2024年12月23日( 月 )

世界の電池市場で躍進が目立つ中国企業(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 環境への配慮から、自動車産業も電気自動車への意向が徐々に進んでおり、電気自動車の原価の40%を占めるコア部品の電池に熱い視線が注がれている。電池市場で日中韓の激しい競争が繰り広げられているのはよく知られているが、中国企業が急激に台頭している今、電池市場では何が起こっているのか。

8年ぶりに世界トップとなった中国企業CATL

電気自動車 イメージ 中国電池企業の技術力は、数年前までは高いとはいえず、品質、価格、安定性などにおいて中国企業は日韓企業のライバルではなかった。

 ところが昨年は、ドイツの自動車メーカーのフォルクスワーゲンの電池納品企業として、韓国のLGエナジーソリューション、サムスンSDIとともに中国のCATLが選定されたという衝撃的なニュースが報道された。CATLはそれから4カ月後、ドイツのBMWとも大口契約を締結して世間を驚かせた。

 CATLは昨年の時点で、全世界の完成車メーカー44社と電池供給契約を結んでおり、世界を代表する電池メーカーに成長した。中国で走っている電気自動車の10台中4台、世界の電気自動車の4台中1台はCATLの電池を積んでいる。

 短い歴史のなかで世界トップに上り詰めたCATLは、電子部品メーカーであるTDKの系列企業である香港企業に勤めていた中国人3人がATL(アンプレックステクノロジー)という企業を1999年に香港に設立したことに端を発する。このなかの1人が独立して2011年に設立した会社が、CATLである。CATLはATLの人材を引き抜いただけでなく、株式面でも相互に持ち合う状態であった。しかし現在、両社は株の持ち合いを解消し、100%中国資本の企業となっている。

 CATLは当初、日本企業、韓国企業のライバルではなかった。日本と韓国の電池原価はWh(ワットアワー、時間あたりの電力量)あたり1.8人民元(約30.8円)であったのに対して、中国企業は2人民元(約34.2円)であった。CATLは技術力においても日韓企業に劣っており、14年の電池生産量は0.3GWh(ギガワットアワー)と、その世界市場シェアは2.1%にすぎなかった。

 ところが、急成長したCATLの今年上半期の生産量は17.3GWhとなり、世界市場シェアはトップの26.4%となった。昨年の上半期の売上高は、前年同期比130%も伸びている。今年の予想売上高は約7,000億円と、2015年比で7倍に成長する見込みだ。韓国の電池企業はまだ黒字に転換できていないなか、CATLは昨年、約680億円の営業利益を計上しており、今年は営業利益の約30%増が予想されている。

CATL成長の背景

 中国政府は既存の自動車産業で先進国を追い越すのは容易ではないため、競争のルールを変えて電気自動車産業を育成することに乗り出した。そして、莫大な補助金をもって、中国企業を支援するという方法をとった。優れた技術をもった外国企業が市場を取らないよう、自国企業の電池を搭載した電気自動車のみに補助金を出して、中国の電池企業を育成できるようにした。

 世界の電気自動車市場の半分を占める中国市場で、有利な地位を占める中国の電池企業は成長の足場を国内で構築した。さらに、火災の危険性などを理由にして、電気自動車への韓国企業の電池の搭載を防ぎ、中国企業がその間に技術を蓄積できるようにした。

 中国企業のCATLは自国市場だけでなく、世界市場に向けても積極的な投資を始めている。ヨーロッパと米国などにも生産拠点をつくり、海外市場攻略にも乗り出している。CATLがこのように成長できたもう1つの背景には、中国の素材の競争力がある。電池の原価の40%を占めている正極材のほとんどは、中国で生産されている。韓国の場合、正極材の原料8割以上を中国から輸入しているため、素材の価格競争力においては中国に勝てないのだ。

 巨大な自国市場において大量生産を行う中国企業は技術力までも蓄積し、海外市場に向かおうとしている。今後は、韓国企業と中国企業の世界市場での激突は避けられない。このまま中国企業がシェアを伸ばして行くのか、それとも、韓国企業が巻き返しを図るのか。これからが見どころである。一方、日本企業は全固体電池というゲームチェンジャーをもって、市場を逆転させようとしている。

(了)

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