2024年12月23日( 月 )

神の怒り、自然の破壊力の慢心人間無力(5)

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人間の再生力は逞しい

 「18日から流れが変わった」と前回書いた。震災復興を当て込んでビジネスに飛び回る輩も増えた。商売人が利に敏でなければ潰れるだけである。支援者からの水や物質も集まってきた。彼らも一生懸命、支援に専念してくれている。そして被災者本人たちも生活の立て直し住宅の修理に奔走しているのである。人間の再生力は逞しいのだ。熊本地区の方々も必ずこの恐るべき再生力を発揮してくれるであろう。

 建設業界は「自然災害特需でしか生き残っていけない」と指摘した。地球自身が神の怒りを踏まえて人間生活環境を揺さぶるように厳しい仕打ちを与えているのだ。とりあえず復興特需2兆円で熊本地区は潤うであろう。都市熊本市も震災対応力が強くなった町に変貌するであろう。住民たちも生活基盤の住宅を強固にするであろう。5年以内には復興の目途を立ててくれる生命力を見せてくれるであろう。

大震災は財政的負担を過重化させる

建物の壁が崩落した立入禁止エリア<

建物の壁が崩落した立入禁止エリア

 熊本復興需要が2兆円ということはそれだけの被害があったということだ。では最近の大震災の被害金額は幾らであろうか。まず阪神・淡路大震災は被害総額9.6兆円と試算されている。このくらいの被害規模であれば日本の財政の緊急出動資金で賄えたのだが、この辺りが限度か!!東日本大震災は被害総額16.9兆円と言われている。「阪神・淡路大震災の倍足らずか!!」という単純なものではない。原発が絡んでくるからだ。

 原発の廃炉までには30年以上の期間を要する。この費用を加えると30兆円を超えるという試算もある。電力会社のドン・東京電力はいまや国家管理になり下がっている。被害者への補償費用は国の立替援助に頼っている有様。我々国民、企業は特別法で復興資金として税を取り上げられている。東北復興のためには時限立法であれ課税強化されても支援するのも当然のことである(法人税は20144月から3年間、税額の10%追加徴収。もう終了。所得税は13年から25年間、税額に2.1%上乗せる。あと諸々あるが、政府は10.5兆円捻出予定で税の用途は被災地に限定している)。

そして日本国の財政を根幹から圧迫させたのは1923年の関東大震災である。結果として、この被害を糧に帝都東京は再構築=当時の表現でいえば現代都市へ変貌に成功した。だが、この復興資金を日本国は自前で調達する能力が無かった。イギリス財閥・モルガン商会から10億ドルを借款した。この金額は当時の日本国家予算の60%に達するものだ。現在の規模で照らし合わせると国家予算100兆円の60%であるから60兆円になる。しかし、仮に東京に関東大震災級の地震が襲ったら被害総額60兆円では足りないであろう。

 この関東大震災当時にモルガン商会から借款できるということは、日露戦争から続いていた日英同盟は緊密な関係にあったということか。日露戦争の勝因は財政面ではイギリス・ロスチャイルドなどイギリス財閥から借款できたからである。モルガン商会からの借款は10年かけて昭和9年に返済したそうだ。過去の大震災を振りかえてみると国家財政を破綻寸前まで追い込んでいるという事実を知ることになる。

南海トラフは日本国家破滅を招く恐れあり

 南海トラフを震災特需と吠える馬鹿者がいる。前の南海トラフの発生は1946年である。それよりも90年遡った1854年に安政大震災が発生した。被害地域の主力は現在の静岡県から太平洋沿いの宮崎県までである。町村が消滅したところが数多くあったと言われている。筆者の田舎は宮崎県日向市美々津である。物心ついた時から聞かされたものだ。「あのなあ、江戸の終わりになあ、この下町の下にもう一つ町があってこの場所は海に沈んでしまった」と老人が語っていたことを鮮明に覚えている。

 次に予想される南海トラフ地震がマグネチュード9.1だとすると最悪、32~33万人の死亡者がでて238万6,000棟の家屋が倒壊すると想定されている。太平洋の面している県の予想される死亡者数であるが、宮崎県4.2万人、高知県4.9万人徳島県3.1万人、和歌山県8万人、三重県4.3万人、静岡県10.9万人と予想される。宮崎県、高知県、徳島県にこれだけの死者が発生したら各県とも機能麻痺になってしまう。

 3年前の2013年5月に九州太平洋沿岸、日向灘沿岸を取材した(過去記事参照)。「1854年並みの南海トラフ大地震が襲ったならばどうなるか、その影響はいかに?」をテーマにして写真を撮りまくった。全滅の可能性がある集落は数多くあった。宮崎県であれば油津港、宮崎港、細島港は壊滅的な打撃を受けることは確定。津波に浚われる人たちは無数に上るであろう。残念ながらこれはかなりの確率で生じる悲劇である。

 さて静岡県の地形を頭に浮かべてください。富士山の真下に東海道新幹線、東名高速道路が走っている。この幹線交通機関が6カ月もスットプしたら日本の物流はどうなるか!!物流面だけではない。この南海トラフ被害の復興資金をどう捻出するのか。被害地域は広範囲に及ぶ。最低100兆円は必要となるである。神の怒りが少しでも弱まることを祈るばかりである。

▼関連リンク
・特別取材・南海トラフ最前線(1)
・特別取材・南海トラフ最前線(2)
・特別取材・南海トラフ最前線(3)
・特別取材・南海トラフ最前線(4)
・特別取材・南海トラフ最前線(5)~現地取材記者座談会

 
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