2024年12月22日( 日 )

「West Express銀河」を通した夜行列車の復活(後)

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運輸評論家 堀内 重人

 「シュプール号」を利用するには、乗車券・急行券・座席指定券・リフト券などをセットにした「シュプール号」専用きっぷを購入しなければならず、定期の特急列車とは差別化が図られていた。583系電車には寝台設備が備わっていたことから、寝台料金も徴収する「シュプール号」も運転されるなど、毎年冬場には多数の「シュプール号」が運転されていた。

 ところが2000年代になると、不況や少子高齢化に加え、スキー人口の減少、高速道路の延伸、格安ツアーバスの台頭、車両の老朽化もあり、「シュプール号」の運転は年々減少し、現在では「シュプール号」は運転されていない。

 関西から「シュプール号」を運転するとなれば、大山方面になり、運転区間は大阪(京都)~米子間となる。ダイヤは大阪を午後11時過ぎに出発し、米子には午前6時着が妥当である。復路は、米子を午後3時過ぎに出発し、大阪には午後9時ごろに到着させる必要がある。

 スキーバスは価格面で割安であるから、列車種別も「急行」で設定しなければ、価格面で苦しいといえる。またコロナ禍では、定員まで乗客を乗せることができないため、当面は無理と考えられる。

 コロナが収まり、「シュプール号」を運転する際には、座席指定料金を見直す必要がある。従来の520円の座席指定料金では、定員が少なくなるため、利益が出ない。そこで“のびのび座席”を夜行列車で運行する際は、寝具類を提供して簡易寝台として、3,000円程度は徴収したい。「シュプール号」の復路は昼間の運行となる。昼間は横にもなれるため、座席指定料金を1,500円程度としたい。そして普通車の座席は、グリーン車と同等か、それ以上のシートピッチを有するため、1,000円程度の座席指定料金を徴収したうえで、ラウンジで飲食物だけでなく、記念グッズの販売などを行い、収支が均衡するレベルにする必要がある。現在は料金に関する規制が「届出制」に緩和されているため、鉄道事業者の裁量で柔軟な料金設定がしやすくなっている。

 筆者は、「West Express銀河」は、今後の寝台夜行列車を復活させるノウハウが詰まっているとみている。今後は、「トワイライトエクスプレス瑞風」「サンライズ瀬戸・出雲」と合わせて、そのノウハウを活用しなければならないと考える。

 117系電車を改造して導入することは、最高運転速度が110km/h止まりであるだけでなく、改造に対する制約などもあり、人気が継続するのであれば、完全な新製車を導入したほうが、居住性や乗り心地を加味して考えると得策である。

 設備については、“のびのび座席”以外に、1人用・2人用グリーン個室、開放型グリーン車に注目している。1人用・2人用のグリーン個室は、寝具類や洗面台を設け、割安なA個室寝台車として、東京~大阪間などの比較的短距離の寝台夜行列車を復活させる際に導入してもよいように感じる。東京~大阪間の寝台夜行列車は、最も復活させる必要性が高く、首都圏は列車密度が高いだけでなく、東京駅には機回し線がないことから、寝台急行「銀河」を復活させる場合は、電車列車とならざるを得ない。その場合は、1人用A個室で1万円程度、2人用A個室で1 室1万8,000円程度が妥当である。

 開放型のグリーン車は、定員を増やし生産性を向上させるために2階建て構造とする。そして寝台幅を1mに広げるだけでなく、敷布団と寝具類を用意して、“クシェットA”として6,000円程度で販売してもよい。候補として、トラック運転手も利用したりする「カートレイン」が挙げられる。

 「West Express銀河」は定期の夜行列車(寝台夜行列車)や、かつて運転されていた「シュプール号」を復活させるための必要なノウハウを含んでいる。この列車が好評であれば、そのノウハウを活用して完全な新造車を導入し、夜行列車が復活することを願っている。

(了)

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