2024年11月22日( 金 )

【企業研究】福岡トップクラスの設備工事業者 好業績のカギは人材の連携による技術の継承(後)

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大橋エアシステム(株)

 設立70周年を迎えた老舗の大手設備工事業者、大橋エアシステム(株)。地場大手の空研工業(株)、(株)菱熱としのぎを削りながらも好業績を収める同社の経営施策を検証する。

働きやすい職場環境づくり

 少子高齢化社会で働き手の数が今後ますます減っていくなか、採用した人材をいかに流出させないかが大きな課題となっている。同社では産業医を置き、社員の健康増進への取り組みを積極的に行っている。産業医とは、企業の職場において労働者のメンタルヘルス(心身の健康)を管理し、快適に仕事ができるように専門的な立場から指導・助言する医師のこと。労働者の健康管理について、予防からケアまでの業務を担い、健康診断対応、ストレスチェック対応、希望者の面談対応、職場巡視、健康・衛生教育などを行う。

 若手社員には安心して働ける職場を提供、ベテラン社員にはできる限り長い間活躍できるように人間ドックの費用補助や、健康診断の結果を踏まえて産業医との面談を実施するなど、健康にも配慮した取り組みを行っている。それにより、社員の離職率の低下につながっている。

福岡トップクラスの管工事業者

 全体としては好調な管工事業界。そのなかで福岡県下の売上高上位3社は、空研工業(株)、(株)菱熱、大橋エアシステム(株)となっている。空研工業の売上高は226億3,451万円(20年3月期)だが、自社ブランドの冷却塔や加熱塔、吹出口、ダンパーなどの空調機器メーカーで国内トップシェアを誇り、管工事の売上高は49億5,411万円で売上高構成比21.9%。菱熱の売上高は204億827万円(20年9月期)、管工事が203億3,771万円(同構成比99.7%)。大橋エアシステムの売上高は75億6,400万円(20年12月期)で、そのうち管工事が75億2,644万円(同構成比99.5%)とほとんどを占めており、菱熱とほぼ同じ構成比。実質的な管工事の売上高は菱熱が突出しており、大橋エアシステム、空研工業の順となる。

 大橋エアシステム以外の企業を見ると、空研工業は1956年6月設立。70年代の高度成長期に同社の技術力は業績拡大に大きく寄与。ビルの屋上に設置される主力製品の冷却塔について従来の丸型から角型の製品を開発し、施工やメンテナンス面での使い勝手を飛躍的に向上させたほか、密閉型冷却塔を開発するなど、一時は関連会社9社となりグループ全体の売上高は430億円を超えた。90年代後半に不動産賃貸業や飲食業、ボーリング場、ゴルフ練習場など多角化に取り組んだ。しかし、バブル崩壊で借入金負担が拡大し、経営状況は悪化。2002年9月に九州経済産業局から産業活力再生特別措置法に基づく「事業再構築計画」の認定を受け、事業再建に至った経緯がある。その後、積極的な設備投資に加え、国内の建設活況が追い風となり本業の空調機器が急拡大、16年9月期から売上高200億円超を維持している。

空研工業 業績

 菱熱は1959年8月に設立。主な受注先である大手ゼネコンや九州電力に加えて、官公庁からも毎期一定数の案件を受注し、業績規模は福岡県内トップクラスである。全国を営業エリアとし、筆頭株主に三菱重工業(株)、主要株主に九州電力(株)が名を連ね、大企業をバックボーンに業績を積み上げて2010年9月期の売上高130億971万円から20年9月期には200億円を突破するまでに伸長している。自己資本比率54.85%、流動比率177.95%、当座比率157.61%と高い値を示す。なお、20年12月に元九州電力取締役監査など委員・亀井英次氏が社長に就任している。

菱熱 業績

 空研工業、菱熱と並ぶ大手設備工事業者の大橋エアシステムは、公共工事においても総合評価によりこれまで手が届かなかった大型案件も受注できている。今後の課題は、材料費・外注費の値上げ要請への対応も含めた来年以降の民間工事の営業活動。コロナ禍の収束を見極めたうえで、活発な営業活動を再開しさらなる受注高向上を目指すとしている。

(了)

【内山 義之】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:井上 久行
所在地:福岡市中央区薬院2-3-41
設 立:1951年1月
資本金:9,000万円
売上高:(20/12)75億6,400万円

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