2024年11月22日( 金 )

【IR福岡誘致開発特別連載33】日本版IR、政府指導のJVとコンソーシアム設立

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 「IRプロジェクトコンソーシアムとエクイティ」(2019年10月11日付)について、ここにきて新しい動きがあり、各地方のマスコミ報道にも誤りがあるため、改めて解説したい。

 本件IR誘致開発事業の政府指導方針では、下記の図表の如く、日本企業と海外IR投資企業(ゲーミングオペレーターなど)が国内外の枠を超えてJVを設立してIR事業を目指すこととなっている。すなわち、これがIR事業母体となるコンソーシアムの設立だ。

 さらに、IR誘致開発の目的が観光振興および地域経済振興のため、日本経済や地域経済に精通した、日本の大手企業と地元財界企業の参画は不可欠であるとして、政府は強く指導している。

 しかし、一部のマスコミは、IR長崎における選抜後の3社をオシドリ・コンソーシアム、カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン、ニキ&チャウフーグループと報道しているが、これらはすべてが正確という訳ではない。政府指導方針にある日本の大手企業、地元財界企業がこれらのいずれの事業者に参加しているかは、いまだに明らかになっていないのだ。

 最も先行しているIR大阪でさえも、当初は米MGMリゾーツ・インターナショナルと日本の大手企業であるオリックスが主体となり、地元財界の関西電力、大阪ガスなどが参加するコンソーシアムを設立し、公募(RFP)する予定であったが、今回、世界的なコロナ感染の再拡大の問題でMGMの計画修正により、白紙に戻った。

 もし、この組織が組成されれば、まさに政府方針に則したコンソーシアムとなるはずだ。日本側の問題というより、米国側の意向で延期されたのだ。

 各マスコミは今後、このグループ以外に新たに組織が組成され、IR大阪に応募するのではないかと報道しているが、 IR大阪ではMGMとオリックス以外の新たなコンソーシアムの組織組成などできるはずはない。

 ましてやIR長崎は、日本の大手企業と地元財界企業の名称さえもいまだに表に出ていないのだ。これらの企業が評価し、参加してこそ、本物の本件事業母体(RFP)設立計画となり得る。

 いずれにしても、当初からコンソーシアムの熾烈な組織争いは起こらない。本件に関係する法案自体がそのような建て付けにはなっておらず、地元財界は必ず1つにまとまるだろう。

 IR大阪においては、オリックスには宮内義彦氏というカリスマのオーナー経営者がいるため、地元財界は1つにまとまり、この誘致開発事業母体、すなわちコンソーシアムに集っている。IR長崎は、本件IR事業の基本的な計画と条件にそぐわないために、いずれの日本企業も参加する気が一切ないのである。

 IR誘致開発が可能な候補地は、巨大な後背地人口をもつ、大都市圏しか採算が合わないということだ。デベロッパーを含めた我が国の大企業はこれらを熟知しており、今回のコロナ感染の再拡大問題で、さらにこれを知らしめる結果となった。JAL、ANA、JTB、近畿日本ツーリスト、ハウステンボス運営者のHIS、宿泊、飲食などに関わるすべての観光業は軒並み苦境に陥っている。

 米国は、バイデン政権による巨額の追加経済対策と迅速なワクチン接種により、今後はGDPの急激な伸びが期待され、株式市場も現状の経済環境に反して常に高値を維持している。世間の予測通り、おそらく近いうちにコロナ前の水準に戻るであろう。

 そのため、IR大阪は多少の遅れはあるものの、政府指導方針である本件事業母体コンソーシアムの設立が予定通りに具現化されるものと考えられる。我が郷土IR福岡の場合は、国内大手企業というよりも、この米国IR投資企業(ゲーミングオペレーター)が先行してコロナ後に向けて積極な行動を行うことがカギになると思われる。本件IRが具現化できる可能性をもつ場所は大阪、福岡に加えて、横浜くらいだと断言できる。

【青木 義彦】

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