神の怒り、自然の破壊力の慢心人間無力(6・前)
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南海トラフレポート 日本国家財政を破綻させる可能性
このシリーズ(5)で想定される南海トラフの被害状況に触れた。専門家にあらためて予想される被害総額に関してコメントを求めた。正直、「わからない」という回答を得た。「わからないという前提でいえば100兆円を超えて200兆円くらいに達するのではないか」という想定数字を聞かされた。(5)で東日本大震災の被害額を原発廃炉処理代まで含めて30兆円と述べた。その7倍に近づくのである。これでは日本国家財政を破綻させる金額である。弊社はこの国家財政がパンクする懸念を抱いて2013年5月に現地取材をした。
特別取材・南海トラフ最前線(1)
<長閑な日向灘戦線>
次に想定されている『南海トラフ地震』の高波による致命的な被害を受けるのは、宮崎県、高知県、三重県、静岡県の海岸線沿いと言われている。弊社ではこの4県の海岸線沿いを、総力をあげて取材した。まずは、日向灘海岸からの報告を始める。大隅半島の付け根の志布志市から宮崎県の海岸線を北上し、大分県佐伯市までの走行距離は300kmにもおよんだ。
<まるで危機感のない宮崎県は県民体質丸出し>
(1)明暗分ける鹿児島県志布志、宮崎県串間市
まず、志布志港は、食糧輸入基地として有名である。この港は『南海トラフ地震』の高波に直撃される。港に囲まれた集落は、ほぼ壊滅状態になる。ただし、近くに高台があるため、スムーズに避難できれば、住民は危機から免れることはできるだろう。
一方、志布志港に隣接している串間市の港である福島港などは、救われる可能性が高い。なぜならば、都井岬に守られるからだ。野生に育っている都井岬の御崎馬たちには被害はおよばないと見る。(2)猿の楽園・幸島危うし
知恵の進化研究対象になっている『猿の楽園・幸島』も直撃を受ける。猿が島の高いところに逃げていれば助かる可能性もあるが、前途は多難とみる。隣接している風光明媚な『恋の浦』への影響を予測すると、完全に海岸線は消滅する危険性が高いとみる。(3)鵜戸神宮は大丈夫、油津港は壊滅
次に北上すると、宮崎県の有数の港・油津港がある。この港も津波の打撃を受けて、崩壊の危機に立たされる確率が高い。住民も、内陸部の飫肥地区へ逃げる訓練が大切だ。
その北横にある鵜戸神宮は、日向灘に直面している。高さ30m以上はある突端の防壁壁があるため、カバーしてくれて、危機からは脱することはできるであろう。ただし、鵜戸港が全滅することに関しては、覚悟がいる。
(4)青島は一時的に水面下に、近隣港もアウト
熱帯植物が群生している青島は、津波が襲来した際には、一時的には水面下に沈むであろう。島の植物がその塩害に耐えられるかどうかで、青島の存続そのものが問われる。隣接した青島港、内海港などは壊滅の恐れあり。
(5)宮崎空港は機能麻痺、宮崎市は小打撃か
宮崎空港は、日向灘に面している。直撃すればターミナルの被害が予想されるが、それよりも何よりも、滑走路への打撃は最悪となろう。復旧までには相当の時間を要すると見られる。空港地区の住民たちも、西側の高台に逃げる訓練が重要だ。宮崎港は、港湾の機能がマヒすることは間違いない。
都市中心部への影響は、大淀川に高波がどう侵入していくかで局面が変わる。中心部への被害は軽微で済むことを願望する。願望と言えば、一ツ葉海岸の松林が生き残ることを祈るばかりだ。
(6)宮崎県中央部の被害はいかに
高鍋・小丸川には、怒涛のように津波が襲いかかることが予想されるが、長年、築き上げられている防波堤で、防御は可能のようだ。海岸線沿いの集落は、すぐに逃げることで人的被害は食い止められる。川南港と都濃港はほぼ壊滅。川南港の裏手は台地が広がっているので、早く逃げることだ。
(7)神武天皇の御船出の美々津港は全滅
2673年前に神武天皇が討伐に向けて出航されたのが、美々津港である。その出発点が立岩神社であることは周知のことだ。この耳川の河口から大津波が来れば、由緒ある立磐神社が崩壊するのは確実だ。神武天皇がお座りになられた「神武天皇御腰掛の岩」は、大丈夫であろうか!!
(8)宮崎北部リアス式海岸線、足摺岬のおかげで被害が食い止められるかも
延岡市から大分県佐伯市にかけては、80kmにわたるリアス式の海岸線が続いている。今まで、交通の便の悪さから観光客が少なかった。ただ地元の人々は、この自然の美しさと海の幸の豊かさを堪能されてきた。現在、工事中の東九州高速道路が開通すれば、観光客が増大するのは確定であろう。取材の当初、「その自然観光に恵まれたリアス式海岸で、『南海トラフ地震』の甚大な被害が続出するのか」と懸念していた。たしかに、延岡市中心部を超えて北上した海岸線に至るところに、釣りや海水浴に相応しい場所が多くあったのだ。熊野江、北浦・古江港、そして大分県佐伯市・蒲江港などに接すると、鳥肌が立つほどの自然の魅力が満ちあふれていた。ところが、幸いなことを発見した。この地区は、高知県足摺岬よりも緯度が高いのである(北の方にある)。「足摺岬が防波堤になる可能性がある」ことに気づいたのだ。
【児玉 直】
特別取材・南海トラフ最前線(2)
<最大34mの津波、長期浸水で壊滅が懸念される高知県>
南海トラフ巨大地震発生により、最大34.4m(黒潮町)の津波の襲来が予測される高知県。県人口の70%以上の56万人が被災、死者は4万9,000人に上るとされ、最悪の場合、高知県は壊滅する。津波被害は県沿岸部ほぼ全域にわたり、県都である高知市は中心部全域が長期浸水する懸念もある。足摺岬から室戸岬まで約260km。主な被災予想地域を取り上げる。
(1)長期浸水で都市機能マヒ、防ぐ手立てない高知市
まずは高知市。五台山(標高146m)から市内を望んだ写真を見ていただこう。手前の橋辺りまで浦戸湾が入り込んでいる。中央部が海抜0m地帯の下知地区。その奥に高知県庁、高知市役所庁舎など市中心部が広がっているわけだが、そのほとんどが2m以上浸水する。津波高はさほどではないものの、地震による地盤沈降により数カ月に及ぶ長期浸水が予想される。塩分を含んだ水が長期間まちを浸すとどうなるか。地下埋設物は壊滅。都市機能はマヒする。今のところこれを防ぐ手立てはない。(2)海抜0m地帯で地盤沈下
高知市下知地区にある二葉町。海とは2mに満たない壁で遮られているが、地盤沈下が起こればたやすく越流する。高知市で予測される津波浸水被害のシンボリックな地域だが、今のところそれに見合った対策は打てていない。逆方向から見るとこんな感じ。奥が五台山。
(3)34m津波が襲う黒潮町
高知県の津波被害のシンボルとなっている黒潮町。写真は白浜海岸付近で、数kmにわたって20m以上の津波高が予測されている。上の写真奥にある消防署前の看板。「津波てんでんこ」とは「自分の命は自分で守れ」という意の標語。
高台移転計画が進んでいる黒潮町役場。5~10mの浸水が予想されている。
(4)高知県西端にも20m以上の津波が
土佐清水市街地から10kmほど西にある足摺海洋館前の海岸。奥の施設は足摺海底館。シーズンにはキャンプ場客などで賑わう風光明媚な国立公園内にあるが、15~20mの津波が予想される。
(5)逃げ場のない高知龍馬空港
少しわかりづらいが、奥に見えるのが高知龍馬空港(南国市)。海岸近くの堤防上から撮影したもので、海は目と鼻の先だ。空港の浸水予測は2m以上だが、津波到達時間は30分程度の予想で、地震発生後、いかに早く逃げるかが重要になる。ただ、このあたりには自然の高台が皆無。避難場所は空港ターミナル屋上ぐらいしかない。
(6)人工高台で避難場所確保へ
空港から南に下った南国市前浜地区にある津波避難タワー。自然の高台がない場合、人工でつくるしかない。同市では沿岸部に14基建設する計画だ(7)いかに早く自然高台に逃げられるか
写真は、室戸岬から室戸市内を見たもの。ほぼすべての沿岸部に10m以上の津波が押し寄せる。到達時間は20分程度。山など自然高台が近くに迫っているので、日頃の心がけ次第では助かる命は多いと思われる。なお、この一帯は「世界ジオパーク」に指定されている。【大石 恭正】
(つづく)
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