【企業研究】九州卸の雄・ヤマエ久野(3)
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求められるのは新型店舗の開発
卸の機能を一言でいうと、メーカー・産地の情報と小売の情報を結び付けて、販売現場に「適時・適品」のかたちを維持すること。そのためには3者に共通する情報システムを構築しなければならないが、お互いの思惑の違いもあり、なかなかうまくいかないのが現実だ。
ヤマエ久野の場合、九州の地場スーパーや生協など22社からなる「サンエー21」というボランタリーチェーンを組織している。メーカーを加えた商品展開やシステム情報、飲料・加工食品のプライベートブランド(PB)展開も事業範囲に含む協力組織など、その活動は活発だ。しかし、M&Aを含む大手の拡大戦略、「道の駅」といった生産者や農協の直販活動などを考えると、加盟企業ともども今後の売上拡大は容易でない。
一方、地場の主要スーパーでは、九州・山口のリテールパートナーズや北海道・東北のアークスグループなどの広域提携がスタートしている。しかし、それぞれの企業の体質や思惑の違いから、いまだに試行錯誤の状況にある。
そうしたなか、食品卸が取り組むべきことは新しい型の店舗の開発。それは生鮮品に加工食品を加えた大型直売店だ。そこには従来型の店舗と違ったエンターテイメント性が求められる。消費者が行きたくなる「わざわざの店」をつくることになる。
従来型のリアル店舗はネットと直売所に挟撃されて、小さな小売店ほど窮地に立たされる。そのサポートも容易ではなくなる。このため、革新的な事業見直しが求められるわけである。
もう1つは、PBとして独自の商品をつくるという方法もある。たとえば、セブン-イレブンのコーヒーはそれまでコンビニになかったやり方と価格で提供し、消費者の支持を得た。一方、全国チェーンのスーパーでさえ価格訴求型のPBは、お世辞にもうまくいっているとはいえない。ナショナルブランド(NB)に似せて価格訴求の商品を提供しても、NBを信仰する日本の消費者の反応は鈍い。それを動かすには、ほかとは違う商品をつくることが必要となる。
生産から小売までを統合
食品卸売業は売上のボリュームがいかに大きくなろうと、基本的な収益構造を変えることは容易でない。このため、従来のかたちを変えない限り、利益なき繁忙と投資を続けるしかない。それができないと、現状維持から衰退に向かうことになる。かつて大手流通業がたどった道である。変えるには、自らプロデューサーとなり、生産から小売までを統合するしかない。
すでに一部の生鮮でスタートさせているが、ヤマエ久野にはそれを拡大して大型直売店舗をつくり、ネット機能を付加した新型のリアル店舗を開発するという構想も求められるのかもしれない。
リアルで生き残れるのは、極端なディスカウント店か、クオリティーを重視したスーパーマーケットだろう。しかし、従来型の小売業がそれを一から構築するのは簡単ではない。このため、クライアントの小売業との協業化による産直大型店とネットを融合させた新型店の提案も、ヤマエ久野にとって新たな課題になるはずだ。卸が培ってきた経験に基づくノウハウを生かしながら新機軸を構築し、クライアントに革新的サポートを提供することも、ヤマエ久野の今後の課題となるだろう。
(つづく)
【神戸 彲】
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