2024年11月21日( 木 )

【飲食事業者の独立心、自尊心を育てよ!(3)】コロナ禍で将来の種を蒔く~IMD Allianceの挑戦

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IMD Alliance(株) 代表取締役 麻生 宏 氏

 飲食、宿泊事業の環境が激変するなか、レストラン・ホテルの運営、コンサルティングなどを手がけるIMD Alliance(株)は、レストラン事業を軸に独自のEコマースやデリバリー事業に着手。既存の自社商品を販売するのではなく、地域の事業者を巻き込み、「ここでしか買えない」独自の商品をそろえる博多ならではのECモールを5月に立ち上げる。同社の麻生宏代表に話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 児玉 崇)

博多にしかないECモールを

 ――新しくECモール事業を始めます。

IMD Alliance(株) 代表取締役 麻生 宏 氏
IMD Alliance(株)
代表取締役 麻生 宏 氏

 麻生宏氏(以下、麻生) ここでしか購入できない商品をそろえるというコンセプトの下、非常においしいが大量に生産できない商品をつくっている福岡のレストランを仲間に入れ、当社がモールを運営します。どこでも買える商品を大手サイトで出品しても埋没する恐れがあります。モールでは、博多廊の手づくりからすみ、チョコレートショップの特別商品などを数量限定で販売します。

 事業者が一からEコマースを始めるのは大変なため、当社がセレクトして詰め合わせた商品も用意します。詰め合わせには、お客さまに各店舗を回遊してもらう狙いもあります。全国の顧客を意識して、名称を「博多回回、」としていますが、九州全域へと仲間を増やしていきます。

 Eコマースは全国がマーケットとなることから、博多廊のふぐ刺しを冷凍で全国に届けます。プロトン冷凍(ドリップが流出しない)など最新の技術を駆使した料理には、冷凍だと感じさせないものもあります。おせち料理の製造などにより蓄積したノウハウを生かし、本物のトラフグや、旬の糸島産タイの盛り合わせなどを季節に応じて全国に提供できます。

 同様の発想でデリバリーの「博多ぐるめ便」も、パーティー用にオードブルとケーキを、または和食と中華を一緒に購入可能という利便性を訴求します。オードブルなどの外観をきれいに保つために、加えて、デリバリー会社への配送手数料の支払いにより商品価格が値上がりすることを避けるために、自社で配送します。本物の容器に入れた料理は異なると考え、一部の料理については波佐見焼の陶器に入れて届けます。皿の回収という手間が発生しますが、環境問題にも配慮しています。

博多回回 博多ぐるめ便

 ――顧客との関係構築はどのように行っていますか。

 麻生 飲食店の来客は予想しにくいものの、当社の弁当は1,000円以上と高額なため、博多廊を知っている人しか注文しないことは想定できます。グループ全体でCRM(顧客関係管理)により約3万人の顧客と関係性を築いてきました。博多廊の弁当という理由で選ばれるようにしていきます。

 コロナ禍で新たな需要が生まれています。病院は仕事が非常に忙しく、かつ外食を控える状況にあり、弁当の需要が増えています。コールセンターも業務が忙しく、スタッフの福利として豪華なランチミーティングという需要が生まれており、月に1回の豪華な弁当を提案しています。

 ――飲食業界でこれだけのサービスを自社で提供するのは大きなチャレンジです。

 麻生 BtoB向けの設備と「博多ぐるめ便」の経験があったため、実現できました。とはいえ、コロナがなければ、このような取り組みはしていなかったでしょう。外食産業は以前の状態には戻らないという前提で、将来を見据えてさまざまな種を蒔いています。ブランドイメージを維持しつつ、コロナ禍でも安心して食べられる空間を提供するために、業態や店舗の効率的な運営などを考えていく必要があります。

白金茶房
白金茶房

ホテル事業の挑戦

 ――ホテル事業でも新しい事業を始めますね。

 麻生 ヘルスツーリズム事業として、国の認可を得た第二種再生医療を提供する病院がテナントで入っている京都市八瀬のホテルのオペレーションを行います。宿泊しながら健康になるというコンセプトの下、治療のため、健康増進のために宿泊するというイメージで訴求します。

 脚本家の小山薫堂氏(代表作に『おくりびと』『料理の鉄人』など)の(株)オレンジ・アンド・パートナーズと設立したGood Life&Travel Company(株)(麻生宏代表取締役)との共同事業です。ここでは糖尿病患者の治療を念頭に置いています。日本国内の糖尿病患者は328.9万人(厚労省の2017年調査)で、潜在的患者は約1,000万人、中国にも非常に多くの糖尿病患者がいます。治療により、一定の効果が期待されています。

 福岡でも直営のホテル事業として、中央区に新しいコンセプトのホテル計画を決定しており、今年着工し、来年オープンする予定です。各部屋の面積は広めで60〜100m2です。ターゲットの客層は東京在住のITベンチャー経営者、富裕層であり、ワーケーション利用も想定しています。

 現在、一部の富裕層の人にとって住むことの概念が変わりつつあり、北海道や沖縄などに住んで仕事をする生活スタイルをとる人が増えています。福岡は都市と自然のバランスが良く、旅をしているように過ごすことができて、ポテンシャルがあります。オーセンティックで居住にも適したホテルということで、福岡での拠点購入という需要に対し、マンションにもなり、ホテルにもなる新しい分譲の在り方を提案します。福岡にきたときには住居として、東京にいる間はホテル運用に回すという使い方ができます。

 このように、価値観の変化に対応した商品・サービスを提供し続けていきたいと思います。

【文・構成:茅野 雅弘】


<プロフィール>
麻生 宏
(あそう・ひろし)
1963年生まれ、長崎県出身。83年独立開業し飲食店をオープン、5軒を経営。89年ホテル イル・パラッツォ取締役総支配人、93年(株)クロッシング(食材・資材販売)代表取締役、96年カトープレジャーグループ(KPG)九州支社長。KPG本社常務取締役、(株)KPG HOTEL&RESORT取締役社長兼COOなどを経て、2010年IMD Alliance(株)を設立、代表取締役に就任。


<COMPANY INFORMATION>
IMD Alliance(株)

代 表:麻生 宏
所在地:福岡市中央区白金1-11-7 
設 立:2010年9月
資本金:980万円
売上高:(20/8)10億円(関連会社含む)

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