【IR福岡誘致開発特別連載55】IR長崎、協定締結に至るRFP事業者選定は体を成さず
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IR長崎のRFP(事業者選定)に参加した中国カジノ企業から審査過程に不公正があったとして、異議を申し立てられ今後訴訟に発展しかねない状況のなか、長崎県は30日、欧州のカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(以下、カジノ・オーストリア)を運営事業者に選定し、基本協定を結んだと公表した。
筆者は本連載の前号で、こうした長崎県による開き直りが、いっそう自らの墓穴を掘ることとなり、崩壊のプロセスをたどると警鐘を鳴らした。しかし、予想通りの「お上の勘違い行動」に出たわけである。近年は、「自分たちがいえば何事も通る」という政治・行政の思い込みが目立つ。
現政権による度重なる緊急事態宣言を見ても、国民が政治・行政のいうことを素直に聞く環境にないことがわかる。長崎県の判断は、落選した中国カジノ企業の怒りに対し、「火に油を注ぐ」ことになりかねない。
基本的に今回のRFPはその体を成さず、政府指導の事業母体(コンソーシアムの組織組成)の公募、公開入札になっていない。単に、海外カジノ企業を選抜したに過ぎない。以下は本連載33号で掲載した図である。
すでに伝えたように、IR大阪はオリックス、関西電力、大阪ガスなどの国内大手企業と地元財界企業の約20社が参加予定のコンソーシアム組織組成である。横浜市長選挙の結果、崩壊したIR横浜でさえ、セガサミーホールディングス、ゲンティン・シンガポール、鹿島建設、竹中工務店、大林組、ALSOKによる事業母体の形成が予定されていた。これらが政府が指導するIR開発設置運営事業者のあり方だ。
IR長崎で、地元マスコミが報道する米国のハイアットホテルグループとの提携による「クリスタルタワーホテル」などは一部の業者に過ぎず、本来のコンソーシアムの組織組成ではない。
長崎県は事業投資総額3,500億円、最大6,000人収容のMICE施設(超大型コンベンション施設など)、年間840万人の集客を計画しているが、協定締結者のカジノ・オーストリアと国内大手企業、地元財界企業との連携で、誰がその巨額な投資資金を負担するのだろうか。主たる資本(エクイティ)の組織組成がどうなっているのかは、いまだに表に出てこない。
本来ならば、こうしたことが形成されたなかでRFPが実施され、熾烈な競争の末に選抜される。たとえば、当初から積極的に支持・応援している元JR九州相談役・石原進氏が率先して、JR九州がエクイティの相当な部分(総額も負担者なども不明)、仮に100~200億円を負担するという意思表示があれば信憑性が出てくるが、それはコロナ禍でもそれ以前でも不可能である。すべて“画竜点睛を欠く”状況であり、本件には肝心な点が入っていない。
結局、今回の強行策は、長崎県、佐世保市、政治家によるパーフォマンスと言われてしまうだろう。すでに説明しているように、現状のハウステンボスは年間の集客が約140万人(過去最大の集客は300万人)しかいないのに、カジノ・オーストリアが運営すれば、それが840万人になるとの計画を誰が信用するのだろうか。実現が不可能なことは火を見るより明らかだ。
【青木 義彦】
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