【IR福岡誘致開発特別連載53】IR長崎の崩壊、無知すぎた日米経済安全保障問題
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先日から、IR長崎のRFP(公募・選定)に関する最終審査の結果、欧州企業のカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパンを選定したことが大きな問題となっている。
一次審査を通過したほかの2社、中国系のオシドリ・コンソーシアムとニキチャウフー・グループから、入札過程が不透明として長崎県が訴訟を起こされかねない事態となっている。
筆者はこの事態を予測し、本連載で1年以上も前から、長崎県と中国カジノ企業の双方に対して指摘してきた。今回遅ればせながら、日米経済安全保障問題を踏まえ、中国カジノ企業2社を外し、長崎県が直接判断を下すという禁じ手を用いたわけである。
IRの候補地として、「長崎県佐世保市ハウステンボス町1-1」が正式な所在地であるハウステンボス敷地内の一部を利用する計画である。隣接地には現在も針尾米軍基地住宅があり、JRハウステンボス駅が最寄り駅で、距離は約1.7kmの近さだ。また、現存する針尾の無線塔は、真珠湾攻撃の際に「ニイタカヤマノボレ」という暗号を送信したことで知られている。
佐世保市の歴史は、1889年に大日本帝国海軍佐世保鎮守府が置かれたことに始まる。ここから日露戦争時に、東郷元帥率いる帝国海軍が出帆し、バルチック艦隊を破った話は周知の通り。現在も海上自衛隊の佐世保総監部があり、同様に米国海軍基地も戦後から併設されている。1968年には米国海軍空母エンタープライズが寄港し、激しい反対運動が繰り広げられた。
IR長崎も“安倍・トランプ密約”の主旨にのっかり、優先的に米国カジノ企業の誘致を目論んだことに始まっている。まさに、米軍基地がある街であるがゆえに、好都合でインセンティブがあるという戦略だった。この時点で、米国カジノ企業の一部は事前の市場調査を実行するなど関心を寄せていた。
しかし、米国の専門家による事前調査の結果、年間300万人の集客が上限の市場規模と試算され、鉄道を含む交通インフラの不備などもあり、採算性はなく、いずれの米国カジノ企業も踏み込むことはなかった。このため、米国以外の企業が争うこととなった。今回のオシドリと連携した米国カジノ企業のモヒガン・ゲーミング&エンターテインメントには資金負担がなく、オシドリの下請として連れてこられたに過ぎないのだ。
そうした事情について、先日やっと地元の新聞が初めて報道した。だが、遅すぎるだけでなく、少しずれた内容だった。
日米経済安全保障問題とは、地政学的な面もあるが、むしろ中国習近平政権の管理下にある香港・マカオの中国カジノ企業とは取引できないというものだ。マネーロンダリング、5G、知的財産権の保護、人権擁護なども含めた問題である。
残念ながら長崎県も佐世保市も、表向きこれを応援している各関係組織も、危機管理のなさと国際政治を取り巻く環境への鈍さを露呈している。当初の RFC(コンセプト提案募集)時に対処しておくべき問題を今になって慌てて対処したことで、自ら墓穴を掘ってしまった。もう崩壊は時間の問題といえそうだ。
【青木 義彦】
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