2024年11月22日( 金 )

再エネ推進で、太陽光や風力発電の立地要件緩和、地熱発電の導入拡大も

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風力発電(上)と太陽光発電(下)
風力発電(上)と太陽光発電(下)

 内閣府の第10回「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(座長:河野太郎規制改革担当相、以下、タスクフォース)が3日に開催された。このタスクフォースでは、昨年10月に菅首相が掲げた「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」という政策転換を受けて、再エネ普及に向けた系統制約や立地制約などに関する規制の見直し・改革が行われている。

再エネの規制改革

 これまでのタスクフォースでは、主に下記の規制改革に向けた議論がなされてきた。

(1)再エネの立地制約の解消

 農地、森林、自然公園、所有者不明土地の制約を緩和して再エネ導入地として利用。環境アセスメント制度や地熱発電の導入拡大に向けた温泉法の見直し。

(2)送電時の系統(※1)制約の解消

 ノンファーム型接続(※2)の全国展開、電力供給が多い場合に発電所から電力系統への接続を制限する出力抑制時においてメリットオーダー(※3)を追求、蓄電池の導入を促進。

(3)市場制約の解消

 電源表示の義務化、放射性廃棄物の明示化、再エネ価値取引市場の創設、住宅などの省エネルギー基準の適合義務化。

 今冬に電力市場のスポット価格が高騰した問題を踏まえて卸電力市場に行う措置は、2021年度末までに結論を出すとしている。

エネルギー基本計画

 タスクフォースでは、経産省資源エネルギー庁で検討がなされている次期の「エネルギー基本計画」に対して、民間委員から下記の原則を明記するよう提案がなされた。

(1)再エネ最優先

 政策資源を再エネに集中投入し、再エネに不利になっている系統制約を解消し、エネルギー市場制度を変える。出力抑制では、原子力などの長期固定電源より、太陽光などの限界費用の低い再エネを優先して発電コストが安い順に電力を利用し、出力抑制が必要な場合には再エネへの補償を実施する。

(2)電力システムの柔軟性重視

 発電側だけでなく、火力発電の出力調整運転、揚水運転、送電網の広域運用、デマンドリスポンス(※4)、蓄電池など系統側や需要側で調整していくことで電力の安定供給を確保し、ベースロード電源(※5)を優先するルールを撤廃。

(3)公正に競争できる環境を整備

 再エネ以外の既存電源に配慮した政策が目立つため、再エネを主力電源化できるよう、今年の冬のスポット価格高騰問題で大きな被害を受けた新電力に還元策を実施、ベースロード電源の補助となる容量市場の凍結と見直し、再エネ証書と原子力証書の分離、電源表示の義務化などの構造的な措置を検討する。

 資源エネルギー庁は「再エネ最優先という姿勢ですが、風力発電が多い欧州とは異なり、天候や季節で発電量が変動する太陽光発電の割合が高い日本では、エネルギー安定供給が重要であるため、新たな政策導入においては検討が必要です。再エネ普及では、発電所の適地の確保とともに、再エネ発電所の設置による景観や土砂流出への懸念などに対して地域住民の理解が得られるかどうかも大きな課題となっています」と慎重な姿勢を示し、個別の政策については検討したいとしている。

【石井 ゆかり】

※1:発電された電力を利用者に届けるまでの電力設備。 ^
※2:送電線の混雑時に出力制御を行うことを条件にして、新規接続を許容すること。 ^
※3:さまざまな発電所を、発電コスト(限界費用)の安い順に並べたもの。 ^
※4:電気料金価格の設定、またはインセンティブの支払いに応じて、電力の需給バランスを調整する仕組み。 ^
※5:低コストで昼夜問わず、安定して発電できる電力源。 ^

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