JR西日本、光ファイバー通信事業へ進出(後)
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運輸評論家 堀内 重人 氏
山陽新幹線や大阪近郊区間で予想される堅実な需要
今後は経費削減の一環として「みどりの窓口」の減少を計画しているため、JR西日本が所有する光ファイバーケーブルにはさらに余裕が生じることになる。
JR西日本の見込みによると、昨年の国内のデータ通信量は、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にテレワークが広がったことから、一昨年と比較して約6割増えているという。今後もさらなる増加が見込まれるとみている。
光ファイバーケーブルを貸し出す対象として、大手の通信事業者、大学、自治体などを想定。金額などの詳細は検討中という。
コロナ禍で大きく旅客需要が落ち込み、今後も旅客需要がコロナ前まで回復することが期待しづらい経営環境にある。そこで保有する資産を有効活用し、新たな収入源の確保を模索するようになったのである。
JR西日本の長谷川一明社長は、「情報通信分野の課題にインフラ面で貢献するとともに、事業としても成長させていきたい」と述べている。
光ファイバー通信事業は、ひたちなか海浜鉄道という茨城県の第三セクター鉄道の経営改善にも大きく貢献している。コロナ前では、光ファイバー通信事業が鉄道事業の損失を内部補助する状態にあった。
ひたちなか海浜鉄道は、勝田~阿字ヶ浦間の14.3kmを結ぶ小規模な鉄道会社であるため、光ファイバー通信事業で鉄道事業の損失を内部補助することが可能である。JR西日本とは単純に比較できない面はあるが、今後はテレワークなどが進むことや、情報通信事業などは景気の影響も受けにくく、成長が見込まれる安定した事業であることはたしかである。
情報通信事業については、山陽新幹線や大阪近郊区間などで堅実な需要が見込まれる。一方、亜幹線やローカル線では大都市圏のような大手通信事業者や大学なども少ないため、地方自治体などの公的機関から活用を始める必要がある。これにより、亜幹線やローカル線の収支改善にも貢献すると筆者は考える。
光ファイバー通信事業は、既存のインフラを活用することで始められるビジネスである。コロナ禍で収入が落ち込んでいる状況を少しでも改善させるために、JR西日本に限らず、ほかの鉄道事業者も積極的に取り組んでほしい事業である。
(了)
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