2024年11月24日( 日 )

インドネシア・パーム油生産農園視察(ボルネオ直行ルポ)(4)パーム油製造事業が転がり込む

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ジャカルタ事務所の契約

ジャカルタ 事務所の入る高層ビル
事務所の入る高層ビル

 「入国したら5日間の隔離があるからビジネスにはならない」と言われたが、なぜか隔離なしにスムーズに入国できた。ジャカルタに着いてからの行動は慌ただしかった。

 まず、薩摩氏(以下、登場人物は仮名)の事務所の契約に同行した。同事務所がある地域は、東京でいうと「六本木ヒルズ」のような地域である。30階以上の高層ビルの26階に事務所を構える予定だ。その事務所に立ち寄ると、10部屋以上に分ける間仕切り工事が完了していた。家賃は75万円、広さは100坪である。もともと、インドネシア現地法人の事務所は別の場所にある自社ビルを活用しており、ジャカルタでの事業は10年を越えるという。

 今回はパーム油農園事業の会社と持株会社の2社で、新事務所を活用することになっているという。この事務所には、10~15名のスタッフが常駐する予定。薩摩会長のインドネシア事業は、いよいよ本格的にスタートする準備が整った。

なぜパーム油農園事業の話が転がりこんできたのか

ジャカルタ 事務所の入る高層ビル内
高層ビル内

 事務所の入居契約が完了して昼食の時間となったため、早速、薩摩氏にパーム油農園事業が転がってきた経緯を尋ねた。薩摩氏は昨年末にインドネシアに来るまでは、パーム油農園事業を経営する予定は毛頭なかったという。パーム油を使った発電事業に関心はあったとのことであるが、この経緯は次回に述べる。

 薩摩氏が昨年末に入国した目的は、ある商社から次のような悩みを解決してほしいという依頼を受けていたためである。「パーム油を使った発電事業を展開してきたが、肝心のパーム油が入手できない。何とか確保できないものだろうか」という相談であった。しかし、結果的に、この課題を十分に解決することはできなかった。

 関係者への訪問を一通り終えた後の夕食にて、閣下とMr.ヤシの2人が薩摩氏に対しておもむろに「会長!上場しているパーム油農園が行き詰まっています。この会社を買収しましょう」という提案をささやいた。薩摩氏が「噂が出回れば、即座に地元の大企業が買収するのではありませんか」と確認を求めると、Mr.ヤシが「会長、このような好条件は二度とありません。なぜならば、この会社のオーナーはイギリス人であり、いわば外資扱いとなる企業のため、地元資本は手を打ってこないからです。千載一遇の大チャンスです」と熱弁をふるった。

 その農園が行き詰った経緯は、このイギリス人経営者が工場投資のために借り入れた資金を別の用途に流用したことで、銀行団の逆鱗に触れたというものであった。当時の月商は25億円を超えていたという。実績もあるため、ジャカルタで上場もしている。確かに、このような買収による企業再生のおいしい話に接触することはまずはできないであろう。Mr.ヤシから「金融機関には私が根回しをします。大船に乗った気持ちでいてください」と説得された。

 Mr.ヤシは薩摩氏を強引に銀行に引っ張っていった。面談をすること1時間、銀行頭取は薩摩氏に惚れ込んだようである。薩摩氏は必要とされる手付金を3日間で調達して、パーム油農園の経営権を握った。インドネシアでの事業展開は足掛け10年を越えていた。ようやくビックビジネスが転がってきたのだ。苦節10年は必要なり。

ジャカルタ 事務所内
事務所

すべては人脈づくりからスタート

 薩摩会長に、このチャンスを掴めた最大の要因について質問してみた。回答はまさしくシンプルで、「人脈つくりがすべて」という。まずは、ジャカルタに閣下(現地法人社長)を置いて、10年以上、閣下に事業を託した。閣下は期待に応えて、来たる事業基盤拡大に向けたネットワークづくりに専念してくる。

 過去にも、閣下から幾多のビジネス情報が上がってきた。今回のパーム油農園会社の買収話も閣下の馴染みであるMr.ヤシからもたらされた。薩摩会長は「まずは情報に縁がないと何も始まらない。さらに、勝負のときにはたじろがずに実行することだ」という。今回は、必要とされる資金をすかさず調達する決断力と実行力が信用を得ることになる。

 加えて、10年間を超えるインドネシア事業の地味な積み上げがあってこそ、と筆者は付記したい。さらに付け加えるならば、閣下は10年以上前の時点はまだ若い世代に属していたが、時間経過とともに、友人らも実力をつけ、社会的地位をそれぞれ高めた。問題があっても彼らに相談すれば解決できる可能性が高まったのである。

 偶然であっても大運をつかむには、必然とされることがある。大運を握った後の展望を持つことである。インドネシアで上場しているパーム油農園会社の持株会社は今後、香港証券取引所、アメリカ・ナスダックに上場できる環境整備が可能となる。

 パーム油農園の上場会社において、薩摩氏のオーナーとしての法的手続きは現段階で完了している。

(つづく)

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