2024年11月29日( 金 )

【凡学一生の優しい法律学】小室一家報道による「惨殺」事件~小室文書の優しい解説(前)

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1. 羊頭狗肉

 「羊頭狗肉」とは少し意味は異なるが、「下世話ネタ専門」の週刊誌による小室圭さんやその母親・小室佳代氏に対する一連の報道という名の下の違法犯罪行為は卑劣、残酷きわまりない。惨殺に等しい非道な行為であることを強く訴えたい。

 民放テレビ局も、結局は収入源の広告スポンサーの意向を忖度し、「視聴率神話」の信奉者として視聴者の大好物の下世話報道をする。テレビの報道番組やワイドショーに出演してあわよくば売名に成功すれば個人収入が増大するため、弁護士が登場するが、下世話な報道を批判することはなくなっていない。このようにして、小室一家は「まるで日本全国を相手に戦う」ような、極めて精神的に追い込まれた理不尽な状況に置かれている。

 若くして悪徳週刊誌の利益優先報道の犠牲になった小室さんは、持っている知力を振り絞り世間に向けて「弁明書」を発表した。しかし、論理的な文章の作成に不慣れなのか、気持ちだけが先走り、説得力に欠けている。ある弁護士は「屁理屈」とけなし、ほかのある弁護士は「法律文書に似せた背伸び文書」と批判する。多くの報道記者らは「長大難解」と酷評した。

 小室さんが4月8日付で発表した文書(以下、小室文書)は、一生懸命、丁寧に説明したい気持ちと相手や関係者、とくに婚約者である眞子さまを意識して配慮したため、論理文では通常は避ける「敬語表現」にあふれ、表現も冗長だった。その分、文意の把握が困難で、表現の重複が多い。この理解しにくさが、事件の本質を一層わかりにくくした。

 小室さんにかかる一連の報道、とくに佳代氏のプライバシー報道が基本的には名誉棄損の違法行為であり、プライバシー権の侵害であることを、まず強調したい。さらに、何が違法かを説明したい。

2. 名誉棄損罪とプライバシー侵害の違法

 公然と事実を示して、人の名誉を棄損すれば名誉棄損罪(刑法230条)となり、事実の真実性を問わない。ただし、この基本原則について例外的に、違法性を否定する場合もある。事実が真実であり、加えて公の利害に関するもの(公益性・公益利害関係性)である場合は処罰されないのだ。さらに、公務員や公的立場(国会議員など)の人についてはその行為が公益性あるものとされている(刑法230条の2)。

 小室さんと眞子さまの婚約は皇室の婚礼行事の重要要素であり、眞子さまは皇族だから公人だ。ただし、婚姻成立と同時に皇籍離脱をされて、公人としての身分は消滅する。つまり、佳代氏が義母(姻族一親など)となるのは皇籍離脱後だから、佳代氏の個人的事情は、眞子さまとの関係では、公益性が一切存在しない。婚約報道も公益性のある事実となるが、皇室の婚姻儀式の範囲内のことである。佳代氏は私的な婚礼儀式に参加することはあっても、公的儀式の共同主宰者や参加者となることはない。

 小室さんの立場から見ても、佳代氏の個人情報に公益性はない。たとえば、もし佳代氏が眞子さまとの婚姻に反対であったとしても、婚姻は両者の合意によってのみ成立するため、親の賛否は無関係である。つまり、婚姻意思に関しては、親であっても第三者、他人であるためだ。これを法的に表現すれば、母・佳代氏は子息・小室氏の成人後の婚姻意思に基づく法律行為には、第三者の地位に立つということである。

 第三者のプライバシーを報道することは、それだけで違法犯罪行為となる。ただし、現実に皇室女性と一般男性の婚姻について、その婚約者男性の家族一族の秘事が報道されたことはなく、まして名誉棄損罪の訴追を受けたことはない。

 それは名誉棄損罪が親告罪(被害者からの告訴がなければ、刑事事件として起訴できない罪)であり、「かつての皇族」と姻戚関係をもつことになる婚約者の母が刑事訴追を選択することはないという心理的障害・忖度による。これはある意味で、法律の「ブラックホール」である。

 佳代氏は、悪徳で下世話な週刊誌を訴える行為が世間の好奇を一層あおり、火に油を注ぐことを知っている。子息のために理不尽な辛抱を余儀なくされている。

3. 小室文書が訴える真実

 小室文書に記述された事実は、母・小室佳代氏の元婚約者の理不尽な行動と、それを売上のためのスクープ記事に悪用した悪徳週刊誌の出版社の違法犯罪行為を描き出している。

 佳代氏とその元婚約者間に発生した「金銭トラブル」は悪徳週刊誌記者が捏造した「虚偽」である。ただし、この事実にはそもそも客観的な証拠が存在せず、悪徳記者はその存在を客観的に立証できない。

 親しい男女間や親族・友人間の事実について、時間とともに変化する法律関係を再現し、確定することはできない。どちらの当事者が矛盾する行為、主張を行ってきたかという、間接的な事実・証拠による条理的・経験則的な判断となる。

 本連載では、小室文書をわかりやすく筆者が書き替えた「解説版」を最後に示すが、事件の本質を理解してもらうため、事件の骨格をあらかじめ以下に示す。

(つづく)

(後)

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