2024年11月23日( 土 )

ミャンマー軍事クーデター、日本政府が沈黙する陰に日本企業と軍の深いつながり(1)【閲覧注意画像あり】

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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
CMCオフィス(株)代表取締役 大谷 賢二 氏

2月1日のミャンマー国軍によるクーデターは、昨年のミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサン・スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。国連や欧米各国は、ミャンマー軍に対して、市民の殺りく停止、スーチー女史などの逮捕者の即時釈放、民主化の回復を求めて厳しい対応をしているが、日本は毅然とした態度をみせていない。そのような対応しかできない背景には、日本企業とミャンマー軍との深いつながりがあった。

ミャンマー国軍によるクーデター

 これまで、経済講演会において筆者がカンボジアへの進出を勧めたところ、「ミャンマーの方が有望ではないか!」という意見が頻繁に出された。その理由は、人口の多さ、地下資源の豊富さに加え、テイン・セイン政権下で民主化が進んだというものであった。

 当時の大統領テイン・セイン(軍人)。民主化のシンボルである
アウンサン・スーチーとの間で民主化が始まったかに見えた。

 当時の大統領テイン・セイン(軍人)。民主化のシンボルであるアウンサン・スーチーとの間で民主化が始まったかに見えた。

 2011年、軍事政権であるテイン・セイン大統領がアウンサン・スーチー女史の軟禁を解き、国民民主連盟(NLD)を野党として公認したことにより、マスコミもミャンマーを「アジア最後のフロンティア」としてはやし立てた。

 しかし、ミャンマーは多宗教・多民族国家であり、軍部は少数民族との紛争のため、今でも地雷を製造・埋設しているような国だ。とくにロヒンギャ問題では、多くの罪のない人々に対して抑圧、虐殺、強姦などの非人道的行為を行っており、筆者はミャンマーの民主的な顔の裏に隠れた本質を見てきた。

 筆者がとくに問題が大きいと認識していたのは、憲法を変更することなく、「民主化」を進めてきたことだ。08年に制定された憲法では国会議席の4分の1を軍人に割り当て、非常時には国軍司令官が国民に対するあらゆる権限を掌握できるように規定されており、軍の意思により、政治介入がいつでも可能になっている。また、憲法の改正には、議員の4分の3以上の賛成が必要であり、軍が最低でも4分の1を占めている現状では、実質的に改正は不可能だ。

今回のクーデーターでATMでも出金できない状況が増えてきた(大谷氏提供)

 この憲法を変えることなく、真の民主化はあり得ない。そのため、ミャンマー進出は憲法が改正されるまで様子を見た方が良いということが、筆者の意見だった。しかし、世論の動向は「ミャンマー民主化」に流れ、430社を超える企業が進出した。

3月11日お昼ごろマグウェ地方域ミャイン市で頭に直接発砲され数多くが死亡。
他の地方にも死亡人数と大怪我の人数が増加(大谷氏提供)
3月3日に射殺された19歳の少女(大谷氏提供)

 今回のクーデターは、20年11月に行われたミャンマー連邦議会の総選挙で、NLDが476の改選議席の8割以上の396議席を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。総選挙に不正があったとして選挙結果を認めなかったことに対して、国民の怒りが爆発し、民主主義を守るべきだという抗議が全国に広がるなかで、軍は無慈悲、無差別に実弾を使って殺りくを開始した。いったん、軍事力がその本質をさらけ出すとその残酷さはとどまることなく市民に襲いかかる。

 ミャンマー国軍最高司令官ミン・アウン・フライン、クーデター後、定年制を撤廃。今年65歳になるが、引退せずに大統領の座を狙っている

日本国内で、民族衣装のロンジーを着て静かに
抗議デモを行う在日ミャンマー人たち(大谷氏提供)

 かつて、海外からの圧力や国民の圧政に対する怒りに譲歩するかたちで一定の「民主化」はしたものの、長年にわたり貪ってきた利権が実際に奪われそうになれば、牙をむくということだ。それが今回のクーデターなのだ。現在約800人が殺害され、3,000人以上が拘束されていると言われており、さらに不当に逮捕された人々も拷問、強姦など想像を絶する暴行を受けているとの証言があり、生存の保証はない。

 「嘘の情報を流した」としてミャンマーの治安当局により不当に逮捕されていたジャーナリストの北角裕樹氏は、約1カ月の拘束の後、「ミャンマーと日本の関係を考慮して」解放したと軍が発表したが、そのこと自体が軍部と日本は深い関係にあることを物語っている。

(つづく)

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