2024年11月22日( 金 )

【IR福岡誘致開発特別連載39】IR和歌山に続けてIR横浜の中華系ギャラクシーが撤退

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 前号でも説明していた横浜IRの中華系大手ギャラクシーエンタテイメント(香港)が18日に突如撤退し、続けて予測が現実のものとなった。主たる理由として、和歌山IRの中華系サンシティグループ ホールディングス(マカオ)の撤退と同じく、コロナ感染の再拡大により当事者が一転して財政難に陥ったことが指摘されているが、詳細は不明だ。

 和歌山県行政は、残る1社のクレアベスト・ニーム・ベンチャーズ(カナダ・トロント)での、今夏のRFP公募の実施が不透明になったと公言している。これは目的としていたサンシティの突然の撤退で、足下が崩れてしまい、カナダの投資会社では隣接する大阪IRに対抗できないと言っているのに等しい。ともに前号で予測していた結果だ!

 残る中華系IR企業は、横浜のメルコ・インターナショナル・ディベロップメント(香港)と長崎のオシドリ・インターナショナル・ホールディングス(香港)の2社である。これらは香港またはマカオに本社があり、米中覇権争いのなかで日米経済安全保障の対象として規制を受ける可能性がある。

 前者は、世界的な大手であり、会長兼CEOローレンス・ホー氏は昨年亡くなったマカオのカジノ王スタンリー・ホー氏の実子である。本人の意志に関係なく、このファミリーは長い歴史を有し、中国の習近平政権とは切っても切れない関係にある。

 後者は、カジノ王スタンリー・ホーがつくったマカオの巨大な市場の恩恵を受け発達したジャンケット(カジノ金融)業を主体とする金融開発企業である。提携する米国モヒガン・ゲーミング&エンターテインメント(米国コネチカット州)は同社の下請的存在であり、また財政難に陥っていることから本件の主体とはなりえない。

マカオ イメージ 当初から繰り返し説明しているように、当該地域の行政と議会は、日米経済安全保障の観点から、これらの中華系投資開発企業をRFP(具体的な提案書提出)前の一次審査の段階で選択すべきではなかった。危機管理の意識に欠けており、お粗末とさえ感じる。ファーウェイ問題などに代表されるトランプ前大統領の安全保障政策が、現在に至るも続いているのは誰が見ても明らかではないか。

 これらのIR候補地の首長および行政は、今回先方から突如撤退の意志を告げられて右往左往している始末である。何事にも、最初から複数の選択肢をもって、最悪の事態に陥るのであれば潔く止めることも視野に入れて実行すべきだ。「何が何でもヤル」という姿勢では危機管理はできず、税金の無駄遣いとしか言いようがない。

 彼ら中華系企業はビジネスのプロである。和歌山、長崎という地方都市で観光客を主体としたIR事業ではリスクが大きすぎで"止めた"と言っているのだ。後背地人口が少なく観光客を主体としたラスベガスでさえもコロナ禍で崩壊の危機に瀕している。これは我が国の地方都市と比較できないかもしれないが、条件の近い事例としての実例を提供している。各行政の首長と議会関係者はこのことを理解しているのだろうか。

 横浜で8月に市長選挙が予定されており、IRを積極的に推進する現職の林文子市長が4期目を目指している。しかしながら、横浜港湾業界のドンである藤木幸夫氏が反対していることもあり、林市長の後ろ盾の菅政権がほかの候補者を立てるという噂もある。コロナ対応における数々の不手際による支持率の低下で、自民党を取り巻く情勢は厳しさを増している。IR横浜の今後は選挙結果次第といえる。

 横浜、和歌山、長崎の各IR誘致開発事業は、ますます厳しくなっており暗雲が立ち込めている。しかし、各首長と議会関係者はこれに執着しており、出来もしないのに止める気配は一切ない。

 IR誘致開発は"トランプ・安倍密約"から始まっており、米国IR投資開発企業のみを対象とした多くの後背地人口を抱える2つの大都市圏、すなわち大阪市中心の関西都市圏と福岡市中心の北部九州都市圏にしか、可能性はない。

 コロナ禍で傷ついた経済環境を考慮して、確固たる受け入れ体制を整えるために、政府には、2022年4月末とする申請締め切り日を再度延長することを提案する。

【青木 義彦】

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