2024年12月22日( 日 )

【IR福岡誘致開発特別連載50】IR長崎にはカジノ・オーストリアしか選択肢はなかった

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ハウステンボス イメージ 10日、長崎県および佐世保市行政は、IR誘致開発事業の公募RFP(提案書提出)最終審査の結果、欧州のカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンに決定したと発表した。

 前号で中国カジノ企業のオシドリ・インターナショナル・ディベロップメントが審査過程での"不合理なルールと倫理的懸念"を理由として、最終審査前に撤退したことを受け、IR長崎が崩壊の危機に瀕していると報じた。

 これにより、我が国のIR誘致開発事業のすべての候補地から、中国カジノ関連企業が事実上、消えたことになる。IR横浜のギャラクシー・エンターテインメント・ジャパンにメルコ・インターナショナル・ディベロップメント、IR和歌山のサンシティ・グループ・ホールディングス、今回のIR長崎のオシドリとニキチャウフー・グループのすべてが撤退した。

 筆者は本連載開始時から、ファーウェイ問題に代表される日米経済安全保障問題および米中覇権争いを踏まえ、香港、マカオの中華系企業にチャンスがまったくないことを重ねて説明してきた。この段階になって日本の各候補地の行政機関と一部中華系企業がようやくチャンスがないものと気がつき、このような結果となったといえる。公募での入札はかたちだけのものであった。

 オシドリは米国企業のモヒガン・ゲーミング&エンターテイメントとの提携を装って、対処しようとしたものの、思い通りにはいかず、"不合理、倫理的懸念"という捨て台詞を吐いて撤退したのである。

 安倍・菅両政権の擁護者で政治評論家の田崎史郎氏は、このほど、IR横浜について、目的は当初から米国企業誘致であり、菅政権は中国およびシンガポールの企業にまったく興味はないと切り捨て、IR誘致はすでに同市長選挙の争点ではなくなったと断言した。同様に、今回の長崎県行政の最終審査においてもカジノ・オーストリアしか選択肢はなかったのだ。

 IR和歌山では、米国企業の参加はなく、中華系のサンシティの撤退により、残された選択肢はカナダのクレアベスト・ニーム・ベンチャーズとなった。各候補地の行政機関、一部中華系企業もこの段階になって日米経済安全保障問題などの影響力の大きさに気付いたということであろう。世界の政治環境への認識が不十分であった。

 しかし、残念なことに、和歌山のクレアベストも長崎のカジノ・オーストリアも、我が国のIR誘致開発事業の本命候補ではなく、繰り返し説明しているように本命は米国IR企業だ。

 またもう1つ重要なことは、主な客に観光客を想定した事業計画には採算性がなく、後背地人口の少ない地方都市にはIR開発は困難なことだ。この点も本連載開始時から繰り返し説明してきた。

 IR長崎の対象地ハウステンボスは巨額を投じて本物のオランダの街を再現しており、魅力的な景観を誇るが、後背地人口が少ないことが致命的だ。コロナ禍はそのことを再度如実に露呈させている。また、同地に巨額の投資を行う国内大手企業や地元企業もない。

 それゆえ、長崎および佐世保には政府が指導するIR誘致開発事業の母体となるコンソーシアムの組織組成は不可能だ。米国企業以外は対象外であることから、大阪のオリックスおよびMGM、候補地が横浜から変更されるであろう東京(築地市場跡地)のセガサミーおよびラスベガス・サンズと福岡のいずれかの米国企業の3カ所にしか可能性はないと断言できる。

【青木 義彦】

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