【IR福岡誘致開発特別連載 32】香港国家安全維持法と日本におけるIR開発投資企業
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香港・マカオの一大観光地をつくったホー一族
より激しくなっている米中覇権争いの観点から、再度、全国のIR誘致開発事業に手を挙げている中華系企業の問題について解説する。
まず、IR横浜への参加に積極的な香港に本社を置く著名な企業Melco International Developmentを筆頭に、IR長崎のOshidori International Holdings(香港)、NIKI&Chyau Fwu Group(香港)、IR和歌山のSun City group(マカオ)などは、俗にいう中華系IR開発投資企業である。
Melcoオーナーのローレンス・ホー氏は、昨年亡くった香港・マカオの歴史上の著名な人物、創業者スタンリー・ホー氏の婚外子の子息である。彼は日本でIRが実現すれば、日本に住みたいと言っている。
創業者には4人の妻と17人の子どもがいて、その正妻の長女パンジー・ホー氏は、創業者がつくった一大コンツェルン・信徳集団有限公司(香港)とカジノ企業SJM Holdingsのオーナーでもある。
このホー一族の歴史は古く、1840年の清国時代のアヘン戦争にまで遡る。創業者スタンリー・ホー氏が、現在の香港・マカオの一大観光地をつくったといっても過言ではない。マカオ最初のカジノホテル「リスボア」、香港・マカオ間のフェリーやジェットフォイル、船上レストラン「JAMBO」などはよく知られている。
この地域の不動産開発を中心とした交通インフラ、海運、港湾、ホテル、ゴルフ場、ショッピングモール、石油、ありとあらゆる事業の創業者であり、それを継承したのがこの一族である。
前述した中華系IR開発投資企業の各社の歴史は浅く、1999年の香港返還以降、中国の経済発展とともに成長してきた企業群だ。マカオのカジノホテル「リスボア」を除いては、最近出てきた企業である。
信徳集団とSJMの隆盛は、まさに創業者であるスタンリー・ホー氏が辣腕を振るい、当時の英国政府と中国政府の間で、その立場を利用して一大コンツェルンをつくったことに始まる。それは、当時の中国政府の経済発展を期待した強い後押しが大きな要因となった。
すでに香港は中国である
しかし、習近平政権は昨年香港国家安全維持法を制定し、カジノ関連法についても「1国2制度」の崩壊を目論んでいる。習政権は締めつけによって、香港・マカオのカジノ関係資金の管理も全て中国政府の直轄に組み込もうとしている。香港・マカオのカジノ関係事業者に対するカジノ海外観光規制といった法に基づく制限も、米中覇権争いの一環。創業家一族であっても例外なく適用され、がんじがらめになってきている。
中国はGDPが世界第2位となり、昔の中国ではないと世界に公言している。これが日米安全保障問題にも発展し、インドやヨーロッパにも影響を与えている。対中問題は、台湾問題も含めて危機管理が必要な我が国の安全保障にかかわっているのである。
現在の香港は中国である。IR横浜、IR和歌山、IR長崎の首長は政治家であり、行政の長であるにもかかわらず、なぜこの問題を理解していないのかと不思議に思う。
香港に拠点を置く前述の中華系企業群は、習近平政権による締めつけを嫌がり、我が国への進出を積極的に狙っている(香港・マカオから軸足を変えたいと思っている)。しかし、これはファーウェイ問題やLINE情報漏洩問題と同様に、米中日ともに安全保障上困難なことであり、今や不可能に近い。
日米安全保障の問題がある以上、中華系企業の意志とは異なり、日本政府が承認することはない。表向きの米国企業であるMohegan Gamingとの提携話を出しても、そのような小手先の戦略が通るはずもない。地方の政治家には、この感覚がないとしかいいようがない。
また、そのほかのカナダやヨーロッパの企業にも、中華系企業と同様、日本でのIR事業開発のチャンスはないと断言する。
その理由は、当初から言っているように、本件は“安倍・トランプ密約”から始まっていて、菅政権もこれを継承し、米国企業の誘致が最大の目的となっているからだ。従って、大阪のMGMと福岡のいずれかの米国企業にしかチャンスはない。
【青木 義彦】
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