2024年11月24日( 日 )

自然災害の発生と被災した九州の鉄道の復旧(後)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

JR九州、日田彦山線の添田~夜明間を集中豪雨で被災

日田彦山線 レール イメージ JR九州に関しては、肥薩線が被災する以前の2017年7月5日にも、日田彦山線の添田~夜明間が集中豪雨により、63カ所が被災した。これだけ被害が甚大になれば、復旧には約80億円も要する。JR九州の鉄道事業は赤字であっても、会社が不動産事業の利益で、鉄道事業の損失を内部補助しているため、「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金」が支給されない。そうなると鉄軌道整備法に基づく公的補助を検討せざるを得なくなる。

 JR九州は、日田彦山線の添田~夜明間を鉄道として復旧させたとしても、赤字経営は免れないことから、沿線自治体などに年間で1億6,000万円の支援を要請した。

 添田町などの被災した沿線自治体は、人口減少などが続いて財政的に厳しく、年間で1億6,000万円を負担するだけの体力がない。また被災した日田彦山線の添田~夜明間は、福岡県と大分県に跨っており、福岡県は橋梁の復旧に22億円を出資する考えを示した。

 こうなると、残りの復旧費は約58億円となり、鉄軌道整備法による復旧を目指すのであれば、国が約14億円を出資し、沿線自治体が約14億円を出資することから、JR九州の負担は29億円にまで減少する。

 しかし大分県は、鉄道での存続に積極的ではなかった。添田町などの沿線自治体が、鉄道復旧後も毎年、1億6,000万円の欠損補助を支給することも困難なため、鉄道による復旧を断念せざるを得なくなり、BRT化することを決定した。さらに21年8月14日の集中豪雨により、日田彦山線の添田付近でも、路盤が崩壊する被害が発生しており、新たにBRT化される区間が拡大することが、危惧されている。

 この集中豪雨では、九大本線の日田~豊後森間の橋梁も被災しているが、この路線の被災した区間は短い。また特急「ゆふ」「ゆふいんの森」などが運転される以外に、JR九州が誇る超豪華列車「ななつ星in九州」も運行されることもあり、ネットワークの維持や自社のイメージダウンも避けるため、復旧に向けて動くのではないか、と筆者は考えている。

 ただ肥薩線は、球磨川が決壊したことから、路盤自体が流されるなど、規模が大きいこともあり、被災して1年以上も経過するが、そのまま放置されている。やはり公的な復旧の補助率が向上しないと、復旧は難しいかもしれない。

鉄道も「社会インフラ」として位置付けを

 このように「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金」という制度には、問題点も多くあり、今後は黒字の事業者であっても、支給されるように制度を改善する必要がある。補助金を支給するとなれば、原資が必要となる。筆者は、ガソリン1Lあたり1円、軽油1Lあたり0.75円を課税して、それを原資として活用するようにすべきだと考える。ドイツでは、鉱油税を活用して公共交通の維持やサービス改善が図られている。

 一方の日本では、鉄道を含めた公共交通は、いまだに独立採算制を原則としている。道路が、自然災害で被災したならば、公費で直ぐに復旧する。道路に関しては、採算性が問われることなく、「社会インフラ」と位置付けられている。

 それゆえ鉄道も、「社会インフラ」として位置付け、大規模災害による被災に関しては、ガソリンや軽油に新たに課税するかたちで、黒字の鉄道事業者に対しても、「特定大規模災害など鉄道施設災害復旧事業費補助金」を支給するようにする必要がある。

 とくに九州に関しては、台風の通り道であることから、毎年多くの台風が上陸する。それゆえ集中豪雨などによる被害も多く発生しており、自然災害による被災が原因で鉄道が廃止されることを回避するためにも、「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧事業費補助金」の充実が、不可欠であるといえる。

(了)

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