神の怒り、自然の破壊力の慢心人間無力(6・中)
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特別取材・南海トラフ最前線(3)
<被害想定最大の静岡県に次ぐ三重県>
静岡県の駿河湾沖から四国南部沖に渡って広がる大規模な海溝「南海トラフ」。この断層に沿って、東日本大震災レベルのマグニチュード9クラスの地震が発生すれば最大32万3,000人が死亡する被害想定を内閣府中央防災会議が公表している。最大は静岡県の10万9,000人、三重県は4万3,000人と想定されている。被害の7割が津波によるもので、県内で津波の高さの最大予測は鳥羽市の27m。浸水域は最大1,015km2と東日本大震災の1.8倍で、1m以上の浸水域は三重県で112km2に広がる。
津波が最初に押し寄せる同県沿岸部では水産業が盛んで、伊勢湾から答志島にかけてはノリ、答志島から的矢湾にかけてカキ、英虞湾では真珠やアオサの養殖が行なわれる。津波が押し寄せれば水産業は甚大な被害が発生することが予想できる。奥には採石場などが立地する志摩諸島の菅島が見える。そのさらに沖には三島由紀夫の小説の舞台にもなったことで有名な神島がある。
波に侵食されてできたリアス式海岸が続き、この辺りの沿岸部は比較的高台であることから、津波の人的被害は回避できそうだ。
パールロードシーサイドラインを伊勢方面へ進んだ鳥羽市勝村町では、牡蠣の養殖が盛んで、いたるところに牡蠣小屋が点在。旅館などの宿泊施設も数多く、好天に恵まれた取材日には穏やかな景色が広がっていた。太平洋に面した海岸線とは対照的に、ここから伊勢湾沿岸までは多くの建物が集積。水族館などの観光施設もあり、津波が押し寄せてきた際の避難経路の整備が急がれる。
全国の神社の本宗とされる伊勢神宮。天照大御神を祀る内宮そして外宮、2つの正宮があるが、外宮は比較的平地にあることから津波による被害が懸念される。
【永上 隼人】
特別取材・南海トラフ最前線(4)
<被害想定最大級の静岡県>
「南海トラフ」と接する陸地面積が最も広く、この海溝の開始地点でもある駿河湾沖を持つ静岡県。最悪の揺れと津波が起った場合、死亡数は10万9,000人、津波の高さは最大で30m超(下田市)、浸水面積は150.5 km2、全壊建物31棟9,000棟、直接被害額は19兆円9,000億円と、最大級の被害が想定されている。
予測される浸水地域では、下田市、焼津市、牧之原市、御前崎市、磐田市、浜松市などの被害が目立つ。しかし、これらの被害想定は原発事故を除いたケースである。最大の問題は、砂丘の上に立地し、「砂上の楼閣」と称される浜岡原発である。南海トラフに近く、東海大地震の中央部分に位置しながら、地盤は軟弱という危険度最悪の原発に対し、さすがの管直人元首相も、東日本大震災約1カ月後に停止要請を出した。
広範囲に渡って浸水することが予想される御前崎市。沿岸部には低い堤防が一帯に広がっている。
南遠大砂丘から続く浜岡砂丘の先に、浜岡原発は立地している。手前には風力発電施設があるが、取材日には風が少なかったのか、まったく動いていなかった。
浜岡原発の沿岸部に見える防波壁。昨年12月には18mの設置工事が完了した。これから22mにかさ上げするという。この地域で予想される津波の高さは19mとなっている。
浜岡原発の入り口。浜岡原発が停止した影響か、原発周辺には廃墟となったホテルやスナックがそのままになっていた。
浜岡原発に隣接する浜岡原子力館。5月5日に開催された「こどもの日イベント」には多くの家族連れが訪れ、防波壁などの津波対策など、再稼働に向けた取組みを地元住民にアピールしていた。
【山本 剛資】
(つづく)
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