【ドキュメント】中洲クライシス そして中洲(ここ)で生きていく(中)
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昨年4月に続く2回目の緊急事態宣言発出(1月13日)から半月が過ぎた2月2日、菅政権は宣言の期間を1カ月延長することを決めた。その一方、与党政治家の銀座クラブ通いが発覚して議員辞職に追い込まれるなど、歓楽街の営業自粛問題は本音とタテマエのはざまで揺れている。感染拡大第3波に見舞われた中洲で生きる人々の声を拾った。
秘密パーティーに潜入
緊急事態宣言が発出されて以降、夜の中洲からは人が消えたように見える。通りを歩く人影はほとんどなく、開けている店も8時前にはシャッターを下ろし、一見、行儀よく自粛要請に従っているようだ。宣言下にあることを大音量で告知するパトカーが巡回していることもあり、なにやら戒厳令下のまちのようで緊張感も漂う。しかし、中洲の住民たちはそこまで従順ではない。これをビジネスチャンスととらえて、ある種の悪知恵を最大限働かせている。
中洲2丁目のビルに入るスナック。8時前になるとドア横のネオンを消し、入念に鍵をかけたうえで秘密パーティーが始まる。中に入れるのはタレコミのリスクが少ない、信用できる常連客だけ。声をかけて10人以上集まることが確定したときに開催される。通常の営業時間を超えて深夜1時まで営業し、客単価は2~4万円と幅があるという。
午後8時以降に店を開けていると協力金がもらえないため、店を閉めたと見せかけつつ営業を続けるというほぼ違法営業。もしばれたら詐欺罪などに問われるリスクもあるが、お構いなし。時間外営業の証拠を押さえられないように、あらかじめスマホの電源を切ってもらうという念の入れようだ。
この日はカウンターに3人、テーブル席は5人と6人で2卓埋まり、ドアを閉めきっているため結果的にかなり「密」な状況となった。お店が用意した特製鍋料理を囲む卓もあれば、延々とカラオケを歌い続けるグループも。客についた女の子たちは当然のようにマスクやフェイスシールドをしていない。
人妻デリヘル嬢は夫公認
デリバリーヘルス(デリヘル)は、女性を客の自宅やホテルに派遣する形態の性風俗。話を聞いた「Sちゃん」は、30代前半の人妻デリヘル嬢。福岡市内の会社に勤務する夫は、Sちゃんが性風俗で働いていることを知っているという。
「いわゆる夫公認の人妻デリヘル嬢です。もともと風俗で働き始めたのは夫の給与が少なくて生活できないっていうのがあったから。(夫は)仕方ないってあきらめてるんじゃないかな」。夫の手取りは月に25万円弱。コロナ禍で減ったとはいえSちゃんは1日約4時間、週5日勤務で20万円ほど稼ぐので、まだまだ子どもにお金のかかる現状では辞めることができない。
Sちゃんの風俗歴は長く、19歳のときにデリヘルでスタートし、20歳から5年間のブランクを経てデリヘルに復帰。26歳のときに中洲のソープランドに移った。コロナ禍で売上がほとんど立たなくなった昨年にソープランドを辞めて、人妻デリヘルに移籍している。ソープランド時代は多いときで月に50万円ほど収入があり、25万円を下回ったことはなかったが、昨年は出張族や海外旅行客などの需要が消滅したのを体感したという。現在、午前中は別の仕事で働き、夜はデリヘル嬢というハードな毎日だ。ただし、金銭的事情がなければすぐにでも風俗嬢を辞めたい……というわけでもないという。
「本指名(常連客)の皆さんに支えられているところがあるから、すぐに辞めるのも申し訳ないなって。この仕事って、ほかの人が言うほど嫌なことって少ないんです、じつは」
(つづく)
【中洲クライシス取材班】
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