世界平和に向けて(20)オンラインに切り替わる採用・研修現場 企業は今後も実習生受け入れを希望(中)
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グローバルイノベーション事業(協)
専務理事 徳丸 順一 氏新型コロナウイルスの感染拡大にともなう入国制限により、実習生の入国が停止・延期となり、実習生受け入れ事業を行う監理団体や企業の現場に大きな影響がおよんだ。今後数年は海外との往来制限の継続が想定されるなか、実習生事業の展望などについて、(一社)福岡県中小企業経営者協会連合会(小林専司会長)により設立されたグローバルイノベーション事業㈿(略称:Globa CA)専務理事の徳丸順一氏に話を聞いた。
――入国再開の対応はどのようなものでしたか。
徳丸 隔離用の施設については1人1部屋、バス・トイレ付きの個室が必須と明文化されており、事前に予定を細かく立てないと入国が許可されません。隔離期間中は公共交通機関を使用できず、福岡で隔離するため、昨年8月に私が成田まで車で迎えに行きました。片道十数時間の距離を往復するため、大変でした。
ホテルでの宿泊であれば、2週間で1人あたり10万円ほどかかってしまうため、負担が大きいと感じましたが、実習生の入国時の宿泊費用などについて、福岡県が外国人技能実習生等受入企業緊急支援事業補助金を出してくれるようになり助かっています。なお、私たちはホテルよりもウィークリーマンションや民泊を活用しました。ホテルと異なり民泊にはキッチンがあり、実習生にとっては使いやすく、費用面でもホテルの約3分の1に抑えられます。
ホテルスタッフなどが介在しない分、私たちが食事などの必要なものを届ける必要があります。彼らに届けた食材でつくった料理を写真に撮って送ってもらい、これらを通してコミュニケーションが増え、彼らの食事に対する理解が深まり、健康状態も把握しやすくなるなど、プラス面を実感しています。
――研修について変化はありますか。
徳丸 自主隔離期間中の2週間は、それぞれ個室でオンライン研修を受けてもらい、その後は個室から3人部屋に移り、集合研修を進めます。合計すると約1カ月間です。現場で働くまでの期間は従来と変わらず、研修計画に支障はきたしていません。どこの組合もオンラインで研修を行うようになり、ルールとマニュアルが整えられてきました。
実習生の生活改善のため出入国制限の早期緩和を
――収支面についてお聞かせください。
徳丸 収益性が下落しており、厳しい状況にあります。実習生事業は一般的には実習生を面接して半年後には来日するため、年間の収支計画を立てやすい事業です。昨年8月以降に若干名ですが入国できて、いくらか持ち直しました。ただ、当組合の業績は右肩上がりで伸びていたところ、増加分がバサッと消えた感じです。持続化給付金、福岡市のテレワーク促進事業支援金、家賃軽減支援金などの支援を得ていなければ大変なことになっていたと思います。当組合は3月期決算であり、来期に向けて従業員や日本語教師を新たに採用し、事務所を借りるなどの準備をしていたタイミングでの新型コロナ感染拡大でした。
ほかの組合も補助金をいろいろと活用しながら、何とか事業を継続しているところです。業界全体がかなり苦しい状況にあります。加えて、実習生業界では近年の制度改定を受け、多数の組合が誕生していて、その多くは基盤が小さく、今の状況があと2、3年続くと厳しいでしょう。現時点では解散した組合の話は聞いていませんが、事業継続が難しいと感じて休眠状態となっている組合もあり得ると想像できます。
監理団体の主な収入は、実習生の入国後の監理に対する企業などからの支払いです。現在、新規の実習生が来ることはできませんが、今日本にいる人が帰国することもできず、実習生の総数はほぼ横ばいという状況が続いています。すでに一定数の実習生を受け入れている大手の組合は大丈夫ですが、比較的新しい組合は実習生が少なくて大変です。
(つづく)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
徳丸 順一(とくまる・じゅんいち)
1977年生まれ、福岡県久留米市出身。福岡県立明善高校、大阪外国語大学卒、グロービス経営大学院修了(MBA取得)。大手電器メーカーの海外駐在員(ベトナム、メキシコ)を経て、2018年グローバルイノベーション事業㈿を設立、専務理事に就任。関連記事
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