国産初の手術ロボット、がん手術で実用化~世界市場独占の米国・ダヴィンチに挑む(前)
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多くの人が一生に一度は受ける外科手術。手術ロボット市場は、これまで米国のインテュイティヴ・サージカルの「ダヴィンチ」がほぼ独占していたが、国内企業の(株)メディカロイドが参入。国産初の手術支援ロボット「hinotori(TM)サージカルロボットシステム」の実用化に成功した。手術ロボット市場は今後、拡大が見込まれている。
腹腔鏡手術から生まれたロボット手術
胃がんや泌尿器がんなどの外科手術といえば、手塚治虫氏の漫画『ブラック・ジャック』のように、ひと昔前はお腹を切って開いた状態でがんを切り取る開腹手術のみであった。しかし、1990年頃から、お腹の4~5カ所に小さな穴を開けて、そのなかにカメラ(内視鏡)や手術器具を入れて行う腹腔鏡(内視鏡)手術が行われるようになった。今では胃がん手術の約30%、泌尿器がん手術の約60%、大腸がん手術の約95%を占める。
開腹手術は今も主流ではあるが、傷口が大きくなるため、回復に時間がかかり、退院するまでの日数が長い。一方、腹腔鏡手術は傷口が小さいため、痛みが少なくて回復が早いと言われている。近年、手術後の退院が早くなったのは、この腹腔鏡手術が普及したことも理由の1つだ。ロボット手術は、腹腔鏡手術が基になって生まれた。
手術ロボットは人が操作
手術ロボットというと、ロボットが自動で手術してくれるというイメージを抱きがちであるが、ロボットを実際に操作して手術するのは医師だ。がんの腹腔鏡手術では、先端にピンセットなどが付いた長い棒状の医療器具(鉗子)や電気メスをお腹に開けた穴から入れて、人の手で器具を操作してがんを切り取る。メディカロイドが開発した手術ロボット「hinotori」には4本の腕があり、その先端には鉗子やカメラが付いている。お腹に開けた穴からそれらを入れて、医師が操作台の3Dモニタの立体画像を見ながら手でハンドルを動かすと、人の手や指の動きに合わせてロボットの腕や鉗子が動く。足元のペダルを踏むことで、お腹のなかを観察する内視鏡のカメラを前後左右に動かす動作や、別のアーム動作に切り替えることができる。電気メスのオン・オフもペダルで行う。
「hinotori」を開発したメディカロイドは、産業用ロボット技術を持つ川崎重工業(株)と医療用検査装置をつくるシスメックス(株)の共同出資により、2013年に設立された。
12月14日に神戸大学付属病院の泌尿器科で、「hinotori」による初の手術が行われた。
日本の手術室に合わせて小型化・軽量化
手術ロボットは米国の「ダヴィンチ」が先行しており、世界で5,000台以上、国内で約350台が導入されている。メディカロイド副社長・田中博文氏は、「世界中のドクターから課題や要望を集め、『hinotori』の開発に生かした」という。
たとえば、日本の病院は手術室が狭いため、ロボットの小型化や軽量化を行った。ロボットの腕の先端に付けて、がんの患部などを挟む鉗子や切り取る電気メスも、医師に使用感などの意見を聞きながら開発を進めた。
また、1969年から産業用の国産ロボット開発を行ってきた川崎重工の技術を生かし、ロボットの腕同士がぶつからず、人間の腕のようにしなやかに細かい動きができるように、使いやすさを追求したという。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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