【中国総領事】改革開放のなかで回復を続ける中国経済、新たなチャンス迎えた中日経済・貿易協力(後)
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中華人民共和国駐福岡総領事 律 桂軍 氏
中国経済の現状と日中経済協力について、中華人民共和国駐福岡総領事の律桂軍氏より寄稿していただいたので掲載する。中国は新型コロナウイルスを早期に抑え込み、経済を順調に回復させるとともに、発展戦略として、国際/国内市場の循環、グリーン発展、自由貿易試験区の拡大などを掲げており、律氏はそのなかで日本企業が投資を行うに当たって活用できるチャンス、プラットフォームを紹介する。
九州の対中輸出、7カ月連続で増加
中国と日本の協力についていえば、中国経済が安定しつつ上向きとなり、改革開放の度合いが絶えず大きくなっていることは、日本に重要なチャンスをもたらし続けている。中国側データによると、上半期の中日間の輸出入総額は前年同期比14.5%増の1兆1,800億元に達した。日本の財務省のデータによると、上半期の対中輸出は昨年同期比27%増と大きく増え、8.6兆円を超え、初めて8兆円の大台を突破、対米、対EUの7兆1,000億円、3兆8,000億円をはるかに超えた。なかでも自動車の対中輸出はとくに目を引き、半導体、プラスチックなどの部品、材料の輸出は上位で推移しており、年間の対中輸出は新記録となる見通しだ。
中国は九州地区の最大の貿易パートナーであり、九州の対中輸出は今年1月から7月まで7カ月連続して前年同月比で大幅な伸びを維持しており、なかでも6月は(前年同月比)17.6%増、自動車製品は(同)28.5%増となり、中国と九州の経済・貿易分野の協力の強大なじん性と巨大な潜在力を再びはっきりと示した。
未来に目を転じれば、九州は地理、文化など伝統面および産業面での優位性を基に、対中協力関係は一層密接になり、日本の対中協力においてより大きな役割をはたすことが見込まれる。九州は具体的に次の4つのチャンスと3つのプラットフォームを利用できる。
中国市場およびその先の欧州市場
(1)中国市場のチャンス
中国のGDPは2020年に15兆米ドルを越えており、35年にまた倍増する見通しで、4億を超える中間所得層も同じく35年には倍増することが見込まれる。より大規模な国内市場とより強い国内需要は日本を含む世界各国により大きい市場を提供していく。
(2)グリーンで質の高い発展のチャンス
中国は新たな発展理念を貫き、イノベーション発展、グリーン発展および高品質な発展を進めている。九州地区は日本の環境ガバナンスのパイオニアで、環境ガバナンスと持続可能な開発においては豊富な経験をもっている。また、最先端科学と製造分野でも突出していて、水素エネルギー、環境保護、半導体、医療、AIロボット、自動車等の分野は世界の最前線にある。九州経済界は、関連分野で中国と協力し、お互いに学び合い、ともに前進することができる。
(3)「中欧班列」のチャンス
「一帯一路」の重要な成果である「中欧班列」は、日韓などアジア太平洋地域に向けられ、EUとユーラシア大陸を結び、運輸コストは空輸よりはるかに低く、所要時間は海運よりはるかに短い、新型コロナウイルス感染のなかで「命のルート」「運命のきずな」と呼ばれる。今年の上半期は前年同期比43%増の計7,323本が運転され、合計1,232万点、9.6万トンの防疫物資が輸送されるなど、国際産業チェーン・サプライチェーンの安定と国際的感染症対策協力の支援で引き続き重要な役割をはたした。
二国間、多国間協力のプラットフォーム
(1)RCEPのプラットフォーム
中日韓3国間の産業チェーン、サプライチェーン、バリューチェーンはますます密接になっている。来年のRCEP発効により、地域の主要経済体である3国の間に初めて自由貿易協定が締結され、ASEAN10カ国と連携して統一された大市場を形成していく。中国との協力を通じて、九州経済界は東アジア一体化のプロセスのなかでよりうまくチャンスをつかむことができるだろう。
(2)中日地方協力発展モデル区のプラットフォーム
昨年、中国は大連市、青島市を含む6市における中日地方発展モデル区の設立を承認した。これは中日地方協力促進の重要な措置で、九州地区の対中協力に新しいチャンスをもたらした。今年5月、中国駐福岡総領事館は大連市政府と共同で中国大連・日本九州協力セミナーおよび「中日(大連)地方発展協力モデル区」説明会を開催した。10月には青島市と共同で同様のイベントを開催する予定で、引き続き九州経済界と中国の関係地方とのマッチングおよび協力をサポートしていく。
(3)中国の地方の自由貿易試験区のプラットフォーム
2019年、中国は山東、江蘇、広西など6省・自治区に自由貿易試験区を設立し、対外開放をさらに拡大した。山東省、江蘇省、広西チワン族自治区はそれぞれ山口県、福岡県、熊本県と友好姉妹関係を結んでいる。現在、海南自由貿易港も建設のピークを迎えている。これらは九州地区と中国の経済貿易協力に独特の優位性と新たなチャンスをもたらしている。
(4)国際コンベンションのプラットフォーム
海南省で開催される中国国際消費財博覧会は消費分野の名品をテーマにした中国初の国家レベルの見本市であり、5月の第1回博覧会は約1,300社の海外ブランドが集まり、1,200社の国内ブランドが出展した。
北京で開催される中国国際サービス貿易交易会は世界のサービス貿易分野における最大規模の総合展示会で、今年は9月に開催される。
上海で開催される中国国際輸入博覧会は輸入をテーマとする世界初の大規模な国家レベルの展示会で、11月に4回目の開催を迎える。現在出展契約をしたフォーチュン・グローバル500と業界のリーディングカンパニーの数は前回を上回り、リピート率は80%を超えている。
広州で開催される中国輸出入商品交易会(広州交易会)は最も歴史が長く、「中国第一展」とも呼ばれる。厦門で開催の中国国際投資貿易商談会は双方向投資の促進を目的とした国際投資促進イベントである。これらの国際コンベンションには毎年、全世界から大勢の企業が参加し、各国企業にとっては中国市場開拓および対中協力促進の重要なプラットフォームとなっている。九州地区の企業が積極的に参加し、対中協力のチャンスを模索することを歓迎している。
(了)
<プロフィール>
律 桂軍(りつ・けいぐん)
1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。関連記事
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