2024年11月24日( 日 )

コロナ自粛でまん延する心の被害 冷静さはどこに消えたのか

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和田秀樹こころと体のクリニック 院長 和田 秀樹 氏

 「国民の命を守るため」という理由で推進される外出自粛、リモートワーク、会食自粛。「コロナ自粛」でまん延している「不安、恐怖」により、企業組織や業務体制、経営などに悪影響がおよび、人々の免疫力が下がることが懸念されている。コロナ禍で、社員が元気に働ける環境を整えるにはどうすべきか。「和田秀樹こころと体のクリニック」院長・和田秀樹氏に聞いた。

判断力の低下を懸念

和田秀樹こころと体のクリニック院長 和田 秀樹 氏
和田秀樹こころと体のクリニック院長 和田 秀樹 氏

 「コロナ禍での外出自粛、リモートワーク、会食自粛などにより、人々の間で恐怖や不安がまん延しており、平常時のように物事を冷静に判断できなくなっていることが懸念されます。人は冷静に判断したつもりでも感情に支配されているため、恐怖に陥ると悲観的になって思い切ったことができず、普段ならできることでも判断を誤る場合もあります」と和田秀樹こころと体のクリニック院長・和田秀樹氏は語る。恐怖にとらわれず心の状態を正常に保つことで、人は本来のパワーを出せるのだ。

 コロナ自粛で外出しなくなると、気持ちを安定させる脳内物質の「セロトニン」が減るため、不安や恐怖が強くなり、怒りっぽくなりやすい。恐怖心から免疫力が落ちると病気になりやすくなり、「コロナうつ」など心の病のリスクも高まる。散歩やゴルフをするなど日に当たるとセロトニンが増え、ストレスを感じにくい。心が健康であれば免疫力が上がり、病気にもなりにくい。

 「コロナはいつ終わるのか」「先行きが思いやられる」「安定した生活が送れるのか」など恐怖を抱えて、人との接触自粛下で判断を誤るのは、特殊詐欺の被害者の心にも似ているという。親族などを装った加害者が「会社のお金を使い込んでしまい、送金がないとクビになる」と被害者の恐怖心をあおり、「人には秘密にしてほしい」と周りからの情報を遮断する。すると、冷静ならば賢明な判断ができる人でもパニックに陥り、つい加害者に送金してしまうのだ。

 恐怖に陥ると、他の選択肢を考えられなくなることも問題だ。たとえば銀行からの電話で普段より対応が悪く「融資の打ち切りに合うのではないか」という考えで頭がいっぱいになると、「担当者の機嫌がたまたま悪かったのではないか」という可能性を考えられなくなる。「世の中が恐怖に振り回されると、世界恐慌時に自由が抑圧されて第二次世界大戦に走ったように、過激な対策が許される空気になりやすいことも気がかりです」(和田氏)。

冷静さを取り戻し 解決法を議論すべき

和田秀樹こころと体のクリニック
和田秀樹こころと体のクリニック

 和田氏は「起こる可能性が低い出来事におびえて、恐怖に振り回されるのは賢明ではありません。むしろ不安が的中したときにどうするかを考えることが必要です。経営者自身が対策を行い、その姿勢を社員に伝えて議論を行うことが解決に向かう一歩となるはずです」と話す。(1)実際に起こる可能性はどれくらいあるのか、(2)ほかに起こり得る可能性はないのか、(3)的中した場合にどう解決するのか、を話し合うことが大切だという。

 たとえば「融資の打ち切り」であれば、緊急融資や給付金を活用したり、期待した製品が売れない時には新たな売り方を見つけるなどの突破口が見つかる可能性がある。コロナ禍でセンセーショナルなニュースが報道されても、世の中すべてを色眼鏡で見る前に冷静な心を取り戻すことが肝心だという。組織として恐怖にとらわれず、目指す方向に向かって動けるよう、その原動力となる姿勢をもつことが大切だ。

【石井 ゆかり】


<プロフィール>
和田 秀樹
(わだ・ひでき)
和田秀樹こころと体のクリニック院長。精神科医・臨床心理士。1960年生まれ、大阪府出身。東京大学医学部卒、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、国際医療福祉大学心理学科教授。一橋大学経済学部非常勤講師、東京医科歯科大学非常勤講師、川崎幸病院精神科顧問。主な著書に『こんなに怖いコロナウイルス 心の病』(かや書房ワイド新書)、『「コロナうつ」かな? そのブルーを鬱にしないで』(WAC BUNKO)、インタビュー書に『コロナ自粛の大罪』(宝島社新書)。


<CLINIC INFORMATION>
和田秀樹こころと体のクリニック

院 長:和田 秀樹
所在地:東京都文京区本郷3-21-12 RTビルB1F 
TEL:03-3814-4530 
電話受付時間:月曜日~金曜日 午前11時~午後7時(要予約) 
診察時間  :毎週月曜日 午前11時~午後7時
URL:https://wadahidekiclinic.jp

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