バイデン政権下の米中関係と習国家主席の来日計画の行方(前)
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国際政治経済学者 浜田 和幸
新型コロナで世界経済に激震
欧米ではBCとACという造語がよく聞かれるようになった。何かといえば、「ビフォーコロナ」と「アフターコロナ」の意味である。たしかに政治・経済のあり方、はたまたスポーツを含む文化の楽しみ方まで、新型コロナウィルスが発生する前と後では大きく変わってしまった。
感染防止のため、在宅勤務やリモート会議が当たり前となって久しい。多くの飲食店にとっては死活問題である。デリバリーに活路を見出そうとする動きも見られるが、前途は厳しい。「不要不急の外出を控えるように」と繰り返し言われているうちに、外出や外食そのものが危険な行為のように思えてしまう。
いずれにせよ、コロナ騒動のなか、世界経済は激震に襲われている。人やモノの移動が制限され、「ロックダウン」が続けば、この激震は当然と言える。ところが、一部のIT企業やワクチンメーカーの株価は異常な値上がりを見せている。「コロナ特需」といっても過言ではないだろう。
しかし、問題はニューヨークの株式市場も東京の株式市場も、株価が急上昇したかと思うと、次には大幅な下落に見舞われるなど、乱高下が甚だしいことだ。そうした株式市場の動きを尻目に、ビットコインなどの仮想通貨はBCと比べてACには、価格が100倍近くも急騰している。実体経済とはかけ離れた投機的な動きと言わざるを得ないため、アメリカのイエレン財務長官などは「裏づけのない仮想通貨は要注意」と警鐘を鳴らしている。
日本では緊急事態宣言が首都圏を除き、徐々に解除されている。とはいえ、この間、海外からの訪日客は99%以上も激減。海外から新たな感染症が入らないようにするため、厳しい入国管理が行われているからだ。その結果、中国からの爆買いツアー客で潤っていたデパートや観光地は苦境に追い込まれてしまった。
一方、新型コロナの発生源と目されている中国では、「コロナの押さえ込みに成功した」と宣言。去る2月の春節の期間中、国内消費はかつてないほどの急拡大を見せた。北京の高級百貨店では1人で数千万円もの買い物をするお金持ちが続々と現れ、話題となった。富裕層による投資先もこれまでは不動産が中心だったが、最近では西洋風の絵画や彫刻などモダンアートに関心が向き始めたという。
中国、1,000人超の大富豪を生み出す
コロナ禍が世界を席巻するなか、中国では億万長者が相次いで誕生しているというから驚く。2020年に10億ドル以上を稼ぐ「ビリオネアクラブ」に新たに仲間入りをはたした中国人は259人で、アメリカの70人を圧倒。その結果、中国人ビリオネアは1,058人に達し、中国は世界で初めて1,000人を超える大富豪を生み出した。
これは、中国以外で誕生したすべてのビリオネアの合計数よりも、中国人ビリオネアが多いことを意味する。いかに中国人がお金儲けに長けているかを内外に示しているといえるだろう。中国の大富豪上位415人の総資産額はほぼ2兆ドルに達し、これはロシアの国内総生産額に匹敵する。コロナ禍にあっても、20年に中国のGDPは1.8%の成長率を記録した。他方、アメリカはマイナス3.7%であったことを思えば、中国経済の復活力の強さがうかがえるだろう。
そうした好景気を背景に、習近平国家主席は2月25日、「貧困をなくした」と宣言。中国では過去8年間に実施した貧困対策の結果、8.5億人を貧困(年収6000元=620ドル=1日2.5ドル)から救ったというわけだ。中国政府は昨年末の時点で、計画通りに「新時代の貧困脱却目標を実現した」ことを明らかにしていたが、習国家主席が自らその成果を高らかに宣言したことは、国家運営における絶対的な自信の表れといえる。
たしかに、これほどの短期間に、これほど多くの国民を絶対的貧困から解放した事例は現代史上、類を見ない。一部では政府が数字を操作したのではないかという疑念も出ているが、コロナとの戦い、米国との対立といった緊張下で、こうした成果を成し遂げたわけであり、注目に値することは否定のしようがない。
そのことは世界銀行も認定しているほどである。世界銀行の判断基準によれば、「1日1.9ドル以下での生活」が国際貧困ラインの定義となっており、中国の場合はその基準を大きく上回っての貧困脱却となったからだ。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。関連キーワード
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