ストラテジーブレティン(269号)~2021年は短期、中期、長期、超長期循環上昇の起点になる~今年こそは大相場に賭けよう(2)
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「Bストラテジーブレティン」を掲載していく。
今回は2021年1月1日付の記事を紹介。(1)短期経済循環生きていた
短期循環のバネは蓄えられている
20年は、本来は18年春にピークを迎え19年末にボトムを打った世界製造業景気循環の回復の年になるはずであった。長期景気拡大のなかにもミニサイクルがあり、金利・株価など市場はその影響を受けている。
図表4は米国における製造業景気ミニサイクルと長期金利の推移であるが、最近では15年春ピーク、16年央ボトム、18年春ピーク、19年秋ボトムとなっている。18年半ばからのミニ後退は、スマホや自動車の買い替えサイクル、米中貿易戦争による投資案件の棚上げなどによって起こった。その底入れ直後にコロナパンデミックが起こり、ミニサイクルの底がさらに大きく引き下げられたわけだが、その分、21年のリバウンドの力が蓄積されていると考える。
この3~4年の景気ミニサイクルは、貿易・投資・耐久財消費に主導される製造業の景気循環である。製造業分野では、自動車、スマホ、鉄、セメントも、今や中国が世界最大の市場(中国の製造業市場規模は米国のほぼ2倍)であり、世界の製造業景気循環は米国以上に中国が波をつくっている。18年以降の世界経済ミニ循環の落ち込みは、中国内需の悪化によって引き起こされた面が大きく、今はその急反転の局面にある。落ち込みの主因である自動車需要が底入れし、パンデミック対応のインフラ投資、金融緩和による不動産投資が需要を押し上げている。
堆積している欲望と貯蓄が解き放たれる
加えて全世界で欲望と貯蓄が堆積しており(いわゆるペントアップディマンド)、Covid-19の終息の暁にはその一気発現が見込まれる。21年後半には強烈な短期循環の押し上げ圧力が顕在化するのではないか。
商品市況高騰、半導体など品不足の兆候
鉄鉱石、銅、アルミなどの商品市況は7年ぶりの水準まですでに回復している。また半導体や液晶などデバイス各分野では能力不足の顕在化が密かに心配されている。Covid-19で高まったリモート需要により、端末需要、データセンターなどのインフラ需要が急増、さらに5Gなど新技術投資が始まり、最先端半導体などで競争先行のための投資が活発化している。中国は5G投資の実績で他を引き離す構えであり、中国国内での5Gハイテク投資が急増、他国もそれに引きずられて投資競争が始まりつつある。
各国の経済見通しの上方修正が相次いでいる。米FRBは9月から12月の間に、20年のGDP成長率を前年比-3.7%から同-2.4%に、21年を同+4.0%から同+4.2%へと修正した。台湾中銀も9月から12月の間に20年のGDP見通しを同+1.6%から同+2.6%に、21年を同+3.3%から+3.7%へ修正した。中国から通関凍結などの嫌がらせを受けているオーストラリアですら、20年度のGDP見通しを同-1.5%から同+0.75%へと引き上げた。鉄鉱石市況の上昇の恩恵を受けているとみられる。
米国金融政策の微妙な変化から金融市場が連鎖的に変化する
この短期景況感の急回復は、まず米国においてインフレ期待を高め、金融政策スタンス変化の兆し(用心深さをともなった)をもたらし、金融市場全体に影響が伝播していくだろう。株式市場では景気敏感なバリュー株を押上げ、債券市場では長期金利を押上げ、為替市場ではドルの底入れ回復をもたらすのではないか。
バリュー株選好、長期金利上昇、ドル高へのトレンド転換が起きる
今、国際金融市場ではドル安がコンセンサスとなっている。米国が世界でもっとも積極的な金融財政緩和を打ち出しており、ドル供給が潤沢になったためである。加えてゼロ金利政策の下で米国の実質金利(=物価連動債利回り)が-1.2%と世界最低となったことが、ドル安論を大きく後押ししている。
実質金利差は為替市場においてもっとも重要なトレンド決定要因とされており、この米国実質金利低下が、ドル安観測を決定づけている。しかし、米国実質金利の大幅な低下の原因は、ゼロ金利ではない。短期政策金利は米国のみならず、日欧も共通してゼロ近辺である。米国の実質金利が著しく低いのは、Covid-19パンデミック下にあっても米国のインフレ期待がまったく低下しなかったことにある。
図表8に見るように米国の長期期待インフレ率(10年債利回り-TIPS)は1.6~1.7%とすでにコロナ感染前に戻っているが、このことは、米国経済のインフレ基礎体力が相当強いことを示唆している。米国は先進国のなかでもっとも、経済成長に対する自信が強く、ゆえにインフレ期待が高いのであり、そのことが米国の実質金利をことさらに押し下げているといえる。
この積極的な財政金融緩和、経済に対する強い自信は、米国経済が先進国のなかでもっとも力強く回復することを予見させる。そのもとで金融政策転換が見えてくれば、ドルは強まるだろう。
(つづく)
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