【新・「電通公害」論】崩れ落ちる電通グループ~利権と縁故にまみれた「帝王」の凋落(3)
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ライター 黒川 晶
圧倒的な力を背景に、長期にわたりマスコミを支配し続けてきた広告代理店・電通グループ。だが、「驕れるもの久しからず」。広告料不正請求事件や過労死事件に象徴されるように、綻びが目立ち始め、ついに巨額の赤字決算を計上。利権と縁故にまみれた広告業界のガリバー企業は、音を立てて崩れ落ちようとしている。
「広告料不正請求事件」と「過労死事件」
そもそも、電通がかつて「大量生産―大量宣伝―大量販売というサイクルのなかで(…)飛躍的に取り扱い額を増やし業績を拡大」(『電通公害論』)していけたのも、当時の日本社会が労働人口も消費力も豊かな高度成長期にあったからだ。隣人のもっているモノと同じものを所有したがるという日本人独特の気質も、電通モデルに有利に作用しただろう。
だが、その後ほどなくしてモノ・サービスは飽和、少子高齢化も加速度的に進行。そのうえ、貿易不均衡に大変ご立腹の米国の圧力まで加わってきたのである。「『広告を出せば売れる』という安易な方程式」(同)が早晩機能しなくなることは明白だった。にもかかわらず、電通は旧来のやり方で荒稼ぎを続けたのであるから、日本経済の収縮スパイラル、すなわち、日本企業の業績悪化→経費削減としての人員整理および海外への生産移転→国内の購買力低下と人材の海外流出→日本企業の業績悪化…の悪循環の核心に、電通の影を認めることはあながち間違いともいえまい。
そのなれの果てとして、2016年9月に発覚した電通の「広告料不正請求事件」と15年末の「高橋まつりさん過労死事件」は、まさに象徴的な出来事である。日本の総広告費における「インターネット」の伸長のめざましさは周知の通りである。かつては「マスコミ4媒体」が全体の半分以上を占めていたが、「インターネット」は04年にラジオ、06年に雑誌、09年に新聞を抜き去り、その後も急成長。13年からは毎年2ケタ成長を続け、19年にはとうとうテレビを超えた。こうした変化の時代にあってなお、電通は、半世紀以上も前のカリスマ社長が築いた「マスコミ4媒体」でのビジネスモデルに固執し、あろうことかネット事業部門の人員を大幅に削減したのである。
本間龍氏によれば、1本流せば20%のマージンが必ず入るテレビCMに対し、手間も人件費もかかるのに5〜10%のマージンしか入らないネット広告など、「バカらしくてやっていられない」という風潮が電通経営陣にはあったという。そのうえ、これまた吉田社長時代からの習慣で、現場は業務処理能力の低い「縁故採用」者が幅を利かせ、実務は少数の有能な「正規入社組」に集中するのが常態化していた。その結果が、電通にとって上客であり続けたトヨタをはじめとする合計111社、合計金額2億3,000万円以上に上る、数年間にわたるネット広告料金の架空・過大請求(17年1月に電通が出した最終報告では、96社に対し997件、合計1億1,482万円)であり、ネット部門に配属された東大卒の新入社員の何カ月にもわたる過重労働と絶え間ないパワハラの末の自殺であったのだ。
(つづく)
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