神の怒り、自然の破壊力に~慢心人間無力(3)
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地震の破壊力に仰天
阿蘇大橋(通称赤橋)が崩落という一報を受けた瞬間、「あの深い渓谷に打ち込んであった橋げたが曲がって落下したのか。すごい衝撃があったのだな」という勝手な想像した。一方では、あの橋を渡って高森、五ヶ瀬、耳川沿いに筆者の故郷・美々津に帰郷した懐かしい記憶が脳裏をかすめた。「立野から高森方向への迂回が不可能になると阿蘇方面への交通は非常に混雑するな」と心配するばかりであった。
ところが驚いた。立野から赤橋までの1kmに及ぶ区間で山岳地帯が土砂崩れを起こしたのである。この影響で国道57号は全面的にストップ。復旧の見通しはない。この1億トンにも達すかともいわれる膨大な量の土砂が赤橋に襲いかかり潰されたのであった。表現を換えれば橋が圧死した状態になったのだ。この立野地区での土砂崩れ・赤橋の崩落の現場を写真で見たが、この現場こそが今回の熊本地震の破壊力を見せつけた最大の場所ではなかったのだろうか!!
話はそれるが、赤橋から高森に向けて1km行くと東海大学がある。そこでは学生寮が倒壊して死亡者がでた。今から思えば「こんな地盤不安なところに学校を建設するとはいかがなものか!!」という思いが湧いてくる。今回の震災で、いろいろな悲報を目にし、耳にした。だが、本音のところでは「これだけの激震に襲われてこの程度に被害を抑えられたのか!!」と一人呟いていた。「神も非情でないな」と感謝の心に浸っていたのは事実であった。
火災勃発を食い止められたのが幸いした
気象庁から「二回の震度7が襲う」という発表がなされた。14日夜、16日未明の2回の地震とも震度7が発生したというものである。直下型で震度7は稀有である。阪神・淡路島大震災では1回、記録しているそうだ。あの関東大震災でも震度6である。直下型では珍しい震度7を熊本地震では2日間で2回記録した。これは前代未聞の事態である。不謹慎であるが、「そんな激震であれば全壊する建物が続出してしまうのではないかな」と思った。
今回の震災取材で学ぶことも多々あった。前回も書いたことだ。構造設計士曰く、「震度6強ならば倒れるような造りにしている」。学会、行政は上記したような指導を推進しているとか。この業界常識を頭に叩き込まれた故に「よくまぁー1万戸の住宅の倒壊という情報に驚愕せずに済んだ」とひと安心したのである。「地震に耐えきった強い建物、健闘した」という称賛のエールを送りたい気持ちになったのだ。このテーマは後の項で触れる。
阪神・淡路大震災と関東大震災の被害状況の資料を添付している。<神の怒り、自然の破壊力に~慢心人間無力(2)>を参照されたし。それぞれに被害状況の特色がある。阪神・淡路大震災は家屋の全半壊が24万軒(世帯としては約44万世帯)で死者6,434人(行方不明者3名)、負傷者43,792人と桁違いの被害がでている。死者の80%相当の5,000人が圧死だったという。熊本地震ではこれだけの圧死者はでていない。家が頑丈なのが幸いしたのかは定かではない。
関東大震災の被害の原因は一言でいえば火災によるものである。東京市(15区)における住宅全壊はおよそ1.2万棟であったに対し、焼失は約22万棟で焼失面積は市域総面積の44%に及んだとか。死者総数約6.9万人の95%は火災によるものとみられる。今回の熊本地震の場合には火災の発生が少なかったことが人的被害の膨張を食い止めることができたことが特徴のようである。もちろん、上記の阪神・淡路大震災、関東大震災が発生した地域は熊本地区と比較して人口密度が高いことが大規模の被害を生じた要因となっている。
場所による運・不運
指摘してきたとおりに確かに倒壊戸数などは地震規模の格段の強さから判断すると「少ない」という印象である。しかし、実際の被害は桁違いにあるようだ。例えばマンションの調査をしてみたが、マンションの耐震強化工事の必要性、補強の手直し、個人所帯空間の補正などの莫大な出費が必要とされている。極論者は「通り町沿いの商業施設、オフィスはすべて解体・建て替えが必要」と叫んでいるほどだ。
熊本市には長嶺という地名がある。この地区に友人知人がたくさん住んでいる。おなじ町内に住んでいても被害状況がまるで違う。やはり地震の襲う揺れの強弱は微妙な違いがあって運・不運が関係しているように感じられる。片や倒壊寸前、此方はほぼ被害なしなのだ。今回の地震に関しては『神の怒りも手心を加えてくれた』感じがする。被災者の方々が、一時間でも早く日常生活を取り戻すために我々も汗をかき支援をしていこう。
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