JR西日本、光ファイバー通信事業へ進出(前)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
沿線の光ファイバーケーブルを一般向けにも活用
JR西日本は、本州3社のなかで経営基盤が最も脆弱である。JR東日本のように「首都圏」という非常に大きな需要があるエリアもなければ、JR東海のように「東海道新幹線」という大ドル箱路線も所有していない。
山陽新幹線は国鉄時代から黒字ではあったが、輸送量では東海道新幹線に遠くおよばない。「大阪近郊区間」は民鉄が強く、国鉄時代には苦戦を強いられていた。
そのような経営環境にありながら、中国地方などには慢性的な赤字ローカル線を多く抱えており、昨今の少子高齢化や過疎化の進展という問題もあり、ローカル線については存続の危機にある。
2018年3月末に、広島県の三次と島根県の江津を結ぶ108.1kmの三江線が廃止されてしまった。芸備線の三次~新見間も今後、地元と存続問題について議論が交わされる予定であるなど、予断を許さない状況にある。
そこへ新型コロナウイルスの蔓延が加わり、会社全体で需要が大きく落ち込んでいる。今年10月に予定されているダイヤ改正では、「減量化」をメインに掲げている。各線区で運転本数の削減や編成両数の削減、終電の繰り上げを計画するなど、寂しい内容のダイヤ改正だといわざるを得ない。
コロナ禍が終息したとしても、テレワークやZoomを用いたシンポジウムの開催など、コロナ前の需要に戻ることは考えにくく、いずれは運賃・料金の値上げも検討せざるを得ない状況となっている。
そんななかJR西日本は7月16日、「光ファイバー通信事業」への進出を公表した。鉄道の沿線には、列車の運行情報のやりとりなどに活用するため、光ファイバーケーブルが設置されている。
JR西日本では、山陽新幹線や京阪神を中心とした在来線の沿線に約1,700kmの光ファイバーケーブルを設置。光ファイバー通信事業では、この一部を一般向けに貸し出すことになる。「社内のデータ通信量には余裕がある」(JR西日本)ことから、光ファイバーを活用し、貸し出しサービスを開始するわけである。
事実、コロナ禍では需要が減少しているため、自社の「みどりの窓口」を設置する駅を減少させている。これは、インターネットを活用して乗車券類を購入する人が増加したことも影響している。
日本では光ファイバーケーブルが普及し、乗車券類の発券については各コンビューターの端末がオンラインでつながっているため、山陽新幹線・博多駅で新大阪発の列車の指定券などが購入可能となっている。
(つづく)
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