東京オリンピックは健全な世界を取り戻すチャンスに衣替えを!(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸
ワクチン開発でロシア・中国が共闘
東京オリンピックを招致するために、国際オリンピック委員会の有力な委員に前代未聞の金銭をともなう説得工作が行われたことは公然の事実。実はIOCの規約によれば、委員への贈答品については「大きな金額でなければ授受を認める」となっている。問題は具体的な上限が明示されていないため、抜け穴だらけだったと言っても過言ではないことだ。
その裏方の仕事を仕切っていたのが、菅官房長官であった。国際陸連の会長を務め、IOCに絶大な影響力をもち、「オリンピック利権の仕切り役」と呼ばれていたラミン・ディアク氏(セネガル出身)に働きかけ、IOCのアフリカ票の取りまとめを依頼したことは、国際調査報道ジャーナリスト連合やロイター社の調査で明らかにされた。ちなみに、現在ディアク氏は、フランス当局によってドーピングに絡む汚職疑惑で自宅監禁に置かれている。
何としても1年の延期で済ませ、今年7月には開催に至らねばならない。でなければ、巨額のインフラ投資や裏金が水泡に帰してしまう。この間、東京オリンピック招致委員会の理事長で日本オリンピック委員会前会長・竹田恒和氏は贈収賄疑惑を受け、辞任を余儀なくされた。これは、まさに「疑惑のオリンピック」を象徴する出来事であった。
そうしたなか、アメリカもロシアも必死で新型コロナウイルスのワクチン開発に取り組んでいる。当然、中国も負けてはいない。独自のワクチン開発に精力的に資源を投入している。武漢が「COVID-19(新型コロナウイルス)」の発生源との国際的な批判を受け、国内の感染封じ込めに国を挙げて強力な対応を続けてきたわけだが、その効果もあり、中国での感染はピークを過ぎた状況にあるといわれている。「ピンチをチャンスに変えよう」という発想から、コロナ・ワクチンの開発に資金と人材を惜しみなく投入しているようだ。その結果、WHOが期待する9種のワクチンのうち、4種は中国で開発が進んでいる。
中国は東京オリンピックの次に控える2022年の北京・河北省冬季オリンピックの準備に邁進しており、すでにウインタースポーツ用の競技場をすべて完成したと豪語。これまでスキーやスケートに馴染みの薄かった国民に向けた啓蒙活動にも力を入れている。もちろん、感染症対策としてのワクチン開発と接種の拡大にも国を挙げて取り組んでいるようだ。
意外な展開としては、中国の感染症研究の第一人者で、国家衛生健康委員会専門家グループ長を務める鍾南山博士が、ロシア製のワクチンを高く評価したうえで「この機会にロシアと中国の専門家がCOVID-19用のワクチンを共同で開発、製造する必要性」にも言及したことである。
要は、日本をはじめ世界が期待し注目するコロナ・ワクチンの開発で、ロシアと中国が手を結んで取り組むという流れが生まれつつあるわけだ。ロシアのペトロバックス社と中国のキャンシノ・バイオロジックス社はすでにワクチンの共同開発と治験で手を組んでいる。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。関連キーワード
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