2024年11月22日( 金 )

【大手企業を糾弾する/大和ハウス】バイオガスプラント事業でずさん工事 プラント正常化を「投げ出し」の卑劣(2)

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 「巨艦」大和ハウスと福岡県糸島市の養豚農家「浦ファーム」の間に起きた、プラントの施工不良トラブル。問題だらけのプラントはついに、近隣住民を巻き込む河川汚染事故を引き起こした。

相次ぐプラント設備の不具合

 糸島市バイオマス産業都市構想の一環として、2015年にバイオガスプラント事業への参入を決めた(有)浦ファーム(糸島市板持)。浦ファームが計画したバイオガスプラントは大きく分けて、燃料となるバイオガスの「生成」過程と、バイオガスを燃料としてエンジンを回す「発電」部分から成る。生成過程ではまず、豚ふん尿のほか家畜用飼料や食品残さなどの有機性廃棄物を破砕し、水分調整等の前処理をした後にタンク内でメタン発酵させてバイオガスを生成。その後、それを燃料としてエンジンを回して発電するしくみだ。

バイオガスプラントの設備配置図
バイオガスプラントの設備配置図

 バイオガスプラントの設計と施工を請け負った大和ハウスは18年11月、計画から2カ月遅れでプラントを竣工し、試運転をスタートさせた。ところが、前処理装置やベルトコンベア部分で不適切な運用が原因とみられる不具合が発生し、メインポンプの不調やエンジンの緊急停止が頻発。さらに配管から漏水が発生した際には、不具合が出た配管部を交換しようにも取り外しできない仕様であることが判明するなど、明らかな設計ミスと思われる問題が発覚した。

配管からの漏水
配管からの漏水

 さらに、単なる不具合では済まされない重大な欠陥も見つかった。メタン発酵で発生するバイオガスにはメタンと二酸化炭素のほかに毒性の強い硫化水素が含まれ、硫化水素は機器を腐食させる性質ももつため、発電機の燃料として使用する際には取り除く装置(脱硫装置)が必要となる。ところが、浦ファームのプラントではタンク内の硫酸化水素濃度が2,083ppmまで上がり、一時は人が吸い込めば呼吸停止の昏睡状態に陥るレベルにまで達していたことがわかったのだ。

 異常な濃度に達した硫酸化水素の存在と、頻発するエンジントラブル――。これについて浦ファーム側は、「高い濃度の硫化水素を含んだバイオガスがそのまま発電装置に送り込まれたことがエンジン緊急停止の原因になったのではないか」と、当然の疑問を抱いた。しかし大和ハウス側は必要な容量の脱硫装置が設置されていなかったことを考慮しようとせず、エンジントラブルはあくまで「(エンジン)メーカーの瑕疵」として対応した。

魚の大量死~河川汚染の発生

 そうした施工トラブルの渦中にあった20年10月、今度は近隣住民を巻き込んだ河川汚染事故が発生した。メタン発酵させた後に残る廃液がプラントから漏れ出て隣接する川に流出し、生息する魚を大量死させたのだ。川一面に貧血死したとみられる魚が浮かぶ事態となり、現場を発見した近隣住民を巻き込んでの大騒動に発展した。

 流出した廃液には魚類に対して強い毒性をもつ高濃度のアンモニア態窒素が多量に含まれており、のちの調査で3時間にわたって35㎥(35,000ℓ)もの廃液が農業用水路を伝って川に流れ込んでいたことがわかった。

廃液が流れ出した農業用水路
廃液が流れ出した農業用水路

 この事故に関して大和ハウスは、廃液を貯蔵していたタンク下部の水位センサーが誤作動したことが原因で、インターネット回線の不具合により監視できていなかったと報告している。しかし、同センサーの誤作動はそれ以前から何度も発生しており、浦社長は大和ハウスに対して取り扱いを十分に注意するように求めていた。つまり事故の原因はセンサーの誤作動そのものよりも、誤作動を認識しながら対処を怠った「人為的ミス」ともいえるのだ。大和ハウス側の「インターネット回線の不具合」という主張は事故の本質的原因から目をそらし、意図的に問題を矮小化しているようにすらみえる。

地域住民から営業停止を求める声も

 河川汚染事故の後、浦ファームに対して地域住民からは営業停止を求める声が挙がっている。糸島市板持で約60年にわたって養豚業を営んできた浦ファームは、その業態の性質上これまでも近隣住民から苦情が出ないようにあらゆる面で配慮してきた。今回のバイオガスプラントもじつは、臭気問題の緩和という目的を兼ねていたという。しかし汚染事故を起こした結果周囲の目は厳しくなり、地域住民から安全にプラント運営ができない事業者とみなされて状況が一変している。

 国内業界トップランナーである大和ハウスにとって浦ファームの案件は、数多(あまた)抱えるプロジェクトのひとつで生じた単なる「トラブル」にすぎないのだろう。しかし、地域に根差して営業を続ける畜産農家にとってこのプラントは事業の命運を託した唯一無二の大プロジェクトであり、経営者にとっては人生を賭けた投資なのだ。巨艦・大和ハウスを前にして畜産農家は踏みつぶされ、存在すらしなかったように隠ぺいされるちっぽけな存在なのか。大和ハウスが落とし続ける巨額の広告宣伝費の前に、国内大メディアは沈黙を続けている。

(つづく)

【河原 清明】

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