【企業研究】九州卸の雄・ヤマエ久野(4)
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事業の垣根を取り去る
もう1つの選択肢は関連企業のさらなる拡大だ。たとえば、アマゾンは小売からクラウド、そして物流から製造へと変身を続けている。我が国に限っても、売上高は2兆円を突破した。しかし、株主への配当は0のまま。このしたたかな判断もアマゾンの特徴だ。アマゾンはこれからも全国にセンター配置し、安価で迅速な商品提供を行うことで、そのポジションを揺るぎないものにしようとするだろう。そうすることで同業他社を駆逐するのだ。
彼らのフルフィルメントセンターは単なる配送センターではなく、独立した事業体とみることもできる。つくり、運び、売る。その流れのなかでアマゾンは近い将来、日本でもリアル店舗に進出するはずだ。このことは我が国の卸、小売業に変革の必要性を突き付ける。
そうしたなか、ヤマエ久野に求められるのは、まず生産に目を向けて、さらには消費者に届ける流れを自らつくり上げることかもしれない。問題はそれを決断し、実行できるかどうかだ。
本業以外の事業について、ヤマエ久野はこのほど、防水技術に高い評価がある建築関係企業を傘下に加えた。金融機関から紹介されたM&Aだが、それに応じた経営判断は評価に値する。ヤマエ久野のM&Aによる売上高の推移を見ると、20年3月期は17年3月期の12倍という極めて高い伸びを見せている。M&Aによる売上高は1.000億円に近く、全体の19%を占める。
もう1つの問題は関連事業の利益率だ。卸と違って、関連事業の利益率は本業の卸を大きく上回る。そうした事業を探して、食品卸を超える新分野を確立することも今後必要となる。
関東・関西系の卸とは対照的に、ヤマエ久野にはガツガツしたところがないというのが、多くのクライアントから聞こえてくる評価だ。社内の雰囲気もいい意味で体育会的で、積極的に仕事に取り組む社員には居心地がよいという。さらに特筆すべきは、社外の人材登用も躊躇しないこと。関連会社のトップは異業種や得意先企業からの転籍組も少なくない。また、ヤマエ久野は一般職・総合職ともに女性社員の定着率が高く、女性が働きやすい職場といわれている。
こうした社風をさらに積極的なものにして、新たな分野に進む気風の醸成が今後の経営に求められることかもしれない。
(つづく)
【神戸 彲】
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