2024年11月22日( 金 )

【参院広島再選挙】限りなく「黒」に近い?~自民党の選挙活動

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 元経産官僚の西田ひでのり候補(自民公認・公明推薦)と野党統一候補のフリーアナウンサーの宮口治子氏がほぼ横一線で終盤に突入した「参院広島選挙区再選挙」(4月25日投開票)で、自民党が何でもありの選挙を始めた。4月22日、「県民の皆様へ 自民党県連再起動」と銘打った岸田文雄県連会長の写真付の両面カラー刷のビラを中国新聞の折込みで配布したのだが、公職選挙法に詳しい法曹関係者は「限りなく黒(公選法違反)に近い」と指摘。23日に広島市内で講演をした郷原信郎弁護士もビラの現物を指し示しながら、次のように問題視したのだ。

郷原 信郎 弁護士

 「中国新聞にこういう自民党のビラが入っていました。(表に)岸田さんが、県連会長のメッセージがある。裏に候補者のシルエットが入っている。ここに『39歳、自民党公認、広島市出身、被爆三世』と書いてある。プロフィールを書いてシルエットまで出して、候補者名だけが書かれていない。
(ビラの中にある)『公職選挙法に規定により候補者の顔写真や氏名を記載することが禁止されているため、シルエットを用いています』と正直に書いてある。これは一体何ですか。

 そもそも選挙期間中の政党のビラというものは、政党の政策を訴えるものでなければいけないし、候補者名をもろに書いたり、それを推測されるようなことを書いてはいけないのは、公選法のルールです。これは公選法違反そのもの、真っ黒になるかどうかは別として、相当に問題のあるやり方だと思います。自民党のような大与党がこんなことをやらざるを得ないところまで追い込まれている。今まさにそういう状況なのです」。

 実際、22日配布の折込みビラには「※公職選挙法に規定により候補者の顔写真や氏名を記載することが禁止されているため、シルエットを用いています。」という但し書きがあった。法律順守の姿勢を印象づける文言にはなっているが、郷原氏が「候補者名を推測されるようなことを書いてはいけない」と述べた通り、公選法は「氏名類推事項」(注)の掲載も禁止しているのだ。この部分を意図的に削除することで、違法行為ではないと印象づけることを目論んだ確信犯と疑われても仕方がないのだ。公選法に詳しい法曹関係者は、こう続けた。。   

 「シルエットの利用自体はグレーゾーンで、東京都知事選や北区区長選や富山県知事選でも問題になったが、この三選挙ではシルエットと共に併記している文字は候補者を匂わす程度にとどめており、本人のビラとは一応区別できるようにしていた。それに比べて今回の折込みビラは、シルエットのイラストが候補者であることを明示し、年齢や細かい候補者のプロフィールまで載せており、本人の選挙活動用の顔写真入りのビラを、わずかに加工したかのようなつくりになっている。政党ビラとして一線を超えているように見える。『自民党は明確な公選法違法でなければ何でもやるのか』『自民党は限りなく黒に近い選挙をまたやるのか』と批判されても仕方がないだろう」。 

 懲りない面々とはこのことだ。公選法違反の買収事件で河井案里参院議員が失職したことによる再選挙であるのに自民党は、再び公選法違反になりかねない政党ビラを配布したのだ。

 23日夜、広島駅前で西田ひでのり候補に郷原弁護士がビラを問題視したことを伝えると、「選管に届出をしてOKをもらっている」と正当性を主張。これを郷原弁護士に伝えると、「選管は届出を受けるだけで、ビラの内容を問題視することはほとんどない」と反論。選管は届出を受け付けただけで、「ビラの内容が公選法上問題ないとOKを出した」ということではない。

 なお郷原弁護士の講演会(市民連合主催)には、宮口治子候補を応援する立憲民主党の平野博文・代表代行と共産党の志位和夫委員長が参加。講演後に両党幹部がそれぞれ10分間スピーチをした後、最後はグータッチをする場面もあった。広島再選挙で野党は統一候補擁立に成功したものの、立民と共産の国会議員が街宣で一緒に並ぶことはなかった。「参院長野補選での混乱が広島にも飛び火したのか」「連合が難色を示しているのか」などと囁かれていたが、最終盤になって両党の連携(共闘)ぶりが可視化されることになったのだ。

共産党・志位和夫委員長(左)立憲民主党・平野博文代表代行(右)

 これも自民党の政党ビラと同様、広島再選挙が与野党のどちらにも負けらない天下分け目の決戦であることを物語るものだ。4月25日の投開票結果が注目される。

注:国会答弁((第103回国会 衆議院 地方行政委員会 第1号 昭和60年11月8日)には、「公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項」の、その「氏名が類推されるような事項の中には写真とかあるいは似顔絵とかそっくりの人形とか、そういうような、そのことを見ることによって客観的に候補者の氏名が想起されるような事項を含む」とある。

共産党・志位和夫委員長

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