2024年11月22日( 金 )

【企業研究】セガサミーホールディングスとカジノ 情熱を傾けていたカジノ参入がトーンダウン(前)

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 政府は、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致の申請受付期間を2021年10月1日から22年4月28日までとすることなどを盛り込んだ基本方針を決定した。カジノ誘致に名乗りを上げている自治体は、大阪(夢洲)、神奈川(横浜)、長崎(ハウステンボス)、和歌山(マリーナシティ)、愛知(名古屋)、愛知(常滑)、東京(台場)。神奈川県横浜市の観光地域・ベイブリッジの内側、山下埠頭が有力視されてきた。総合エンターテインメント企業のセガサミーホールディングス(東京都品川区、東証一部)が横浜のIR事業に参画する。

横浜カジノに参画を表明

横浜 イメージ セガサミーホールディングス(株)(以下、セガサミー)は6月11日、横浜市が募集している統合型リゾート(IR)運営事業に、シンガポールのIR大手ゲンティン・シンガポール・リミテッドと協業し、綜合警備保障(株)、鹿島建設(株)、(株)竹中工務店、(株)大林組とともにコンソーシアム(企業連合)として応募したと発表した。

 横浜市は2020年10月、IR誘致に関連し、提案した7事業者や提案概要を公表した。年間の訪問者は最大3,900万人、建設時の経済波及効果は最大1兆6,000億円を見込む。

 提案したIR事業者はウィン・リゾーツ、ギャラクシーエンターテインメントジャパン、ゲンティン・シンガホール・リミテッド、SHOTOKU、セガサミー、メルコリゾーツ&エンターテインメント・リミテッド、ラスベガス・サンズ・コーポレーションの7社。このうち、ラスベガス・サンズのみ途中辞退した。

 横浜市は6月11日、締め切りとしていた提案審査書類について2グループから提出があったと公表した。1つは、ゲンティンを代表とするグループ。もう1つは、応募社が公表を希望していないため非公表としているが、マカオでカジノを運営するメルコリゾーツを中心とするグループとみられている。

 市は有識者による委員会での議論を経て、今夏にも事業者を選定する。

国内IR参入は里見治会長の悲願

 セガサミーにとって国内IR参入は、里見治紀社長(42)の父でサミー創業者である里見治会長(79)の悲願だった。12年以降、宮崎県のフェニックスリゾート(株)のグループ会社化や韓国における合弁会社を通して、統合型リゾートの開発・運営のノウハウを蓄積し、国内IR事業への参画を目指していた。

 セガサミーは、国内IR事業者の第1号になるとみられてきた。ところが、セガサミーが満を持して示した横浜IR計画は、これまで掲げていた方針を大きく転換するものだった。主役は外資のゲンティンで、セガサミーはコンソーシアム(企業連合)のメンバーでしかない。

 経済専門誌『東洋経済』オンライン(21年7月20日付)が、「セガサミーが『脇役』に?横浜カジノで静かな異変 事業者公募に名乗り、でも過半出資方針は撤回」と報じた。

 セガサミーは、あれほど情熱を傾けていたIR参入をなぜトーンダウンさせたのか。セガサミーは今年5月の決算説明会で、横浜のIR運営にマイノリティー(少数派)出資で参加する方針を決めたことを明かした。

 「投資家から方針を転換した理由を問われた里見社長は、『他の事業にも大きく投資していきたい状況であることを鑑みた』と回答。これが横浜のIRに対する本音だろう」(出典:『東洋経済』オンライン)。

 里見治紀社長にとっては、コロナ禍で傷んだビジネスモデルの再構築が最優先課題だ。中期計画では、遊技機に代わる看板事業を育成すべく、今後5年でゲーム分野に1,000億円の投資を行うとしている。治紀社長の目はゲームに向いており、父親の治会長のようなカジノに対する熱い思い入れはなかった。

コロナ禍で業績が悪化、大リストラを実施

 セガサミーが20年11月6日に発表した21年3月期第2四半期決算(連結)は、最終損益が217億円の赤字(前年同期は98億円の黒字)だった。中間期の最終損失は14年以来6年ぶりで赤字幅は過去最大。新型コロナウイルス流行の影響で、パチンコ遊技機の販売や娯楽施設の売上が落ち込んだ。

 業績悪化を受け、大リストラを実施した。アミューズメント施設を運営する連結子会社(株)セガエンタテインメント(SE、東京・大田、現・(株)GENDA SEGA Entertainment)の株式の85.1%を遊戯機器関連のGENDA(ジェンダ、同)に譲渡した。譲渡価格は非公表。

 今回の株式譲渡により、セガサミーのSEに対する議決権所有割合は14.9%となり、SEは連結子会社から除外された。セガサミーは国内のゲームセンターの運営から撤退した。

 ハローキティなどキャラクター商品の企画・販売会社の(株)サンリオ(東京都品川区)の株式も売却した。持ち株比率11.27%の筆頭株主だったが、段階的に売却して主要株主から姿を消した。国内グループ従業員の約1割に当たる約650人の希望退職を実施。経営責任を明確にするため、里見治会長ら役員の月額報酬を5カ月間、最大30%減額した。

(つづく)

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