【アフターコロナの勝ち方（2）】「もつ鍋界のふくや」を目指す～日本一のもつ鍋総合メーカーへ（後）

（有）楽天地　代表取締役　水谷 崇 氏

医療従事者を無料招待

　――昨年6月に、医療従事者を無料で招待しました。

　水谷　父が昨年3月から5月までの2カ月間、福岡大学病院に入院しました。重症だったこともあり、「もう元気な姿を見ることができないかもしれない」と覚悟を決めていました。しかし、医療従事者の方々による懸命な治療のおかげで、ゴールデンウィーク明けに元気な姿で帰ってくることができたのです。

　医療従事者の皆さまに少しでも恩返しができればと思い、無料招待することを決意しました。口コミで広まったこともあり、5,489人の方々にきていただきました。とくに最後の週には、約3,000人もの医療従事者が来店されました。

　この活動が実を結び、医療従事者のリピーターが増加しました。昨年11月の売上は、店舗の売上高が前年比91％で、通販を含めると100％を超えました。ソーシャルディスタンス確保のために席の間隔を空けたにもかかわらず、91％だったわけで、通常であれば100％を間違いなく超えていたと思われます。昨年4月、5月が前年比10％以下だったことを考えると、想定よりも大幅に早い回復となりました。

　1月17日には、昨年6月に招待した医療従事者の方々からの推薦もあり、TBS「バナナマンのせっかくグルメ！！」の「絶品お取り寄せグルメ探し！」で、楽天地の「伝統もつ鍋セット」が取り上げられました。ゲストの綾瀬はるかさん、高橋一生さん、柄本佑さんに食べていただき、綾瀬はるかさんがおかわりをしてくれるなど、ゲストの方々にも大好評でした。番組の反響はとても大きく、昨年12月の注文は1万セットだったのですが、放送後には4万セットもの注文が入りました。放送日は、楽天市場の総合売上ランキングの上位3位までを当社の商品が独占。想像をはるかに超える反響がありました。

　当社の経営理念は「敬天愛人の道の追求」です。そのなかで「天を敬い人を愛する企業活動を通して、お客さまの食の安全と最高の思い出づくりに貢献する」という一節があります。私心を捨てて利他の心で、お客さまの思い出づくりに貢献したことが報われた結果だったと感じています。

　今月からは福岡銀行と楽天地のコラボレーションによるクラウドファンディングを実施します。ふくやさんから協賛を受け、明太子ともつ鍋のセットを3,000個用意し、メッセージを付けて最前線で頑張っている医療従事者に贈ろうという取り組みです。

　――ふくやとは昔からつながりがあったのですか。

　水谷　昨年からお付き合いさせていただいています。私は昔からふくやさんに憧れを抱いていました。以前、「明太子ならふくや、ラーメンなら一幸舎、もつ鍋なら楽天地」というコピーのタクシー広告を出しました。それを目にしたふくやの社員さんが、川原武浩社長にその話をしたことで、お付き合いが始まったのです。

　川原社長にも「当社はふくやさんのような企業になることを目指しています」と言いました。ふくやさんは明太子の元祖であり、当社の経営理念である「敬天愛人の道の追求」を創業以来、貫き続けている会社です。ふくやさんを目標として「明太子ならふくや、もつ鍋なら楽天地」と多くの人に認識してもらえるように、今後も事業に邁進していきたいと思います。

（了）

【文・構成：新貝　竜也】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：水谷　崇
所在地：福岡市中央区天神1-10-14
設　立：1984年10月
資本金：1,000万円
売上高：（20/2）9億2,674万円

＜プロフィール＞
水谷　崇（みずたに・たかし）
福岡市博多区出身。1970年7月16日生まれ。西南学院大学卒業後、94年4月福岡銀行入行、2004年3月（有）楽天地入社。14年から営業本部長として新規出店やプロモーションなど対外的な業務に携わる。19年2月に代表取締役に就任。趣味は読書。