【新・「電通公害」論】崩れ落ちる電通グループ~利権と縁故にまみれた「帝王」の凋落(1)
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ライター 黒川 晶
圧倒的な力を背景に、長期にわたりマスコミを支配し続けてきた広告代理店・電通グループ。だが、「驕れるもの久しからず」。広告料不正請求事件や過労死事件に象徴されるように、綻びが目立ち始め、ついに巨額の赤字決算を計上。利権と縁故にまみれた広告業界のガリバー企業は、音を立てて崩れ落ちようとしている。
業績悪化はコロナ禍のせい?
広告業界の「帝王」電通グループが、2020年12月期は1,595億円もの赤字だったと報じられている。収益は前期比▲10.4%の9,392億円、営業損益も▲1,406億円。海外事業を中心とするのれんなどの減損損失や、国内外で進めている構造改革費用なども響き、大赤字になったという。これを報告した2月15日発表の決算短信は開口一番、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。とくに2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響をおよぼし始めました」などと述べ、業績悪化はあくまでコロナ禍によるものであると強調しようとしているが、笑止千万。むしろ政府のコロナ対策事業で不当に儲けたくせにと、鼻白む向きは多かろう。
長きにわたり利権にあぐらをかいてきた
コロナ禍で売上が激減した中小企業を支援するための「持続化給付金」事業について、電通が実態に乏しいトンネル法人を使って国の委託費を「中抜き」し、仲間内で分け合っていたことが発覚、世に衝撃を与えたことはいまだ記憶に新しい。つまるところ、このような姑息な手口で抜き取った血税がなければ、電通の赤字はさらに巨額なものになっていたともいえるわけだ。
実際、セクター別売上高を見ると、ほかの業種が軒並み大きなマイナスを示すなか、「官公庁・団体」だけが前年比50.8%増となる1,559億円であった。このことは電通グループが今、本来の業務ではもはや十分な収益を上げられない状況に陥っていることを示唆している。
そもそも、電通の「本業」の業績悪化はコロナ前から言われてきたことである。「失われた30年」で各企業は広告出稿量を絞るようになったうえ、インターネットへのシフトが進み、主力のテレビ広告はすっかり振るわなくなった。13年の英広告大手イージス買収を皮切りに、海外で猛烈な勢いでM&Aを進めたのも、裏を返せば国内事業の行き詰まりを告白しているようなものだ。今や営業利益の半分以上を占めるようになった海外事業ですら、早々につまずき、すでに19年度に808億円の赤字に転落している。コロナ禍は、そうして凋落する電通の背中をさらに崖に向かって押したにすぎない。
汐留の本社ビルもとうとう売りに出し、そこに間借りする予定とも報じられているが、こうして戦後長きにわたり広告業界に君臨してきた電通の落日を目にしている今、その歩みを改めて概観するにあたり、利権にあぐらをかいた企業というものが、いかに社会に害をおよぼしながら自らの首も絞めていくか、しみじみと思い知らされる。
(つづく)
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