2024年11月23日( 土 )

カカオ創業者、韓国一の富豪に浮上(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国ではこれまで、長者番付の上位はサムスンや現代などの財閥のトップで占められていた。ところが、韓国の国民的メッセンジャーアプリを誕生させたカカオの創業者キム・ボムス氏は純資産135億ドルで、サムスングループの李在鎔副会長(123億ドル)を抜き、韓国一の富豪に上り詰めた。一部報道によると、キム氏はカカオの株価急騰によって今年だけで資産が60億ドルも増加。カカオの株価は今年になって91%も上昇した。

韓国において「カカオトーク」とは?

 日本の皆さんにとって一番身近なスマホアプリは何だろうか。日本でコミュニケーションツールとしてよく使われているアプリといえば、「LINE」である。ところが、韓国では「カカオトーク」が日本の「LINE」と同じ地位を占めている。実は「LINE」の親会社であるNAVER(ネイバー)は韓国企業であり、「カカオトーク」がメッセンジャーアプリとして韓国で先行したため、「LINE」については仕方なしに「カカオトーク」との競合を避けて日本に進出したわけである。

 「カカオトーク」はスマホ向け無料通話およびモバイルメッセンジャーアプリとして2010年3月にリリースされた。「カカオトーク」を開発したIWILAB(アイウィラボ)は「カカオトーク」発売後、社名をカカオに変更。14年5月には、韓国でポータルサイトとしてネイバーの次にランクされていたダウム・コミュニケーションズとの合併を発表。同年5月にダウンロード数が5億件を突破し、20年第1四半期のMAU(月間アクティブユーザー数)は4,519万に達し、9割近くの韓国人に日常的に利用されている。

 メッセージの1日平均送受信件数は110億件に上る。韓国のモバイルユーザーの多くがショートメッセージサービス(SMS)の代わりに「カカオトーク」を利用しており、韓国人は1日に何回もこのアプリを使っているのが現状である。韓国のアプリの使用順位1位は「カカオトーク」、2位が「YouTube」、3位が「ネイバー」となっている。

カカオはM&Aで事業拡大

QR決済 イメージ カカオはメッセンジャーアプリを韓国人のほとんどが使っていることを背景に、メッセンジャーアプリ事業から関連分野へと事業領域を拡大させている。

 タクシー配車アプリビジネスを展開しているカカオモビリティは、タクシー市場の8割を占めている。全国のタクシーの運転手25万人のうち、23万人がカカオタクシーに加入し、アプリの会員数は2,800万人に上る。月間利用者数は1,072万人である。

 さらに、決済サービスの「カカオペイ」は成長が著しく、「カカオペイ」は中国のアントグループとの提携によりさらに業績を伸ばした。「カカオペイ」の第2四半期の実績は前年同期比で65%増となった。

 ネットコマース事業も順調に伸びている。第2四半期の取引高は前年同期比48%増と伸びている。

 今後の有望事業として、コンテンツ事業にも力を入れる考えだ。ゲームやドラマの制作、販売のための関連会社を買収しつつある。日本で市場シェア65%を占め、1位となっているWebtoon(ウェブトゥーン)アプリの「ピッコマ」は毎日420万人以上が使用し、1日の取引額が45億ウォンを上回るようになった。売上高も前年同期比で2倍以上となり、1,740億ウォンを計上した。

カカオバンクが上場

 カカオバンクの加入者数は昨年末時点で1,360万人。今月6日に韓国の証券取引所に上場をはたした。インターネット専業バンクとしては初の上場である。現在の時価総額は33兆1,620億ウォンで、時価総額の順位は11位にランクされている。

 金融株としては一気に1位にのし上がり、これまで金融株1位だったKB金融の時価総額21兆7,052億ウォンを12兆ウォン近く上回る規模となり、世間を驚かせた。インターネットを活用した最新の金融に期待が寄せられている証拠だ。カカオはこれからも成長を続け、韓国を代表する企業集団になるだろう。

(了)

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