大胆にチャレンジして活性化を 人が集まり、残る伊佐市へ
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伊佐市長 橋本 欣也 氏
11月に行われた鹿児島県伊佐市長選は(一社)福岡県中小企業経営者協会への出向経験も有する橋本欣也氏が初挑戦で見事に当選をはたした。橋本氏は在任25年の前市長の遺産を継承しつつ、できないと思うことでも失敗を恐れずにチャレンジすることへの変化を掲げる。コロナ禍でのリモートワークの普及により、地方の自治体にとっては外からの移住促進PRの機会が生まれている。子育て支援、産業支援に力を入れ、それらを通して市民の満足度を向上させるとともに、伊佐への移住促進を図ろうとしている橋本氏に話をうかがった。
(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)
一歩前に踏み出す、できないことでも挑戦を
――市長になることを考えられたのはいつごろからでしょうか。
橋本 約2年前に隈元新・前市長が勇退する意思を示したときです。なお、私は大口市職員として(一社)福岡中小企業経営者協会に2000年4月1日~02年3月31日の2年間、出向しており、任期を終えてから、そこで得たことを地域での活動において実践したいと考え、市長にという思いを抱いておりました。私は福岡でいろいろな経験をさせてもらい、人のために一歩前に踏み出すということも学んでいて、次は自分が立つべきだと考えた次第です。
――前任のどの部分を継承していきますか。またどのような独自性を打ち出していきますか。
橋本 隈元前市長が実現した市役所の内部改革と財政健全化、市政運営の安定化、および災害時の危機管理のスピード感について、とくに引き継いでいきます。
一方、従来の常識を打ち破り、従来できないと思っていたことをできるように変えることも大事です。私は今回の選挙を若さと行動力をもって戦いました。本当に必要なものであれば何回でもチャレンジして、実現に向けて努力します。加えて、若い職員が提言をしやすい雰囲気をつくり、彼らが失敗を恐れずにチャレンジすることで活性化につながればと思っています。
子育て支援で教育日本一に
――政策では子育て・教育支援をとくに重視していますね。
橋本 将来の発展のために、教育日本一を掲げています。地域の皆さん、学校現場と行政が一体となって子どもたちに思いを注ぐことにより、子どもの学力面のみならず精神面、心の面を育てていく環境を整え、しっかり育てることができると信じています。ほかの町で不登校だった子どもが伊佐の小学校にきて、学校に行けるようになった事例もあります。
――教育面でほかの自治体と差別化を図ることは、人口減対策の1つになりえますか。
橋本 都会で学校に行けなくなった子どもが、伊佐にきたら行けるようになるという実績が広がっていけば、教育効果を期待して移住を考えてもらえます。都会では子どもの周りの環境に余裕がなくなり、子どもにしわ寄せがいくという側面があるかと思いますが、伊佐市のような田舎にきてもらい、ゆったりとした雰囲気のなかで子育てについて見直してもらいたいと思います。
――産業に関して、取り組みたいことは何でしょうか。
橋本 以前、伊佐の焼酎で伊佐の黒豚を煮た「伊佐の焼酎豚」という特産品を開発し、「電気のふるさとじまん市」で日本一の大賞を取ったことがあります。ただ、話題になるだけでは不十分で、売れるものをつくる必要があり、伊佐の素材をうまく組み合わせることで実現可能だと思います。現在、実現させたいと思っているのはお茶です。当地の伊佐米も鹿児島県内のブランド米として有名です。新規の産業に取り組むことによって、新しい稼ぎ方が可能になっていくと思います。
そのために、中学校の空き校舎、廃校舎を利用しての新規産業の振興を考えています。外部から人が入ってきやすいようにして、活性化を図ることを企図しており、実際にいくつか話を進めています。地域の若い担い手らと一緒に勉強、議論する機会を多く設けて、価値を生み出していきます。
地域の資源を活用し、人が集まり、残るまちに
――地方創生、東京の過集積の議論に関して、現在はある意味、地方への移住促進の機会だと思います。
橋本 住宅の改修資金など、移住促進の予算を確保しています。今後は空き家などを安価で提供できるようにし、PRしていきます。予算に関しては、ほぼ自治体の自主財源で行うことが多いです。
移住者が徐々に増えており、伊佐で盛んな農業や林業のような第1次産業をやりたいという若い人が増えています。たとえば、林業に従事するために横浜市から移住してきた若い人がいます。都会から移住してきて、面白い試みをしている人がたくさんおり、そのような雰囲気をしっかりつくり上げていくとともに、PRを強化していきます。
地域での雇用について、地域の特性を活かした新産業の創出などにより、都会から移住してきた人の働く場所を確保していきます。地域に今ある資源を活用することにより、都会からの人材誘致、定住を進めること、ひいては人口減を抑えることも可能なはずです。
近年は地元の高校を卒業した若い人たちの意識が変わり、従来は都会志向が強かったのですが、地元志向が強くなってきています。田舎暮らしに魅力を感じている都会の人が増えていることを考えれば、伊佐に人が集まる要素は十分にあります。
――今後、どのような市にしていかれますか。
橋本 「伊佐に行ったら皆元気だよね、伊佐に行ったら皆笑っているよね」と感じてもらえるような雰囲気づくりをしたいです。そのために、良いと思ったことは即実行に移し、市民の満足度を高めていきます。
【文・構成:茅野 雅弘】
<プロフィール>
橋本 欣也(はしもと・きんや)
1964年、熊本県上益城郡矢部町(現・山都町)生まれ。熊本県立矢部高校卒業後、83年農林水産省林野庁大口営林署入署、92年大口市役所入庁、2000年(一社)福岡県中小企業経営者協会へ出向(~02年)、20年11月に伊佐市長に就任。関連記事
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