2024年11月23日( 土 )

あー、よかった!!『パナマ文書』で泥まみれにならなかった、やずや会長・矢頭美世子氏(2)

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 Y社からの『パナマ文書』についてのコメントのなかに、「ベトナムの会社を買収した際に、この会社が問題になる登記をしていたことを知った。だから取り消しを行った」とある。
 矢頭美世子氏は現在、九州ベトナム友好協会会長に就任しており、ベトナムとの関係は深い。もともと、矢頭氏が傑女ぶりを発揮して、仏壇のはせがわのベトナム事業を買い取ったときからの縁である。現在、ベトナム事業は黒字で推移していると言われる。

『天神プレイス買取の裏側で』

 矢頭美世子氏の傑女ぶりについて、3人の男たちの証言から知られざる面を語っていこう。

矢頭 美世子 会長<

矢頭 美世子 会長

 公式データで言えば、Y社のスタートは美世子氏の旦那・矢頭宣夫氏が1975年10月に個人創業、77年1月に株式会社へ法人改組し、88年7月に現商号となった。当時の美世子氏は、旦那のサポート役と見られていた。
 ところが、宣夫氏が99年6月に逝去。そこから、Y社の業績が急成長し始めた。この実績の下に、美世子氏の経営者としての卓越した力があることの評価が定まった。これは周知のことであるから省略する。ここでは、あまり公表されていない3人の証言から、彼女の断面を伝えていこう。もちろん筆者も、大半の現場の要所要所で立ち合っていた。

 今、福岡市中央区今泉に『ホテル天神プレイス』があるが、この場所は、やずやホールディングスの中核ゾーンになっている。この不動産の賃借権を取得したのが、2012年2月であった。
 以前の賃借権の持主は、地場中堅デベロッパーである(株)アーム・レポ(本社:福岡市中央区、田中浩和代表)であった。田中氏はこのビッグプロジェクトを成功させて、業界での基盤を固める野心を抱いていた。しかし不運なことに、08年秋にリーマン・ショックに襲われたことで、事業がストップした。この処理如何では、アーム・レポの破綻の懸念が高まっていたのだ。
 田中氏も必死であった。安く買い叩かれたならば、売却損で圧死される。売却できたとして、極力こちらの都合に近い値段で売りたい。

 そこで販売代理人として、業界の先輩で顔が広く紳士然としていた元アーサーホーム代表・山本博久氏に頼み込んだ。山本氏の買い手リサーチのなかから、本命として登場したのが、矢頭美世子氏である。指値が出る前日は、田中氏の胸は圧迫されていたことだろう。「35億円となれば、足りない分をどう工面するか」という自問自答をしながら、一夜を過ごしたと聞く。一睡もできなかったであろう。

 翌日、想像もできない衝撃を受けた。矢頭氏側から、要求満額に近い「40億円」が提示されたからである。「嘘だろう」と疑いつつも、現実が現実だ。喜悦満面の顔になっていた。「これで、ゼネコンも含めた関係者は承知してくれる金額だ」と安堵した。
 さらに第2弾のショックに襲われた。「40億円、自己資金で賄われるようだ」と聞いたときである。
 「矢頭社長のスケールの大きさには驚愕する。40億円という資金を、キャッシュで捻出できる人は稀有だ。また、我々の厳しい状況を察知してくれて、値段をつけてくれた。一生恩返ししても、返し切れない」と田中社長は語ってくれた。
 この買いっぷりの良さは、福岡においてはさすがに矢頭氏おいて、他にはいないだろう。

山本博久氏の恩返し

 40億円の不動産取引の仲介料をめぐって、悲しいかな、山本氏と田中氏の間で反目が生じた。田中氏は「払いたいのだが、お金がない。申し訳ない」と頭を下げるのみ(裁判沙汰になったが)。山本氏も旧債を抱え、生活に困窮している。
 そこで矢頭氏のところへ相談に行った。山本氏の実績を承知している。さっそく、子会社の(株)ワイ・エム天神の要職に抜擢した。この登用に感激した山本氏は、獅子奮迅の活躍をした。一瞬にして、新規オープンさせたホテル事業を軌道に乗せた。

 恩返しはその程度で良さそうなものを、12年2月には『ホテル博多プレイス』購入の実績も残した。
 山本氏曰く、「矢頭さんは人の使い方が上手だ。関連会社にはいろいろな男性を配置しているが、全員が切磋琢磨して実績を残させている。自分の経営者時代を振り返ると、反省することばかりである」。山本氏本人はもう80歳に手が届く。「余生はゆっくりと過ごしたい」そうである。
 もう1人、Y社の本業の繁盛に功労した方は、現在も外部からY社の信用固めの貢献をしている。「矢頭さんには、一生かけて恩返しするつもりである」のが本心のようだ。

 これだけの功徳を積んできたのであるから、『パナマ文書』で泥まみれにならなかったのである。

(つづく)

 
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