晋三後援会関係者を招待していた疑いが持たれている。
完全な政治私物化の疑惑である。

安倍氏が招待した者が招待状を利用して巨大な詐欺犯罪事案を実行していたことも明らかにされた。
安倍晋三氏の責任は極めて重大だ。

さらに、現在、公職選挙法違反で起訴されている河井案里、河井克行夫妻の事件についても安倍晋三氏および安倍晋三氏事務所の関与が疑われている。

2017年の参院選に河井案里氏が立候補した。
この選挙活動に安倍事務所が深く関与した。
自民党からは1億5,000万円の資金が提供された。
資金源が何であったのかについても疑惑が生じている。

検察は、河井夫妻事件捜査の過程で自民党本部の家宅捜索を行う必要があるが、実施していない。
さらに、安倍晋三氏は地元山口県での選挙に関連して、暴力団関係者と面会して選挙妨害を依頼したとの疑惑も存在する。

安倍晋三氏は無数のスキャンダル、重大犯罪疑惑にまみれている。
桜を見る会前夜祭の問題は、国会が重大問題として取り扱った。
現時点でも疑惑はまったく解消されていない。

この問題について安倍晋三氏は完全虚偽の答弁を繰り返してきたと疑われている。
安倍氏が説明すべき対象は日本全国の全有権者だ。
議院運営委員会の非公開の場で説明したところで、国民に対する説明にはならない。

自民党の森山裕国対委員長が、公開の場での安倍氏の説明機会を設定することを拒否するなら、森山氏を解任すべきだ。
菅内閣は正念場に立たされている。

安倍晋三氏は、偽証が許されない環境での説明を行うべきである。
本来は安倍晋三氏に対して証人喚問を行うべきだ。

森友疑惑では、森友学園の籠池泰典理事長が証人喚問された。
まだ刑事事件で訴追されていない時点での証人喚問実施だった。
籠池氏の証人喚問を積極的に推進したのが、安倍晋三氏自身である。

刑事事件として立件されていない時点での証人喚問には慎重であるべきとの主張を自民党が示しているが、籠池泰典氏に対してはこの論理を排除して証人喚問が実施された。

安倍氏は堂々と証人喚問を受け入れて、国会での説明責任をはたすべきだ。

政府は証人喚問や参考人招致を求められると、「国会のことは国会が判断される」と答弁する。
しかし、議院内閣制においては議会多数政党が内閣を編成する。
つまり、内閣と国会多数勢力は重複するのである。

議会多数勢力が当然はたすべき説明責任を「数の力」で排除するのは、民主主義の根幹を損なうもの。

かつてメディアや自民党は小沢一郎氏に対して「数の力を頼みにする運営手法」を激しく攻撃してきた。

現在の政府・与党の対応は、国会における多数勢力という「数の力」を頼みに民主主義の根幹を破壊する行動そのもの。

日本学術会議法の規定とこれまでの法律解釈に関する政府答弁に違反して菅首相が日本学術会議の会員任命を拒否した問題では、杉田官房副長官の越権行為、違法行為が問題にされている。
杉田和博官房副長官を国会に招致して説明責任を果たさせることも当然だ。

しかし、与党は「数の力」を頼みに、当然はたすべき責務をすべて闇に葬っている。
議会政治を形骸化させる、民主主義の根幹を破壊する暴走というほかない。

このような局面で最重要の役割をはたすべき存在が野党だ。
国会の運営は与野党の国対委員長が協議して決定している。
野党を代表して折衝に当たっているのが立憲民主党の安住淳国対委員長だ。
安住氏は記者に対しては、杉田和博氏の参考人招致が必要、安倍晋三氏の公開の場での説明が必要などの正論を述べる。

しかし、自民党との交渉では森山裕氏が「党に持ち帰って協議する」と述べて、結果として、「野党の要求を受け入れることはできない」を回答すると、唯々諾々とこれを受け入れてきた。
これでは文字通り「ガキの使い」に過ぎない。
国会対応を「ガキの使い」でやられたのでは主権者が浮かばれない。

そもそも検察が安倍氏に事情聴取して安倍氏が「私は知らなかった」と発言するのを、そのまま許容するのでは、検察の存在意義が問われる。

安倍氏は、ホテルに確認を入れるだけで事実を把握できる立場にあった。
当然のことながら事実関係を詳細に調べたうえで、国会で説明しているはずだ。
安倍氏が事実関係を知らなかったと信じるに足る状況証拠さえ存在しない。
安倍氏は晋和会の責任者として、晋和会の行為に対して最終責任を負う存在だ。

安倍氏は善管注意義務を負っている。
しかも、国会で再三にわたって詳細な説明を求められていた。
秘書と口裏を合わせて、安倍晋三氏が事実を知らなかったとしていると推察するのが順当だ。

検察は、このような事案についてこそ「司法取引」を活用すべきだ。
秘書に対して、「司法取引」によって真相を供述することを求めるべきだ。

いずれにせよ、安倍氏が国会の公開の場で説明責任をはたすべきことは当然のこと。
これを議院運営委員会での非公開での説明で終わらせるなら、国民は蹶起するする必要がある。

立憲民主党の安住淳国対委員長、枝野幸男代表を解任させる必要も生じる。
この問題処理に関して、主権者が最大の監視を強めるべき対象が、安住淳氏と枝野幸男氏であることを明確にしておく必要がある。


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