サムスン電子の先行きに懸念(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
世界の半導体市場でトップ争いを繰り広げるサムスン電子。いまや韓国経済を支える存在となった。ビジネス面で好調が続く一方、将来的な不安要因も噴出。サムスン電子の先行きに“黄色信号”が灯りつつある。
韓国経済を支える存在に
サムスン電子は韓国だけでなく、アジアを代表する企業に成長した。サムスン電子の時価総額はトヨタ自動車の2倍以上となっている。日本人には信じがたいことだろう。サムスン電子は半導体の世界王者に君臨してきたインテルを抜き、17年にトップの座についた。近年は、半導体受託生産の世界最大手である台湾のTSMCとトップを競う展開となっている。
2020年に実施されたグローバル企業のブランド評価で、アップル、アマゾン、マイクロソフト、グーグルについで、サムスン電子は世界5位に入った。世界トップシェアの製品を11品保有し、韓国の全R&D投資額の47%を占め、法人税全体の15%を負担しているサムスン電子は、韓国経済を支える企業といっても過言ではない。
ところが、絶好調に見えるサムスン電子にも、将来的な不安要因がいくつか発生し、先行きを懸念する声が上がっている。
台湾TSMCとの熾烈な戦い
新型コロナウイルスの感染拡大で、需要の冷え込みなどのダメージを受けている産業が多いなか、半導体産業は今年も好況が予想される。それを裏づけるように、世界的に半導体設備投資が増加している。今年の予想投資金額は約1,120億ドル。投資をけん引しているのが、台湾のTSMC、サムスン、インテル、マイクロンなどである。
TSMCは1月の決算発表会で、今年、半導体の設備増強に280億ドルを投資する計画があることを明らかにした。TSMCは280億ドルのうち、80%を3㎚(ナノメートル、10億分の1メートル)の生産設備と、米アリゾナ州に建設予定の5nmの生産ラインなどに投資すると発表した。TSMCは米国に工場を建設し、半導体の開発・設計に注力する米国企業から受注を獲得するという狙いがある。
一方、サムスン電子も負けるわけにはいかず、300億ドル前後の投資が行われるものと予想されている。この2社だけでも半導体設備投資額は巨額となり、市場は活況を呈するだろう。
TSMCはアップルで培った技術をベースに、ほかの米国企業からの受注を増やし、サムスン電子との差を広げようとしている。20年の売上高はTSMCの約4.8兆円に対し、サムスン電子は22兆円。現時点ではまだまだサムスン電子が優位に立つ。しかし、ファウンドリー事業では、TSMCの世界シェアは断トツで、その差は縮まっていない。昨年の第4四半期の差は39.2%となった。
このような状況下で、サムスン電子にどのような懸念材料があるのだろうか。
(つづく)
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